「駅前チアリーディング」活動1000回に コロナ禍に元気与える

都心の駅前を舞台に道行く人をボランティアで応援する「駅前チアリーディング」。ある女性が始めたこの活動が、ことし1000回の節目を迎えました。新型コロナウイルスの影響で人とのつながりが薄れつつある今、元気を与えてくれる存在として注目を集めています。

20代と30代の女性7人からなるチアリーディングチーム「全日本女子チア部」は、JR新橋駅など都心の駅前で毎週、道行く人たちをボランティアで応援する「駅前チア」の活動を続けています。
リーダーの朝妻久実さん(37)が10年ほど前に仲間と2人で始めたのがきっかけで、活動はことし1000回の節目を迎えました。

朝妻さんはかつて地方のテレビ局のアナウンサーでしたが、活動の拠点を東京に移そうとした際に、100を超えるオーディションに落選し、自信を失ったといいます。

その時、大学時代に熱中したチアリーディングを思い出し、自分を変えたい、挫折を経験した今こそ心の底からエールを送れるのではないかと、思い切って活動を始めたということです。
その後は、思いに共感したダンスのインストラクターや主婦、それに病院の職員など、さまざまな顔を持つ仲間が加わり、朝の通勤時間帯を中心に道行く人たちを励まし続けてきました。

新型コロナウイルスの影響で人とのつながりが薄れつつある今、朝妻さんたちはこれまで以上に応援に力を込めています。

今月3日には、JR新橋駅前で「コロナ禍の中で仕事を失ってしまったり、やりたいことができなかったり。でもそんな時こそ、口角を上げておなかに力を入れて、元気に頑張っていきましょう」と全力でエールを送りました。
この日「駅前チア」を見ていた1人で、新橋駅近くでバーを経営する木野幸久さんは、感染拡大の影響で客足が大幅に減り悩んでいましたが、朝妻さんたちに元気づけられ、店を続けていく決心がついたといいます。

木野さんは「酒を飲んであすからまた頑張ろうという気持ちになってほしい、お客さんの笑顔が見たいという思いが強くなりました。彼女たちの活動が刺激になっています」と話していました。

また、チームではSNSなどを通じて駅前以外の人たちにもエールを送っていて、緊急事態宣言が出されたあとのことし4月には、医療関係者向けに感謝の気持ちを伝える動画を公開しました。
群馬県の福祉施設に勤める看護師の天田美鈴さんは、緊張を強いられる勤務が続き、追い詰められていた時にこの動画を目にして勇気づけられたということで「気持ちは目に見えないものですが、それを発信してくれる行動力や思いに感動しました」と話していました。

「駅前チア」は来年も1月7日から活動を始める予定で、リーダーの朝妻さんは「コロナ禍の今だからこそ、それぞれの人が人生を前向きに生きられるよう、後押しできる存在になりたい」と決意を新たにしていました。