鳥インフル 別系統のウイルスも見つかる 複数ルートで侵入か

先月以降、国内各地で異例のペースで鳥インフルエンザの発生が相次いでいますが、鹿児島大学が調べたところ、各地で見つかっているのとは系統が異なるウイルスが見つかったことが分かりました。研究グループは、野鳥が複数の系統のウイルスを複数のルートから各地に運び込んでいることで感染の拡大につながっているおそれがあるとして、厳重な警戒が必要だとしています。

今シーズン国内で検出されたウイルスは昨シーズン、ヨーロッパで流行した致死率の高い高病原性の「H5N8型」の鳥インフルエンザウイルスと遺伝子がほぼ一致し、渡り鳥によって営巣地のシベリアを経由して日本に持ち込まれたとみられています。

一方で、鹿児島大学のグループが今月21日に鹿児島県内で渡り鳥が飛来する田んぼの水を採取して解析したところ、別の系統のウイルスが検出されました。

このウイルスはこれまでに見つかっているのと同じ「H5N8型」ではあるものの、遺伝子の配列は大きく異なっていて、今シーズンにヨーロッパで広まっているウイルスとほぼ一致していました。

また、このウイルスは、野鳥の死亡例の確認が多く、ニワトリでも致死率がやや高くなるおそれがあるということです。

研究グループは、野鳥が複数の系統のウイルスを複数のルートから各地に運び込んでいることで感染の拡大につながっているおそれがあるとしています。

鹿児島大学の小澤真准教授は「多様なルートで大量のウイルスが日本に侵入していると考えられる。ウイルスによる環境の汚染が進んでいるとみられ、厳重な警戒が必要だ」と話しています。

今季のウイルスの特徴は「感染に気付きにくい」

今シーズン、異例のペースで鳥インフルエンザの発生が相次ぐ背景には、ヨーロッパなど海外での感染の拡大や、感染に気付きにくいウイルスの特徴があると考えられています。

ヨーロッパでは、昨シーズン、ポーランドやハンガリーなど東ヨーロッパを中心に流行し、いったん収まりましたが、ことし10月以降には、ドイツやオランダ、イギリスやデンマークなど広い範囲に拡大し、今月23日の時点で15か国で養鶏場や野鳥などからウイルスが検出されています。

また、アジアでは日本や韓国、それに中東のイランやイスラエルでも検出されています。

先月以降、日本国内で検出されたウイルスの遺伝子の解析結果からは、ヨーロッパで広がったウイルスが渡り鳥によって営巣地のシベリアに運ばれ、日本に持ち込まれたとみられるということで、解析を行った北海道大学の研究グループは、渡り鳥の営巣地のシベリアからサハリンや千島列島を経由して北海道に入るルートや、朝鮮半島経由の複数のルートで各地に持ち込まれた可能性があるとしています。

また、今シーズン検出されているウイルスは、感染してもニワトリが死ぬまでの期間がこれまでのウイルスよりも長く、感染に気付きにくいことも拡大に影響しているとみられています。

国の研究機関、農業・食品産業技術総合研究機構が香川県三豊市の養鶏場で検出された高病原性の「H5N8型」のウイルスをニワトリに感染させる実験をおこなったところ、ウイルスを高い濃度で感染させても、死ぬまでに最大6日程度かかりました。

2004年に山口県で検出されたウイルスや、おととし香川県で検出されたウイルスでは3日目までにすべてが死んだということで、今回のウイルスは感染から死ぬまでの期間が長いのが特徴だということです。

そして、感染してもトサカが紫色になるなどの症状は見られないうえ、すぐには大量のニワトリが死なないことから、気付かないうちに養鶏場で感染が広がるおそれがあるとしています。

農林水産省では、日頃からニワトリを綿密に観察し、元気がなく、餌をあまり食べないといった通常と異なる症状が見られた場合には早期に通報するなど厳重な警戒が必要だとしています。

衛生管理基準守られていない養鶏場も

鳥インフルエンザは先月以降、香川県や宮崎県など、西日本の各地で相次いでいましたが、今月24日には千葉県でも確認され、範囲が広がっています。

今シーズン最初に鳥インフルエンザの発生が確認されたのは香川県で、その後、四国では、高知県、徳島県、九州では、福岡県、宮崎県、大分県、中国地方では、広島県と岡山県、関西では、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県、それに関東では、千葉県の、合わせて13県の32か所の養鶏場で発生し、ニワトリの殺処分は460万羽余りに上る見通しです。

わずかおよそ2か月の間に、感染が相次いで確認され、これまでにない異例の事態となっています。

これまでの国の専門家チームの現地調査では、いずれの養鶏場の周辺にもウイルスを運ぶ野鳥が飛来するため池や川があるほか、鶏舎に野生動物が入り込む隙間が見られたり、人や車両の消毒が不十分であったりするなど、国の衛生管理基準が十分守られていない養鶏場が多くみられ、野鳥によって養鶏場周辺に運ばれたウイルスが野生動物や人や車両を介して持ち込まれた可能性があると指摘されています。

また、野鳥の死体やふんなどから、北海道、鹿児島県、新潟県など8道県でウイルスが検出されていて、農林水産省は全国で発生するリスクが極めて高いとしていて、警戒の強化を呼びかけています。

専門家「ウイルス 全国どこにでもある状況」

鳥インフルエンザに詳しい北海道大学の迫田義博教授は今シーズン、鳥インフルエンザが異例のペースで発生していることについて、「渡り鳥が複数のルートでウイルスを日本に持ち込み、全国どこにでもある状況になっていることが最大の要因だと思う。環境中にウイルスが多くあっても、養鶏場での衛生対策が徹底されていれば防ぐことはできるが、ここ数シーズン、鳥インフルエンザの発生がなかったため、養鶏場での対策に気の緩みがあったことは否めない」と話しています。

また、ニワトリがウイルスに感染してから死ぬまでの期間が長いことについては「ウイルスを排出している時間が長いということなので、周囲にウイルスを広げる要因にもなるし、異常を見つけるのが遅れることにもつながる。対策としては、毎日の観察を綿密に行い、もし死亡率が高くなれば、速やかに関係機関に届け出てもらうことに尽きる」と指摘しました。

そして、今後の見通しについて「まだ感染が広がりやすい1月や2月を前に今の状況は大変悲観的だ。環境中のウイルスの量は過去にないほど多いことは間違いないと思う。衛生対策を徹底し、養鶏場での発生を最小限に留めるよう3月や4月になり、渡り鳥が飛来する季節が終わるまで、関係者が一丸となって、対策を取らないといけない。養鶏業にとって、過去最大の危機だ」と述べ、対策を強化する必要性を強調しました。