緊急事態宣言 1都3県で2月7日まで 政府方針を諮問委員会が了承

新型コロナウイルス対策で、菅総理大臣が東京など首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言を出すのを前に、専門家に意見を聴く諮問委員会が開かれ、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、期間を2月7日までとする政府の方針が了承されました。菅総理大臣は、夕方に開かれる政府の対策本部で宣言を出す方針です。

新型コロナウイルス対策で、菅総理大臣は、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県では感染者数が減少せず極めて高い水準にあり、より強いメッセージが必要だとして、7日、特別措置法に基づく緊急事態宣言を出すことにしています。

これを前に、午前9時半から、感染症の専門家などでつくる諮問委員会が開かれ、冒頭、西村経済再生担当大臣は「首都圏では、特に医療提供体制のひっ迫した状況が続いており、機械的に当てはめていくものではないが、緊急事態宣言が視野に入る、『ステージ4』の指標に多くが該当してきている状況である」と指摘しました。

そして、緊急事態宣言について、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、期間を1月8日から2月7日までとする方針を示しました。

そのうえで、宣言のもとでの対処方針として、
▽飲食店などに対して営業時間を午後8時までに短縮し、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう要請することや、
▽特に午後8時以降の不要不急の外出の自粛を徹底するよう呼びかけるほか、
▽テレワークを推進して、出勤する人の7割削減を目指し、
▽イベントの開催制限については、収容人数の半分か5000人の少ないほうを上限とすると説明しました。

一方、
▽学校に対しては、一斉休校を求めない方針を示しました。

西村大臣は「経済活動を幅広く止めるのではなく、感染リスクの高い場面に効果的な対策を徹底し、飲食を伴うものを中心に対策を講じる」と述べ、専門家に意見を求めました。

田村厚生労働大臣は「医療がひっ迫している地域では 個別の医療機関と調整し、院内感染の防止や経営にもきめ細かく配慮しながら、対応できる病床を増やしていきたい。医療従事者の処遇の改善も踏まえた人員の確保にも取り組みたい」と述べました。

諮問委員会は、午前11時半ごろに終了し、政府が示した対象地域と期間が了承されました。

午後からは、衆参両院の議院運営委員会で、報告と質疑が行われ、菅総理大臣は、午後5時15分から開かれる政府の対策本部で宣言を出す方針です。

そして、菅総理大臣は、7日午後6時をめどに記者会見し、宣言を出す理由や具体的な措置などを説明し、国民に協力を呼びかけることにしています。

西村経済再生相「了承をいただいた」

西村経済再生担当大臣は、諮問委員会のあと、記者団に対し「原案のとおり、1都3県について、今月8日から来月7日まで、緊急事態措置を実施する必要があり、緊急事態宣言を行うことが了承された。基本的対処方針の変更についても、若干の修文があるが、おおむね了承をいただいた。本日中に開催される政府対策本部での決定を経て、緊急事態宣言について、本日中に官報で公示したい」と述べました。

田村厚労相「医療提供体制確保し雇用守る」

田村厚生労働大臣は、諮問委員会のあと、記者団に対し「緊急事態宣言の期間や措置については、異論なく了承いただいた。医療提供体制を確保していくこととともに、経済界や労働界から『事業継続や雇用を守るための措置をしてもらいたい』という話があったので、しっかりと受け止めて対応を考えたい」と述べました。

尾身会長「コンセンサスできた」

諮問委員会のあと、尾身茂会長が報道陣の取材に応じ「政府から出された基本的対処方針について諮問委員会のメンバーが意見を提出し、さまざまな議論をしたうえで委員会としてのコンセンサスはできた」と述べました。

日本医師会 常任理事「解除は『ステージ2』へを確認して」

日本医師会の釜萢敏常任理事は諮問委員会のあと、記者団に対し「緊急事態宣言の解除の条件については『ステージ3 』になったらすぐに解除するのではなく、『ステージ2』の方向に向かっていることを確認してほしい。新型コロナに対する医療と、それ以外の医療をどのように組み立てていくかは個々の医療機関で判断することは難しいので、地域の実情や行政のリーダーシップによる意志決定に基づき、医療機関が役割を担えるようにしてほしい」と述べました。

そのうえで「去年4月のような『一斉、網羅的な抑制』ではなくて、経験を生かして焦点を絞ってできないかという強い思いが共通の認識だった。一斉に止めなければならない形はとりたくない思いは強かったと思うが、そのことによって効果が不十分になることの懸念はあったと思う」と述べました。

委員「感染者減らすことが重要」

経済の専門家の立場で諮問委員会の委員を務める東京財団政策研究所の小林慶一郎研究主幹は、記者団に対し「感染者が激増しつつあり、増加が続けば感染への恐怖心によって消費や経済活動が相当冷え込むので、いま感染者を減らすことは重要だ。それが1か月でできるか分からないが、短期的に経済にコストがかかっても感染者を減らしていく必要がある」と述べました。

委員「事業継続 考えないといけない」

経済の専門家の立場で諮問委員会の委員を務める慶應義塾大学の竹森俊平教授は記者団に対し「法律的に強制するのではなく、国民の自発的な行動変化を求めているので、できるだけ論理をはっきりと示す必要がある」と述べました。

そのうえで、経済への影響について「厳しいことは確かで、どうやって事業を継続していくかを考えないといけない」と述べました。

全国知事会 飯泉会長 「まずは1都3県に集中して対策を」

全国知事会の会長を務める徳島県の飯泉知事は諮問委員会のあと、記者団に対し「まずは1都3県に集中して、いかに効果的に対策を打つかが重要だ。1都3県の対策の途中経過なども示してもらい、ほかの道府県も共有して対策を講じたい」と述べました。

緊急事態宣言とは

緊急事態宣言は、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく措置です。

全国的かつ急速なまん延により、国民生活や経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合などに、総理大臣が宣言を出し、緊急的な措置をとる期間や区域を指定します。

対象地域の都道府県知事は、生活の維持に必要な場合を除き、住民に外出の自粛など、感染防止の協力を要請することができます。

また、多くの人が集まる施設の使用制限などを要請したり指示したりすることができ、要請や指示が行われれば、店舗名などが公表されます。

政府は今回の緊急事態宣言の発出に合わせて、施設の使用制限の対象に飲食店も含めるよう政令を改正する方針です。

このほか、特に必要な場合は、臨時の医療施設を整備するため土地や建物を所有者の同意を得ずに使用できます。

さらに、緊急の場合、運送事業者に医薬品や医療機器の配送を要請・指示できるほか、必要な場合は医薬品などの収用もできます。

「基本的対処方針」とは

「基本的対処方針」は、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づいて「政府対策本部」が策定するもので、ウイルスの発生状況や政府の全般的な方針、それに対策の実施に関する重要事項を盛り込むことになっています。

策定にあたっては、緊急の場合を除き、あらかじめ感染症に関する専門家などの意見を聞く必要があるほか、策定後は直ちに公示して周知を図ることが求められています。

「基本的対処方針」は、去年3月に初めてまとめられたあと、緊急事態宣言の発令や対象地域の拡大、さらに宣言の解除などに伴い、これまでに7回改正されてきました。

「基本的対処方針」の改正は、前回の緊急事態宣言が解除された去年5月25日以来、およそ7か月ぶりとなります。

前回の緊急事態宣言は

前回の緊急事態宣言は、都市部で急速に感染が拡大した事態を受けて、去年4月7日に東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に出されました。

その後、7都府県以外でも感染が広がったことから、政府は4月16日に対象地域を全国に拡大しました。

宣言の期間は当初5月6日まででしたが、その2日前の5月4日に、感染者の減少が十分なレベルとは言えないなどとして、対象地域を全国としたまま5月31日まで延長されました。

この際政府は、専門家の分析を踏まえ、可能だと判断すれば期限を待たずに解除する方針を示し、5月14日に首都圏と関西、それに北海道の8都道府県を除く39の県で宣言を解除しました。

続いて5月21日に大阪、京都、兵庫の関西2府1県で、5月25日には東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏の1都3県と北海道で解除し、すべての都道府県で宣言が解除されました。

衆参議運での質疑は7回目

緊急事態宣言をめぐっては、去年3月、新型コロナウイルス対策の特別措置法が国会で審議された際、緊急でやむをえない場合を除いて、国会に事前に報告するよう求める付帯決議が、衆参両院の委員会で可決されました。

7日の衆参両院の議院運営委員会での報告と質疑は、この付帯決議を踏まえた対応で、緊急事態宣言に関連して報告と質疑が行われるのは今回で7回目となります。

去年4月に東京や大阪など7都府県を対象に初めて緊急事態宣言が出された際には、当時の安倍総理大臣が出席して報告と質疑が行われました。

その後、宣言の対象を全国に拡大した際や、宣言を解除した際には、新型コロナウイルス対策を担当する西村経済再生担当大臣が出席しました。

今回は、野党側が菅総理大臣の出席を求めましたが、与党側が応じず、与野党の協議の結果、西村大臣が衆参両院の議院運営委員会で報告し、衆議院では30分程度、参議院では40分程度の質疑が行われます。