株高は2021年も続くのか ~“繁盛”の子年 ○○○○の丑年~

株高は2021年も続くのか ~“繁盛”の子年 ○○○○の丑年~
「ジェットコースターに乗ったような1年だった」市場関係者のことばが象徴するように、目まぐるしい動きを見せたことしの株式市場。新型コロナウイルスの感染拡大で実体経済は厳しいにもかかわらず、日経平均株価は、年末の株価としては31年ぶりの高値となりました。相場の格言では、2020年・子年は「繁盛」。丑年の2021年は「つまずき」です。2021年は、どんな株式市場になるのでしょうか。(経済部記者 木村隆介・古市啓一朗)

地味で静かだった大納会

12月30日、東京証券取引所では2020年の取り引きを締めくくる大納会が開かれました。例年であれば、その年を代表する著名人を招いて、600人を超える市場関係者が「手締め」をしてことし1年の取り引きを締めくくるのが恒例です。しかし、新型コロナウイルスに翻弄されたことしはゲストも招かず、参加者の数も40人に減らして静かな大納会となりました。

ただ、日経平均株価は、年末の株価としては31年ぶりの高値となり、東京証券取引所の幹部からは「システム障害で終日売買が停止する事態を起こしたこともあり、経験したことのない1年だった。何はともあれ、上げ相場で終わってよかった」と安どの声が漏れていました。

ジェットコースターのように

ことしの日経平均株価は2万3000円台からのスタートでした。1月の時点ですでに中国を中心に感染は始まっていましたが、投資家の間では当初、新型コロナウイルスについて「季節性のかぜみたいなものだ」と見る人もおり、影響は強く意識されませんでした。しかし、2月に入って欧米などで感染が拡大。人やモノの動きの制限が強まると、世界経済の先行きに対する悲観論が一気に広がり、世界同時株安の様相を呈するようになります。

東京市場は3月中旬に1週間の値下がり幅が3300円を超え、1987年のいわゆる「ブラックマンデー」の週を上回りました。売りが売りを呼ぶ展開に、市場関係者の頭によぎったのは、12年前の「リーマンショック」でした。またも金融危機が起きるのではないか…。しかし、その後株価は順調に回復し、9月にはコロナ前の水準を回復しました。日本やアメリカをはじめとした各国の中央銀行が、相次いで大規模な金融緩和に踏み切ったことに加え、政府が巨額の財政出動に動いたためです。

さらに11月のアメリカ大統領選で、バイデン氏が勝利を宣言すると市場に安心感が広がり、株価の上昇が加速。その後も、新型コロナウイルスのワクチンが実用化されるとの期待もあって日経平均は上昇基調を維持し、上げ相場でことしの取り引きを終えました。

悪いことは見ない?!

株価は将来の見通しを「先取り」すると言われ、必ずしも実体経済を反映するとはかぎりません。そのことを考慮しても、GDP=国内総生産の規模は感染拡大前の水準には戻っておらず、足もとでは感染の再拡大が続き、変異したウイルスの感染も広がっています。

こうした状況にもかかわらず、株価が上昇を続ける背景に「悪いことは見ないようにする」投資家の心理もあると話す市場関係者もいます。
市場関係者
「感染拡大が続くかぎり、金融緩和は維持されると多くの投資家はみている。目の前の懸念材料は見ないふりをしても問題はないと解釈しているようだ。そうなれば『株高に乗り遅れるな!』という心理が働き、さらに株を買う動きが広がっていく」

個人投資家も心配

個人投資家の中にも、先行きについて気をもむ人がいます。東京の会社員・森祐太朗さん(27)は、将来に備えるため3年前から投資を始め、東証1部の株式などを売買しています。森さんはこの1年間で、保有する株式や投資信託の評価額を増やすことができました。ただ、ことしの相場は「政策の恩恵が強い」と慎重にみています。
森さん
「何かあれば金融政策で支える、という動きが続けば不健全だと感じる。実体経済とのかい離も感じ、いつまで今の上昇局面が続くのか不安もある」

“K字回復”

さらにことしの株式市場の特徴をあらわすことばに、“K字回復”というものがあります。個々の企業の株価を見ると、業種によって2極化しているからです。

株価の値上がりが目立ったのは「情報・通信」「精密機器」など、デジタル化やテレワークの進展の恩恵を受ける業種です。一方、新型コロナの影響の大きい「航空」「建設」などは、ことしは値下がりが目立ち、業種によって明暗がはっきりと分かれる形となっているのです。

“つまずき”の丑年 ポイントは

ねずみ年の2020年は、相場の格言は「繁盛」。株価だけを見れば、あながち間違ってはいなかったかもしれません。
2021・丑年の格言は「つまずき」です。ちょっと心配になりますが、来年の株価を見る上でのポイントについて、第一生命経済研究所の熊野英生 首席エコノミストは次の3つを挙げています。
【1】 ワクチン
【2】 アメリカ・バイデン次期大統領
【3】 日本企業の収益
<ポイント1 ワクチン>
熊野さんがまず最初に挙げたワクチンですが、株式市場はすでにワクチンの効果を先取りしてしまっているとしたうえで、次のような見方を示しました。
熊野 首席エコノミスト
「ワクチンの接種が実際に進んで感染の終息につながっていくようであれば、日経平均株価は3万円台の大台も見えてくる可能性がある。逆に期待していた効果が見られなければ、2万4000円のところまで落ちてくる可能性もあり、株式市場は、ワクチンの効果がどのくらいかというとことを春から年半ばにかけて見極めにいくのではないか」
<ポイント2 バイデン次期大統領>

2つ目に挙げたのが、アメリカのバイデン次期大統領の経済政策です。アメリカ国内の経済の回復に加えて、中国との関係がどうなるかがポイントだとしています。
熊野 首席エコノミスト
「バイデン大統領の具体的な経済政策はまだあまり明らかになっていない。政権がスタートし、消費も所得、雇用が増える経済政策を行えるかどうか。そして、トランプ大統領時代の中国との貿易戦争を方向転換させるのか。それとも同じような緊張した状態が続くのか。仮に続くのであれば、あまり明るい見方をすることはできない」
<ポイント3 日本企業の収益>

3つ目のポイントは、日本企業の収益です。熊野さんは、株式市場は現在の企業収益ではなくて、先々の企業収益を予想しながら株価がそれを織り込んでいくとしたうえで、次のように指摘しました。
熊野 首席エコノミスト
「海外の国際機関の予想では、欧米に比べると日本の成長率というのは非常に低い、見劣りするという状況です。ですから国内外の投資家が欧米企業の方が成長し、日本企業はあまり成長しないという少し慎重な見方をし始めると、株価は下がっていく可能性もある」

株価は経済の体温計?

これまで“株価は経済の体温計”と言われてきました。しかし、コロナ禍で厳しさが続く実体経済とは裏腹に株価が上昇を続けた、2020年の株式市場を振り返ると、本当に適正な水準なのかどうか、慎重に見極めることが必要だと感じています。

新型コロナの収束のめどが立たない中で、感染拡大の防止と経済活動の両立を図りながら、経済を回復軌道に乗せることができるのかどうか、株式市場の取材を通じてしっかりウォッチしていきたいと考えています。
経済部記者
木村 隆介
平成15年入局
福井局、国際部、ベルリン支局を経て現所属
金融業界を担当
経済部記者
古市 啓一朗
平成26年入局
新潟局を経て現所属
金融業界を担当