緊急事態宣言2度目 教育・企業・飲食への影響と効果は?

緊急事態宣言2度目 教育・企業・飲食への影響と効果は?
東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に1か月程度出される緊急事態宣言は、教育・保育、企業の経済活動、飲食といった私たちの生活にさまざまな影響を与えます。
いま、こうした現場はどう対応しているのか。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、今回の緊急事態宣言の効果はどうなのでしょうか?
(ネットワーク報道部 記者 大窪奈緒子・吉永なつみ・斉藤直哉/首都圏局 記者 古市駿)

“限定的”な緊急事態宣言

今回の緊急事態宣言は、去年4月に全国に拡大された時と異なり、政府は経済への影響を最小限に抑えたいとして、地域を東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県とし、飲食の場での感染リスクの軽減策など、限定的な措置を講じることにしています。
菅総理大臣は今月4日の記者会見で、首都圏の営業時間短縮の要請など限定的に行う考えを示しています。
菅首相
「東京都とその近県で12月の人出があまり減らず、また三が日も感染者数は減少しないで極めて高い水準になっている。こうした状況を深刻に捉えて、より強いメッセージを発出することが必要だと判断した。およそ1年の中で学んできて、どこが問題かということはかなり明確になっている。そういう考え方からすれば、限定的に集中的に行うことが効果的だと思っている」

「1か月では難しい」

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会も「首都圏の感染状況が沈静化しなければ全国的に急速に感染がまん延するおそれがある」として、首都圏の1都3県を対象にした緊急事態宣言を速やかに出すべきだとする提言をまとめています。

ただ、分科会の尾身茂会長は、今月5日、1か月以内で感染が最も深刻な「ステージ」4の地域で感染状況のレベルを下げるのは難しく、社会全体で対策を実行すべきだと訴えました。
尾身茂会長
「今の状況からステージ3相当にまで下げるのは週単位では難しく、1か月以内では至難の業だと考えている。緊急事態宣言そのものによって感染が下火になる保証はなく、うまくいかないこともあり得る。社会を構成するみんながひと事ではなく自分のこととして行動し、対策を実行できるかに成否はかかっている」

休校要請せず 入試も実施へ

こうした中、政府は、小中学校や高校に対して一斉休校を要請しないことを明らかにしています。
ただ部活動については、集団内での感染拡大の可能性があるとして「特に高校では、感染リスクの高い活動を一時的に制限することも含め検討するなど、感染症への警戒を強化してほしい」と呼びかけました。
また、今月16日から始まる「大学入学共通テスト」を予定どおり実施することを正式に表明しています。
小中学校や高校の入試についても、各教育委員会など学校の設置者に対し、予定どおり実施するよう求めています。

休まない保育、現場の実態は…

保育所について厚生労働省は、原則として継続して開くよう求める方向です。
横浜市にある「ムーミン保育園」も、感染者数が増えることに警戒感を強めながらも、働くお父さんやお母さんを支える必要があるとして、通常どおり受け入れを続けることにしています。
感染者数が増え続ける中で受け入れることで、現場では、感染防止対策が一層強化されています。
そのため、保育士の負担は増え続けているのが実態だと言います。この保育園では、子どもがお昼寝をしている時間に、30分ほどかけて保育士がすべてのおもちゃを拭いて消毒しています。
また、1日に4回、園内外の手すりなど子どもたちがよく触る設備を20分ほどかけて消毒しています。
さらに、多くの大人が保育室に入らないよう園児の受け入れを廊下で行い、園児の荷物の整理や布団カバーの交換などは、保護者に代わって保育士が担っているということです。
ムーミン保育園 杉浦昌代施設長
「もともと保育士は心と体を駆使する職業ですが、それにプラスしてのコロナ対応で、職員はみんな本当に頑張って日々奮闘しています。人手も不足していて、シフトを工夫してやりくりし、現場の頑張りに頼っている状況です。より安心安全に子どもたちを預けられる場であるためにも、保育士が定期的にPCR検査を受けられるようにするなど、国や自治体にさまざまな対策を求めたいです」

企業は在宅勤務・テレワーク強化

政府は、テレワークの推進も大きな柱になるとして、出勤者を7割削減させることを目指しています。
企業の間ではオフィスに出社する人をさらに減らすことを検討する動きが広がっています。
三菱電機は新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに在宅勤務を広げ、これまで総務や営業、人事などの部署を中心に出社する社員の割合を抑えてきました。
緊急事態宣言でこの取り組みを強化し、1都3県のオフィスでは出社の割合を30%以下に抑えるとしています。
また1都3県が出発地や目的地になる出張は原則、自粛し、食事のある会合や懇親会は個人的なものも含めてすべて自粛するよう求めるということです。

工場は時差出勤や交代勤務で稼働を続けるとしています。
グループ全体でおよそ18万人が働くNTTも、総務や企画部門などでは出社する社員を50%以下にすることを目標にする在宅勤務を行っています。

KDDIは今月から東京 千代田区の本社で社員の座席を40%削減していて、2度目の緊急事態宣言が出た場合も在宅勤務の呼びかけを続けるとしています。

テレワークが難しい企業も

しかし、特に中小企業の中には、在宅勤務やテレワークが難しいところもあります。
ある中小企業では、書類をデータベース化する人手や設備が十分整わず、どうしても社員が出社せざるをえないと言います。
また、オンラインシステムの導入や、社員への習熟も課題となっています。

経済 GDP押し下げの試算も

経済への影響はどうなのでしょうか。
民間のシンクタンクなど5社は、首都圏の1都3県に緊急事態宣言が1か月程度出された場合の経済への影響を試算しました。
それによりますと、不要不急の外出が控えられたり、飲食店の営業時間が短縮されたりすることなどで、個人消費が大きく減少し、年間のGDPを0.3%から0.88%、押し下げるとしています。
これは金額にすると1兆4000億円から4兆8900億円の落ち込みとなります。
このうち第一生命経済研究所は、緊急事態宣言から半年後に7万5000人の失業者が出るおそれがあると試算し「大きなダメージが想定される」と指摘しています。
また、野村証券、野村総合研究所、大和総研は、ことし1月から3月の3か月間のGDPの伸び率が「マイナスになる可能性が高い」という見通しを示しました。
一方で、去年の緊急事態宣言と比べると対象地域や海外経済の状況が違うため去年4月から6月のような大きな落ち込みにはならないのではないかという見方も出ています。

時短要請 8割が“応じる”

自治体は飲食店に営業時間を短縮するよう要請します。
これを前に、飲食店の運営支援などを手がける「シンクロ・フード」は、去年11月、主に首都圏の飲食店経営者など400人余りを対象に、今後営業時間短縮の要請が出された場合に要請に応じる意向があるかどうかインターネットで調査を行いました。
その結果、およそ80%が時短要請に「応じる」と回答した一方で、6%余りは「応じない」と回答しました。
調査を行った企業は、多くがやむをえず時短要請に応じる一方で、経営が厳しい中で、時短営業に耐える経済的な余裕がない店舗もあるとみています。
シンクロ・フード
「かつてないほど感染が拡大する中で従業員やお客さんを守るためや要請に従わない店だとみられてしまうことへの不安からやむをえない決断として要請に応じると回答したとみられる。今回、さらに営業時間が短縮されることは経営にとって大きな打撃だが店名が公表される可能性もあり要請に従わないと決断することは難しいのではないか」

営業時間を短縮する飲食店は

東京 豊島区の駅前で20年余り続く立ち食いそば店「南天」は、ふだんは電車の始発から終電に合わせて早朝から深夜1時半まで営業していますが、緊急事態宣言を受け、営業時間の短縮はやむを得ないとしています。
この店名物の「肉そば」は、甘辛いつゆで煮込まれた豚肉がたくさん盛られ、夜間帯は、一人暮らしの学生やサラリーマンなどが絶えず訪れるということです。
この店の先月21日の夜8時以降の売り上げは、1日の売り上げのおよそ3分の1にあたる160杯となっています。
価格を抑えるため、酒類を提供せずに客の回転を早くすることで、店をまかなってきましたが、午後8時以降の営業をやめると、貴重な収入が失われることになります。
また、1日を朝、昼、夜と3つの時間帯に分けていた従業員の夜のシフトが失われるなど、営業時間の短縮は従業員の収入にも影響が及びかねない状況になります。
「南天」店主 湯浅清さん
「とにかく早く終息しなければ飲食業界がさらに大変なことになるので、営業時間の短縮に協力したいですが、今後を考えると不安な気持ちもあります。政府や自治体には、みんなが気持ちよく協力できるような、ビジョンが見える宣言を出してほしいです」

2度目の緊急事態宣言 効果は?

今回の緊急事態宣言について、日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は、これまでの経験を踏まえた対策で、成功するかどうかは一人ひとりにかかっていると指摘します。
日本感染症学会 舘田一博理事長
「外での酒を伴う飲食が特に危ないことが分かってきていて、いま東京で感染が広がっていることを考慮すれば地域や業種を絞った『限定的』な今回の対策は急所を突いた対策で評価できる。これまでの経験で、子どもの間では感染が広がりにくく親から子どもへの感染が多いことが分かってきたことから、マスクの着用といった基本的な対策をすれば、保育所の閉鎖や学校の一斉休校は必要ない。短期間で感染拡大を抑え込むことはなかなか難しいだろうが、成功するかどうかは一人ひとりの協力がどれくらい得られるかにかかっている」
一方で、2度目の緊急事態宣言で、慣れや気の緩みに警戒する必要があると言います。
日本感染症学会 舘田一博理事長
「これまでは社会・経済もできるだけ回しながらそのなかで感染が収まるかもしれないという見方もあったが、冬になって予想を超えて感染者数が増えてしまっていて慣れや気の緩みが現れてきているのかもしれない。漫然と対策を行っても社会・経済へのダメージが大きくなるだけなので集中して短期間に感染拡大を抑え込めるかどうかがポイントになってくる」
また、感染症対策に詳しい神戸大学大学院の岩田健太郎教授は、今回の緊急事態宣言を出すタイミングは遅すぎ、効果は期待できないと指摘しています。
神戸大学大学院 岩田健太郎教授
「医療現場がひっ迫する前のもっと早い段階から呼びかけるほうが感染の広がりや経済的なダメージを最小限にとどめる方法だった。感染者数も重症患者数もこれだけ増加し、医療現場がひっ迫した状況だと言われている中で、国民がどう行動すべきなのか、具体的でわかりやすいメッセージの無い緊急事態宣言を出しても効果は期待できない」
そして、この時期に感染者を減らすにはさらに強い対応が必要だとしています。
神戸大学大学院 岩田健太郎教授
「飲食店の営業時間を午後8時までとしたところで、昼間に酒を提供するなど店側が工夫すれば客が集まるだろう。飲食店で感染のリスクがあることは確かだが、ここだけ介入しても、もはや手遅れだ。本当に感染者数を減らすのであれば、医療や物流などを支えるエッセンシャルワーカー以外の人の外出は止めるよう要請し、イベントはすべて中止、学校は一斉休校、緊急事態宣言対象地域とそれ以外の地域の往来も禁止といった具体的で強いメッセージが必要だ」
このように政府の限定的な緊急事態宣言に対し厳しい見方を示しましたが、岩田教授も感染を抑えるには一人ひとりの対応が重要だとしています。
教育現場や企業などでの取り組みに加えて、私たちの感染防止対策も重要になっています。