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オリンピック 内定選手は約20% 半年で選考進むかが課題に

1年延期になった東京オリンピックが、ことしの7月に開幕します。これまでに日本代表に内定した選手は、全体の20%程度にとどまっていて、世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないなか、これから半年で代表選考が進むかどうかが、大きな課題です。
新型コロナウイルスの感染拡大で、東京オリンピックの開幕はことし7月に延期となり、代表選考に関わる大会も、国際大会を中心に延期や中止が相次ぎました。

NHKのまとめによりますと、これまでにオリンピック代表に内定した日本選手は、33競技のうち13競技の117人となっています。

代表選手は、最終的に600人規模になると見込まれていて、柔道や卓球、テコンドー、スポーツクライミング、自転車では、すでに出そろっている一方で、全体では20%程度にとどまっています。

選手選考の方法は各競技で異なり、競泳や陸上といった国内の大会が重視される競技では、今後、日本選手権などの主要な大会が予定どおり開催できるのかがカギとなります。

一方、選考に関わる国際大会の開催については、まだ日程が決まっていない競技もあるほか、日程が決まっていても、感染拡大が続くなかでの開催は「不透明だ」と指摘する競技団体の関係者も少なくありません。

大会の主役となる選手たちの代表選考が、これから半年で進むのか、オリンピック開催に向けた大きな課題となっています。

国内大会の感染対策 工夫続く

内定選手が今後、数十人規模で決まる陸上や競泳は、国内で行う日本選手権が代表選考の場となります。

NHKのまとめによりますと、オリンピックの33競技のうちほとんどで、日本選手権やプロのリーグ戦など国内の大会が再開され、各競技団体は新型コロナウイルス対策として、特性に応じた形で、細かい工夫や模索をしながら運営をしています。

▽去年7月という早期に全国規模の大会を再開させた陸上では、いわゆる「密」対策として、トラックでの中長距離のレースの出場選手数を絞り、走り終えた選手たちには速やかに退場を求めることや、レース後の報道陣の取材のほとんどをオンラインで行う仕組みをいち早く構築するといった対策を重ねてきました。

▽ウエイトリフティングの全日本選手権では、通常は壇上に置いて共用する滑り止めのための「炭酸マグネシウム」を、紙袋に入れて個別に渡し、壇上に上がる前につけてもらうようにしました。

▽アーティスティックスイミングの日本選手権では、選手やコーチの「声援」を禁止し、それに合わせて、日本代表は演技に使う音楽を変える対応を取りました。

▽空手では、技が決まった時などに大きな声を上げる「気合い」について、1対1で対戦する「組手」では、頭部を覆う防具と口元に特製のシールドを着ければ「気合い」を出しながらの大会や練習を認めました。

ただ、先月の全日本選手権に出場した複数の選手が、新型コロナウイルスのPCR検査で陽性と判定されました。

▽また、レスリングでは、試合前の選手とレフェリーの握手を禁止したり、レフェリーが勝った選手の手を持って挙げる「勝ち名乗り」を手を持たずに指し示す形に変えたりしています。

各競技の内定選手内訳

NHKのまとめで現在、代表に内定している117人の選手について競技ごとの内訳です。

▽陸上は、競歩とマラソン、そして長距離で合わせて16人が内定しています。

▽自転車も、16人で内定選手がそろいました。

▽柔道は14人、すべての階級で内定選手が決まりました。

▽セーリングは14人。

▽水泳はアーティスティックスイミングと飛び込み、そして競泳で合わせて13人。

▽レスリングと▽カヌーは、いずれも8人。

▽卓球は、男女3人ずつ6人の内定選手、すべてがそろっています。

▽射撃と▽ボクシングも、それぞれ6人が内定。

▽スポーツクライミングと▽テコンドーは、いずれも4人で内定選手が出そろいました。

▽体操は、トランポリンの2人が内定しています。

一方で今後代表に内定する400人を超える選手たちは、バドミントンやテニス、トライアスロン、ウエイトリフティングなど多くの競技で、今後の国際大会での結果をもとに選考が行われるほか、陸上や競泳はそれぞれことしの日本選手権が代表選考の場となります。

また、東京大会で復活した野球・ソフトボールや、サッカー、バレーボールなど団体競技は、リーグ戦や強化試合の内容などを踏まえて代表選手が発表されることになります。

サッカーは国内外選手の融合が課題

サッカー男子の24歳以下の日本代表は、去年1年間、海外のチームに所属する主力選手とJリーグ勢がともにプレーする機会がなく、限られた時間で、選手どうしの連携をどう深めていくかが、今後の強化の課題になります。

サッカー日本代表の24歳以下で構成される東京オリンピック世代は、自国開催の大会で目標とする金メダル獲得をねらいます。

東京オリンピック世代には、19歳の久保建英選手や守備の要、冨安健洋選手など7人が、去年秋に行われた年齢制限のない代表の強化試合でメンバーに選ばれるなど、ヨーロッパの主要リーグで実績を残した選手がそろっています。

さらに、Jリーグで新人最多記録に並ぶ13点をマークした川崎フロンターレの三笘薫選手など、国内でプレーする選手も、力をつけてきています。

ただ、新型コロナウイルスの影響で去年1年間、海外のチームに所属する主力選手とJリーグ勢がともにプレーする機会がなく、本番までの限られた時間で、選手どうしの連携をどう深めていくかが課題になります。

陸連専務「選考大会開催が鍵」

JOC=日本オリンピック委員会の選手強化本部長で、東京大会の日本選手団の総監督も務める、日本陸上競技連盟の尾縣貢専務理事は、東京オリンピックの開催に向けて公平な代表選考を行うことができるかがポイントになるという見解を示しました。

尾縣専務理事は、新型コロナウイルスの感染拡大が国内外の大会の再開の動きに及ぼす影響を考慮したうえで「透明性と公平性を損なわないように、しっかりと代表の枠を埋めていかないと、オリンピックの価値やスポーツの価値が下がってしまう。しっかりとした選考をすることが、本当にカギになる」と述べました。

オリンピック競技の中では、早い時期に大会を再開させた日本陸連での対策については「現場に即したものをどう作り上げていくかにいちばんの苦労があった。オリンピック・パラリンピックを考えて『日本は動いているぞ』ということを、世界に示さないといけないという気持ちがあった」と話しました。

そのうえで尾縣専務理事は、競技団体どうしの情報共有の重要性を強調し「情報をしっかり吸い上げて体系化し、競技団体の知識や経験にしていくことがJOCの役割だと思う」と述べました。

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