コロナ禍~パンダの赤ちゃん誕生物語

コロナ禍~パンダの赤ちゃん誕生物語
去年11月、和歌山県白浜町でジャイアントパンダの赤ちゃんが生まれました。しかし、新型コロナウイルスの影響で、これまで出産をサポートしてきた中国人研究員が来日できず、初めて日本人のスタッフだけで出産を乗り越え、赤ちゃんパンダの命をつなぎました。コロナ禍で迎えたパンダの出産の舞台裏を取材しました。(和歌山放送局 竹内宗昭記者 横内悠希ディレクター)

パンダ誕生へ高まる期待

和歌山県白浜町の動物公園、アドベンチャーワールドは、これまでに16頭のジャイアントパンダを誕生させ、世界トップクラスの繁殖実績を誇っています。
これまでに9頭の子どもを生んできたメスの良浜は20歳で、人間で例えると60歳になります。
今回もパートナーの永明との交配に成功し、赤ちゃんの誕生が期待されていました。

コロナで中国人研究員が来日できない!

そんな中、新型コロナウイルスの影響が、パンダの出産にも及びました。

日本と中国との渡航が制限され、これまで中国・成都にあるパンダの繁殖研究施設から駆けつけていた研究員が来日できなくなりました。
パンダの赤ちゃんは体長15センチほどの小さな体で生まれるため、飼育下でも死亡率が高く、特に生まれてから1週間は「魔の1週間」と呼ばれています。
そのため、生まれた赤ちゃんを、一度、母親から取り上げて健康状態を見る必要がありますが、産後の母親は気が立っていることがあるため、危険を伴う取り上げは経験豊富な中国人研究員が行ってきました。
日本人スタッフ
「中国人研究員を頼りにしてきた部分がすごくあるので不安だらけです」

日本人だけで挑む出産

頼りになる中国人研究員がいない中、今回は初めて日本人スタッフだけで出産と子育てに臨むことになりました。
日本人スタッフだけで挑む手探りの出産。

これまで中国人研究員に任せていた取り上げの作業を自分たちでもできるようにと実物の大きさに近いぬいぐるみを使って本番をイメージしながら練習をします。
母親に皿に塗った好物のハチミツを与えて、気をそらした隙に赤ちゃんを取り上げる作戦です。

失敗ができないため、スタッフたちは入念に手順を確認していました。

いよいよ出産へ

そして、11月22日、良浜の破水が始まりました。

知らせを受け、早朝にもかかわらずスタッフが集まります。
ところが、スタッフたちは経験のない事態に再び直面します。

通常、パンダは破水してすぐに出産しますが、良浜は赤ちゃんをなかなか生みそうにありません。

時間がたち、羊水が減ると、赤ちゃんは子宮の壁に圧迫されて死んでしまうおそれがあります。

スタッフの緊張感も高まっていきました。
破水から8時間後、良浜がいきみ始めました。

午前11時50分、ついに元気なメスの赤ちゃんが生まれました。
そしていよいよ、スタッフが赤ちゃんの取り上げに臨みます。

蜂蜜を塗った皿で良浜の気をそらし、練習どおりにできました。

“コロナ禍”乗り越え大きな“自信”に

「良浜が破水した」という連絡を受け、私たちはパンダ舎に駆けつけました。

しかし、なかなか生まれず一時はどうなることかと思いましたが、赤ちゃんが無事生まれたとの一報を受け、胸をなで下ろしました。

取材をしていて、特に印象的だったのは、中国人研究員が不在の中で行う出産について、若手スタッフが不安を吐露していたのに対し、ベテランはこの経験を「チャンス」だと捉えていたことです。
ベテランに鼓舞される形で若手スタッフたちは交配から出産、そして、産後のサポートまでを自分たちだけでやり遂げ、彼らの表情は達成感や充実感にあふれていました。
コロナ禍でいろいろなことが制限され、窮屈さを感じる昨今ですが、スタッフたちのように「逆境をチャンス」と捉えて一歩を踏み出すことで、大きな経験と自信を得ることができるのだと取材を通して感じました。
パンダの赤ちゃんは良浜とスタッフの愛情を一身に受け、日に日にかわいらしさが増して目が離せそうにありません。

引き続き、パンダとスタッフたちの「子育て奮闘記」を取材していきたいと思います。
和歌山放送局記者
竹内宗昭
平成29年入局
南紀田辺支局を経て去年夏から県政を担当
和歌山放送局ディレクター
横内悠希
平成29年入局
「探検バクモン」「逆転人生」などパンダをテーマにした番組を多数制作