仕事がない 家がない 年末年始どうすれば…

仕事がない 家がない 年末年始どうすれば…
「冬はね、24時間営業のディスカウントストアの中を一晩中歩くんだ」

毎年寒くなると、私(吉永)はこのことばを思い出します。
6年前に参加した路上生活の人たちを支援するボランティア活動で、暖の取れる公共施設などが閉まったあとどう過ごしているのかをたずねたときの答えでした。

でも、ことしは…?

コロナ禍で明かりの消えた繁華街を歩きながら、いつも以上に危険が迫っている気がしました。
何かできることはないだろうか、そんな思いで取材を始めました。

※文末に主な支援の動きをまとめています。
(ネットワーク報道部 記者 吉永なつみ、目見田健、國仲真一郎 SNSリサーチ:三輪衣見子)

ベンチから落ちて 骨折した女性も

寒さが一層厳しくなった12月下旬、NPOが都内で生活困窮者を対象に食料を配布すると聞き足を運びました。

都庁前の広いスペースには長い行列ができていました。隣では相談会も開かれていて、食料を受け取ったあと相談している人もいます。
その様子を、配布された食料を抱えてじっと見つめる人がいました。

相談したいのに、遠慮しているのだろうか?
「どうされましたか」
「人を探しているの」
女性の声でした。
上着のフードをすっぽりとかぶり、マスクをしていたので表情は分かりません。
フードの隙間からグレーの髪の毛がわずかに見えました。

女性が探していたのは、各地の炊き出しでよく会う顔なじみの男性だそうです。
「彼はまだ若いからいくらでもやり直せる。いつも会うと励ますのだけど、姿が見えないと何かあったのかと心配で…」
しばらく雑談していると、分かったことがありました。

女性は炊き出しから炊き出しへと、この寒空のもと一日に何キロも歩いていること。
携帯電話は持っているものの、使えなくなっていること。

夜を過ごすのは小さなベンチ。
以前腰掛けてうとうとしていたところ、滑り落ちて骨折し、何か月も入院したことがあるそうです。

そんな危険と隣り合わせの生活だから、いつもいる人の姿が見えないと気がかりなのだと話しました。

今いちばん心配なことは何ですかと聞くと「年末年始に体調を崩さないか不安。どこに電話すればいいかもわからない」と答えました。

女性からの不安の声が気にかかり、生活困窮者のために無料・低額診療を行っている全日本民医連に問い合わせました。
全日本民医連事務局 山本淑子次長
「本当に体調が悪い場合はどこでもいいので近くの医療機関に行けばいいんです。ただ、行く前には必ず電話をして症状を伝えてください。所持金がないから受診できないと思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。治療費を払えなくても病院のソーシャルワーカーと福祉事務所が手だてを考えてくれます。熱がある場合は都道府県が設けている新型コロナの受診・相談センターに電話して病院を案内してもらってください。都内なら東京都発熱相談センターです。(電話 03-5320-4592 24時間対応)」
山本さんはそこまで一気に話すと「ただね…」と付け加えました。
「最近、生活に困った人向けに健康相談会を開くと、固定電話もスマホも持っていない、持っていても電源が入らないという人が結構いらっしゃるんです。年末年始病院に電話したくてもできない人が出るのではないかと、とても心配です」

統計には 現れないけれど

このコロナ禍でどれくらいの人が住む場所を失い、路上生活を余儀なくされているのかは、あまりわかっていません。国が全国規模で行っている調査は感染が広がる前、ことし1月時点のものが最後です。

東京都がことし8月に行った調査では都内の「路上生活者」は877人。1月に比べて12人、去年の同じ時期に比べると160人減ったとされています。都は「これまで取り組んできた対策の効果が出ている」としています。
ただ、調査は日中に路上で過ごしている人を目視で確認する方法で、昼間仕事をして夜だけ路上生活をする人やネットカフェで寝泊まりしている人など、支援の対象とするべき人が含まれていないという指摘もあります。

ツイッターでは最近路上生活をする人が増えた気がするという投稿が相次いでいます。
「コロナ渦のなかでホームレスのひとが増えた気がしている」

「明らかに新宿周辺のホームレス増えた…若者も…」
都内を中心に路上生活者の支援などを行う認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」には例年のおよそ2倍の相談が寄せられ、特に女性の相談が増えているそうです。
認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」大西連理事長
「新型コロナの影響で生活に困る人が増えている。人目を気にして支援を求めることにちゅうちょする人もいるため実態はもっと深刻だと考えています」

座りにくいベンチが発するメッセージ

路上生活を余儀なくされた人が安心して過ごせる場所はそう多くありません。

ことし11月の早朝、東京 渋谷区で路上生活をしていた64歳の女性が殴られて亡くなりました。
女性はコロナ禍で仕事がなくなり、春ごろから夜になるとこのバス停に身を寄せていました。
彼女が最後に座って寝ていたベンチ。
真ん中には仕切りがあり、横になることはできません。

座面は小さく背もたれもありません。
座ってみると滑り落ちそうになるうえ、バス停の骨組みの部分がちょうど背中にあたりました。

長時間、座り続けることはできない。
ましてやここで夜を明かすとなると相当な気力と体力が必要だと感じました。
建築評論などが専門の東北大学大学院の五十嵐太郎教授は、こうした“座りにくいベンチ”はあるメッセージを発しているといいます。
東北大学大学院 五十嵐太郎教授
「ベンチは座ることを目的としたものですが、通常は細長く寝そべることも可能です。ホームレスにとっては地面の上で寝ないで済む台として活用できる。それを座る機能だけを残して寝ることを不可能にしたのがこうしたベンチです。誰もが自由に使えるはずの公共の空間が、特定の層に対しては厳しい態度で臨んでいる。普通の生活をしている人はその意図は意識されないと思いますが、排除される人にとってはそのメッセージは明快です」

排除する社会は 誰にも優しくない社会

ほかにも公共のスペースに設置された構造物には同様のねらいがあるのではないかという五十嵐教授。社会の不寛容さの表れだと話しました。
五十嵐教授
「駅前や地下通路などに設置されている構造物は近年、防犯カメラの設置と並行するように増えてきました。特に役割を持たずその場所を占拠することでホームレスが滞在できないようにする、いわば“排除アート”です。社会の不寛容さの表れで、こうして他者を排除していくと、最後には誰にも優しくない都市になります」

実は… 気にしている人は大勢いる

悲しい事件がある一方で、最近路上生活をする人の支援をめぐりネット上で大きな反響を呼んだ記事があります。

タイトルは路上生活に至ったのは自業自得じゃない。「路上で暮らす人」に声をかけてみた。ウェブマガジンDANROに掲載されました。
書いたのはライターの和田靜香さん。
ことし12月に新宿のショッピングビルを歩いていた時、目立たない場所でいすに座り寝ていた人が目に止まり、その様子から路上生活をしている人だと思い声をかけたそうです。
渋谷で起きた事件も背中を押しました。

「たいへん失礼ですが路上でお暮らしですか?」
「そうです」

近くのコンビニで買った温かいお茶とコロッケパンと一緒に、なんとか支援につながってほしいと支援団体の連絡先をメモに書いて渡すと、女性は「ありがとうございます」と丁寧に言って頭を下げてくれたそうです。

この出来事をフェイスブックにメモ書きとして書いたところ驚くほど反響があったそうで、記事にはこうつづっています。
和田さん
「みんななかなか声はかけられないけど本当は気にしているんだなあと。恥ずかしいとか勇気が出ないとかそんな感じだろうか?」
路上生活をする人の中には声をかけられるのを嫌がる人もいて、食料などを渡そうとすると断られることもあるそうですが「私はおせっかいをしている」と思えば気にならないという和田さん。

おせっかいをする理由をこう説明します。
「私に住むところがあるのはたまたまラッキーなだけ。住むところがないのは不運と政治の無力が重なったから。自業自得なんかじゃない。自分に置き換えたら、私だったら声をかけてもらいたい。助けてもらいたい」
いつでも手渡せるように持ち歩いているという冊子を教えてくれました。
「路上脱出・生活SOSガイド」は路上生活をする人の支援に取り組む認定NPO法人「ビッグイシュー基金」が発行しています。

「食べ物がない」「体調がわるい」「泊まるところがない」など、困りごとに応じた行政や民間の相談先がまとめられていて、東京、大阪、札幌、名古屋、京都、福岡、熊本版があります。
突然声をかけるのをためらうときは、休んでいる人の足元にそっと置くだけでもいいそうです。

ちょっとのおせっかいで、悲しいことを防ぐ可能性が少しでもあるなら…そう思い、私も印刷して通勤に使うかばんに入れました。

年末年始 困ったらここへ

住まいを失うなどして生活に困っている場合は、なるべく公的機関が年末年始の休みになる前に相談に行くようにしてください。区の福祉事務所や市町村の福祉課などで生活保護や支援の相談を行っています。
ここでは各自治体やNPOなどが年末年始にかけて行っている支援策をまとめています。
東京都:ビジネスホテルを無償提供

【対象】
新型コロナウイルスの感染拡大の影響による失業などで住まいを失った人
※失業はしていないものの、仕事がなくなり住む場所(ネットカフェなども含む)が確保できないといった人も対象

【支援の期間・規模】
12月21日~1月19日のうち、原則1人2週間まで
1日最大1000室が提供可能

【申し込み・相談方法】
(1)「TOKYOチャレンジネット」経由
フリーダイヤル 0120-874-225
女性専用ダイヤル 0120-874-505
または「TOKYOチャレンジネット」ホームページから予約し、その後対面で相談・支援策の検討

(2) 各区/市の福祉事務所や自立相談支援機関で相談

【備考】
住まいを失う以前に都内で生活していたことが分かるものがあれば持参を
日本労働弁護団など「年越し・支援コロナ被害相談村」

【内容】
食事の提供、宿泊場所の確保支援など

【日時】
12月29日、30日、1月2日 午前10時~午後5時
東京・新宿区「大久保公園」
東京都内の支援団体が実施「年越し大人食堂」

【内容】
・食料の配布や生活面での相談
・都が用意しているホテルの受け付け窓口や公的支援窓口の案内・同行など

【日時・場所】
12月31日 午後3時~午後6時
東京・豊島区「東池袋中央公園」

1月1日、3日 正午~午後6時
東京・千代田区「聖イグナチオ教会」
大阪市の団体「新型コロナ住まいとくらし緊急サポートプロジェクトOSAKA」

【内容】
生活や就労の相談、宿泊・食料支援

【日時・場所】
12月30日~1月3日 午前10時~午後3時
大阪市西成区「東田ろーじ」
「よりそいホットライン」

年中無休・24時間、無料で生活全般に関する相談を受け付けています。
電話:0120-279-338
岩手・宮城・福島にお住まいの方は 0120-279-226
これ以外にも、全国各地の支援活動については「NPO法人ホームレス支援全国ネットワーク」がホームページでまとめています。

あなたに近い場所で支援を受けられる可能性があります。