新型コロナ 去年の緊急事態宣言 効果はどうだった?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って特別措置法に基づく政府の「緊急事態宣言」が初めて出されたのは去年の4月でした。

緊急事態宣言は、去年4月7日に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、そして福岡県の7都府県に対して出され、その後、4月16日には対象が全国に拡大されました。

宣言の期間中には、当時の専門家会議の意見を参考に人と人との接触を「最低7割、極力8割」減らすことが求められるとして、広い範囲で人の動きを減らす取り組みが行われました。

宣言の対象となった都道府県では知事が法律に基づいて、
▼不要不急の外出の自粛を要請したり、
▼多くの人が集まる施設の使用制限などを要請したりすることができるようになります。

当時、特に感染が拡大している地域では、社会機能の維持に必須の人以外はテレワークを徹底することや、食料品の買い出しや通院などを除いて、不要不急の外出を控えることなどが強く呼びかけられました。
このため飲食店をはじめ、映画館や劇場、百貨店、ホテル、博物館、図書館などで営業を自粛する動きが相次いだほか、多くのイベントが中止や延期となりました。

また、宣言が出される前の去年3月から学校の全国一斉休業が始まっていましたが、宣言後も引き続き多くの学校が休校となりました。

こうした対策の結果、東京都心では人出が感染拡大前の去年1月と比べると平日で6割余り、休日では8割近く減少し、人々の行動が大きく変わりました。
IT関連企業の「Agoop」が利用者の許可を得て集めた携帯電話の位置情報をもとに、個人が特定されない形で各地の人の数を推計したデータによりますと、例えば東京 渋谷のセンター街では、
▽感染拡大前の去年1月は、午後8時台の平均人口は8万人を上回っていたのに比べて、
▽緊急事態宣言中の去年5月初旬では、同じ時間帯の平均人口は1万人前後にまで下がっていました。

また、東京 新宿の歌舞伎町では
▽感染拡大前は金曜日、土曜日を中心に午後8時台の平均人口が8万人を上回る日が多くみられましたが、
▽4月中旬から5月初旬にかけては2万人を下回る日が続きました。

東京 銀座の中心部も同じ傾向で、
▽感染拡大前は金曜日を中心に午後8時台の平均人口は10万人を超える日もありましたが、
▽4月中旬から5月初旬にかけては曜日に関係なく1万人を割り込む日が続くなど大きく人出が減りました。
緊急事態宣言が出されたあと、全国の1日の新規感染者数は、4月中旬の700人前後をピークに減少に転じ、最後まで緊急事態宣言の対象となっていた首都圏の1都3県と北海道で宣言解除となった5月25日は全国で合わせて21人でした。

今回の検討「限定的、集中的」の方針

政府は、緊急事態宣言を検討するにあたって、「限定的、集中的」に行う方針を示しています。

新型コロナウイルス対策を巡っては、専門家による国内のクラスター=感染者の集団の分析などから感染リスクの高い行動や環境として、
▽「密集、密閉、密接」の「3密」や
▽「大人数や長時間に及ぶ飲食」
それに
▽「マスクなしでの会話」などが、指摘されてきました。

さらに、新型コロナウイルスの対策に当たる政府の分科会では、過去およそ1年間の経験から見えてきた対策のポイントを「急所」という表現を使って指摘しました。
このうち特に感染のリスクが高いとされているのは「飲食の場」です。分科会は、先月まとめた提言の中で、東京都で去年10月以降に感染が確認された1万8000人余りのうち、およそ6割が感染経路不明だとしたうえで、その多くが、飲食店における感染と考えられると指摘しました。

また、海外での研究でも飲食店が感染拡大に寄与しているという分析が出ていることなどから、対策の「急所」として、飲酒の有無や昼か夜かにかかわらず、
▼食事の際に会話をする場合はマスクを着用することや
▼会食は家族やいつもの仲間に限定し、5人以上は控えることなどを呼びかけていました。

一方、分科会では映画館やショッピングセンターなどの人出と感染者数の増減との関係を分析したところ、あまり関連が見られなかったとする資料も示されています。
こうしたことから分科会の尾身茂会長は去年の年末に開かれた会見で、「当初は、何が対策として有効なのか明確にはわからず、4月の緊急事態宣言では非常に広い範囲を対象に強い対策を行わざるを得なかったが、知見が積み重なってきた今の時点からみると、必ずしも必要ではなかった対策もある。飲食店など急所をおさえる対策を行っていくことが重要だ」と話していました。