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国内造船1位と2位が新会社設立 世界市場で巻き返し図る

中国や韓国に押されて厳しい状況が続く日本の造船業界のトップと2位の会社が共同で設立した新会社が業務を始めました。環境性能の高い船の設計などで連携し、世界市場での巻き返しを図ります。
この新会社は、国内の造船最大手の今治造船と2位のジャパンマリンユナイテッドが1月1日付けで設立しました。

6日は、新会社の前田明徳社長が都内で記者会見し「国際的な競争に打ち勝たないといけないという共通認識がある。提携の効果を最大限に発揮し、互いの強みを生かしていく」と抱負を述べました。

新会社では、温室効果ガスの排出を抑えた環境性能の高い船の設計や、両社の受注に向けた営業の業務を行います。

かつては世界トップのシェアを握っていた日本の造船業界は、国の強力な支援を受ける中国や韓国のメーカーに押されて、世界シェアは3位にまで低下し、新型コロナウイルスの影響も加わって、厳しい状況が続いています。

国内トップと2位の会社が、環境性能の高い船の開発を軸に連携し、劣勢が続く世界市場での巻き返しを図ることになります。

日本の“お家芸” 造船業のいま

かつては世界市場で圧倒的なトップの座にあり、日本の“お家芸”とも言われた造船業は、国の強力な後押しを受けた中国や韓国勢に押され、厳しい状況が続いています。

日本造船工業会によりますと、戦後の造船業界は欧米が中心でしたが、1956年には日本が世界市場の26%を占め、トップに躍り出ました。

1960年代後半から1970年代中ごろにかけては、世界シェアが50%近くに達し、造船業はものづくりで高度成長を成し遂げた日本を象徴する産業となりました。

しかし、国からの補助金もあってコスト競争力で勝る韓国や中国の造船会社が次第に競争力をつけはじめます。

2000年には40年以上守り続けたトップの座を韓国に明け渡し、2009年には中国にも抜かれて3位に転落しました。

その後も両国との差は埋まらず、おととしの世界市場でのシェアは、中国が35%、韓国が32%に対し、日本は24%と10ポイント程度離されています。

さらに去年は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動制限で、商談がまとまらなかったことなどが追い打ちとなって受注は激減し、初めての緊急事態宣言が出された4月からの3か月間は、前の年の同じ時期と比べて半分以下の44%に落ち込みました。

日本造船工業会は「手持ちの工事量が少なく、極めて厳しい環境だ」と受け止めています。

こうした厳しい状況の打開に向けて、日本の造船各社は温室効果ガスの排出量を抑えた船の開発に活路を見いだそうとしています。

去年10月には、国内の造船会社9社などが「次世代環境船舶開発センター」を設立し、“脱炭素”の潮流にあわせた環境性能の高い船で世界市場での巻き返しを図ろうとしています。

政府は造船業の支援強化へ

政府は、日本の造船業界への支援を強化するための法案を、今月始まる通常国会に提出する方針です。

国土交通省は去年5月、有識者でつくる審議会に諮問して政府による支援の在り方を議論してきました。

審議会が先月まとめた答申案は、日本の造船業の現状を「かつてない危機的状況」と表現し、国際的な競争力を高めるには、造船会社の経営統合などによる集約化や、生産性の向上が必要だと指摘しています。

これを踏まえて、国土交通省は、事業再編やロボットの導入など効率化に向けた計画を策定して国の認定を受けることを条件に、政府系金融機関による長期間の融資や新会社を設立する際などの税負担を軽減する措置、それに技術開発の補助金など、幅広い面から造船会社を支援することにしています。

政府は、そのために必要な法案を今月始まる通常国会に提出することにしています。

政府としては、造船業の国際的な競争力を高めて、生産拠点が多い地方の雇用の維持につなげたい考えです。

ただ、大胆な再編で規模を拡大している中国や韓国の造船会社と渡り合えるかは、予断を許さない状況です。

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