車の“サブスク”利用者増加 “公共交通機関の混雑避けたい”

新型コロナウイルスをきっかけに車の新たな使い方が広がっています。
公共交通機関の混雑を避け、車で移動したいというニーズが高まり、月々定額で車を利用できるサービスの利用者が増えています。

このサービスはサブスクリプションと呼ばれ、利用するたびに料金を支払うレンタカーとは異なり、月額の料金を支払って月単位や年単位で車を利用できるサービスです。

トヨタ自動車の車を扱う専門の会社では、ことし7月から5か月間の申し込み件数が前の年の同じ時期の8倍に増え、専用の車種を投入するなどサービスの充実に乗り出しています。

また、東京のベンチャー企業は、今年度前半の申し込みが前の年の同じ時期の4倍近くにのぼっているほか、ことし1月から事業を始めたホンダも当初は埼玉県の1店舗だけでしたが、利用者が増えたため30店舗以上に増やしました。

新型コロナウイルスの影響で公共交通機関などの混雑を避け車で移動したいというニーズが増える中、月額の料金に保険料や税金の分が含まれ、個別に手続きや支払いをする手間が省けることが利用者の増加につながているとみて、各社とも今後、事業を強化することにしています。

ホンダの前田智子さんは「コロナ禍での移動のニーズに非常にマッチしたサービスで、さらに展開していきたい」と話していました。

利用者は

東京・江戸川区に住む40歳の会社員の男性は、ことし7月からサブスクリプションで車を利用していて、子どもの習い事の送り迎えや買い物などに使っています。

利用しているのは5人乗りのコンパクトカーで、月額の料金はおよそ4万円。

5年間の契約で保険料や税金、車検などの分もすべて含まれているということです。

男性は東京への転勤をきっかけに所有していた車を手放した後、ここ10年ほどは車が必要な時にはカーシェアリングを利用していました。

しかし、新型コロナウイルスをきっかけに公共交通機関や、自分の前に誰が使ったがわからないカーシェアリングの利用はなるべく控えたいと考えるようになったということです。

また車を購入するには費用がかさむうえに手続きも煩雑になることから、サブスクリプションで車を利用することを決めたということです。

男性は「コスト面ではカーシェアリングの方が安くなりますが、サブスクリプションは好きなときに車を使えるのが便利です。まだ遠出ができていないので、感染拡大がおさまったら家族旅行などに使いたい」と話していました。

意識調査 “混雑避け車で”

車のサブスクリプションサービスを手がける会社が先月行った消費者の意識調査では、混雑を避けるため車で移動したいという人が増えていることがうかがえます。

トヨタ自動車のサブスクリプションを手がける「KINTO」は11月、全国の20代から60代のおよそ1800人を対象にインターネットを通じてアンケートを実施しました。

それによりますと新型コロナウイルスの感染が広がる中、どのような手段で移動したいかを複数回答でたずねたところ、▽徒歩が82.9%と最も多く、次いで▽自家用車が80%、▽自転車が62.3%▽電車が35.3%▽バスが24.9%などとなっていて、公共交通機関を自家用車が上回っています。

また車を持っていない人にこれからどのような方法で車を持ちたいかを複数回答でたずねたところ▽ローンを組むが41.8%、▽現金で一括購入するが39.6%と多数を占めています。

一方、サブスクリプションは10.9%とまだ少数ですが、半年前に同じ調査をしたときの2.5%から大幅に増えています。

KINTOの小寺信也社長は「新型コロナウイルスの影響もあって車を利用したいというニーズが強まっている。サブスクリプションを通して、単なる移動ツールとしてでなく車の楽しさを味わってもらうことも追求していきたい」と話しています。