避難勧告と避難指示の一本化など 避難情報の名称 大幅変更へ

自治体が発表する避難情報が来年から大幅に変わります。国の作業部会は、「避難勧告」と「避難指示」を「避難指示」に一本化するほか、「避難準備の情報」を「高齢者等避難」にすることなどを盛り込んだ提言をまとめ、24日、小此木防災担当大臣に提出しました。

去年の台風19号など、相次ぐ災害を踏まえて避難情報の在り方を検討してきた国の作業部会は去年運用が始まった、5段階の「大雨警戒レベル」と避難情報の改善を検討してきました。

今回の提言では、レベル3の「避難準備の情報」について、対象をより明確にしていち早い避難につなげるため、名称を「高齢者等避難」に変更します。

高齢者や障害者など、避難に時間がかかる人に避難の開始を求めることを強調しています。

レベル4の「避難勧告」と「避難指示」は違いが分かりにくいとして「避難指示」に一本化します。

危険な場所にいる人は全員、避難が必要です。

レベル5の「災害発生情報」は、住民の取るべき行動がわかりにくいなどとして、名称を「緊急安全確保」に改めます。

災害が発生したり切迫したりしている状況で自宅の2階への垂直避難など、少しでも安全を確保する行動を求めます。

しかし、「緊急安全確保」は必ず発表されるわけではありません。

あくまでレベル4の「避難指示」までに避難を終えることが重要だとして提言の表には、レベル4と5の間に線が引かれています。

このほか、避難に時間がかかる高齢者や障害者など、支援が必要な人がどこに、どのように逃げるのかを定めた計画、「個別計画」を、すべての市区町村の努力義務とする方針も新たに盛り込まれました。

提言を小此木防災担当大臣に手渡したあと、作業部会の座長で東京大学大学院の田中淳特任教授は、「去年、警戒レベルが導入されたばかりでの変更は運用する自治体に申し訳なく思うが、これ以降は情報の定着を目指し、避難行動につなげる文化を作っていってほしい」と指摘しました。

内閣府は、来年の大雨や台風の時期までに新たな避難情報を導入する予定です。

避難情報 相次いだ名称変更

避難情報は、近年相次ぐ災害を受けて、名称や内容の変更が繰り返されてきました。

例えば、「高齢者等避難」となる情報は、今回が3回目の名称変更となります。

2004年に統計上最も多い10個の台風が上陸するなど、水害が相次いだことから、よくとしの2005年、「避難準備(要援護者避難)情報」として設けられたのが最初です。

高齢者や障害者が避難を始めるだけでなく、一般の住民が避難の準備を始める意味も含まれていました。

しかし、その後の議論で、「『要援護者避難』という名称が、高齢者や障害者のためだけの情報と受け止められて、自治体が発表しにくくなっている」と指摘され、2014年には「避難準備情報」となりました。

さらにその後、2017年には「避難準備・高齢者等避難」に変更されました。

前の年の2016年、台風による水害で岩手県岩泉町の高齢者が暮らすグループホームで入所者9人が死亡したことを受け、高齢者や障害者などが避難を開始するタイミングであることを強調するのが目的でした。

そして今回、「高齢者等避難」となります。

このように相次ぐ名称変更で情報を発表する自治体からも戸惑いの声が聞かれます。

静岡市危機管理課の杉村晃一 係長は「情報の名前が多少変わっても住民にどのくらい伝わっているのか実感が持てていない。ことしは特に、コロナ禍で周知は大変だと感じるので国にも積極的にお願いしたい」と話しています。

「避難情報慣れ」が課題

また、そもそも情報の名称の変更が効果的な避難につながるのか、疑問だとするデータもあります。

静岡市は、2018年と4年前の2016年に市民500人余りに、避難情報が発表されたときにどう行動するか、アンケートをしました。

この中で、「すぐ避難」すると答えた人の割合は、
▽「避難指示」で48%と前回の調査から4ポイント低下したほか、
▽「避難勧告」は11%で17ポイント低下、
▽「避難準備の情報」は2%で2ポイント低下しました。

静岡市では2016年に避難準備の情報を3回発表したほか、2018年は避難準備の情報と避難勧告を合わせて7回出しました。

市は、住民の中に「避難情報慣れ」が起きている可能性があるとみています。

市危機管理課の杉村晃一係長は、「避難情報が住民に与える緊迫性と、行動につながる割合が落ちてきていると感じる」と話しています。

専門家「情報による効果は頭打ちに アプローチ転換必要」

住民の避難行動に詳しい京都大学防災研究所の矢守克也 教授は、これまでの情報の改善は被害の軽減に貢献してきたとしつつも、「情報による効果はもう頭打ちになりつつある。情報本体の改善に力を注ぐのではなく、情報を具体的な行動に結び付けられるようアプローチの転換が必要だ」と指摘しています。

そのうえで、「住民自身も情報の受け手であるという立場から1歩踏み出し、みずから情報を選び取るという意識変革が求められている」と述べ、近くの川の色の変化や水位の上昇など、身近な異変や情報などを利用した避難を開始する基準、「避難スイッチ」を決めるなど、主体的な取り組みが必要だと指摘しています。