1都3県に速やかに緊急事態宣言を 政府分科会が提言まとめる

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会は、これまでとは感染の様相が異なってきており「首都圏の感染状況が沈静化しなければ全国的に急速に感染がまん延するおそれがある」として、首都圏の1都3県を対象にした緊急事態宣言を速やかに出すべきだとする提言をまとめました。
宣言が出された場合には飲食店への営業時間短縮のさらなる前倒しの要請など、感染リスクが高い場面を避ける対策を取るとともに、不要不急の外出自粛やテレワークを徹底して出勤する人の7割削減を進めるべきだなどとしています。

緊急事態宣言を出す方針が決まるのを前に、政府の分科会は5日、持ち回りで会合を開き、提言をまとめました。

提言では、現在の感染状況について「大都市圏だけでなく地方でも広がりやすい状況になっていて、クラスターも多様化するなど、これまでとは様相が異なってきた」と分析し、「首都圏の感染状況が沈静化しなければ全国的に急速に感染がまん延するおそれもある」としています。

こうした中で、首都圏では人の流れが減らず、医療体制のひっ迫状況はさらに深刻化し、東京都などで新規感染者の数が最多となるなどしており「緊急事態宣言を出す時期に至った」としています。
また、最近では、飲食店以外でも職場や自宅などでの飲み会や屋内のクラブ活動などの場でも感染が増えていて、「3密」や大声、「感染リスクを高める『5つの場面』」を避けることが十分には行われてこなかったことが原因と考えられるとして、社会全体として新型コロナウイルスに対する危機感が薄れてきたと指摘しました。

こうしたことから分科会は「なるべく早く緊急事態宣言を発出すべきと考える」としています。

そして、いま緊急事態宣言を出す意義として、首都圏で、速やかに感染を減少に転じさせ医療機関や保健所への負担を軽減させることや、感染を収束させて経済や社会機能を早期に回復させることなどを挙げています。

さらに、東京都など1都3県は、分科会が示した4つのステージのうち、最も深刻な「ステージ4」相当の対策が必要になっているとして、宣言の期間中に感染状況をなるべく早く「ステージ3」相当にまで下げ、宣言が解除されたとしても、感染が急増している段階ではないとされる「ステージ2」相当以下になるまで、必要な対策を続けるべきだとしています。
そのうえで、取るべき対策を具体的に挙げ、首都圏では、飲食店への営業時間短縮のさらなる前倒しの要請など、感染リスクが高い場面を避ける対策を取るとともに、不要不急の外出自粛や、テレワークを徹底することによる出勤する人の7割削減、それにイベントの開催要件を厳しくすることや、職場などでの飲み会の自粛呼びかけなどを進めるべきだとしています。

また、国には、事業者への支援や罰則を含めた感染対策の実効性を高めるための特別措置法などの改正や、変異ウイルスが確認された国に対する水際対策の強化、それに一般の人々が無理なく感染対策を持続できるよう環境を整備することなどが必要だとしています。

尾身会長「国や自治体が汗かく姿勢を」

分科会の尾身茂 会長は、記者会見で「今の状況から、ステージ3相当にまで下げるのは週単位では難しく、1か月以内では至難の業だと考えている。緊急事態宣言そのものによって感染が下火になる保証はなく、うまくいかないこともあり得る。社会を構成するみんながひと事ではなく自分のこととして行動し、対策を実行できるかに成否はかかっている」と訴えました。

そのうえで「ただ宣言に基づいて人々に協力を要請するだけでは、もう行動変容を促すことは難しい。強い経済的支援を行うなど、国や自治体が汗をかくという姿勢を示し、市民にも協力をお願いしますというメッセージがないと人々は動かないと思う。私たち専門家は、宣言のもとで感染の状況や医療のひっ迫状況がどの程度変わってきているのか頻繁に分析していきたいと思っている」と話しました。

さらに、より実効的な対策を取るための新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正について「要請ベースでの感染対策が難しくなってきていて、営業時間の短縮などに応じた事業者への経済支援なども明確化できておらず、応じない場合の罰則もはっきりとしていない。なるべく早い改正が必要だと思う」と述べ、分科会でも議論を進めたいとする考えを示しました。