食料提供などの支援受ける人 大幅増加 年末年始も支援続く

新型コロナウイルスの影響が長期化する中、支援団体が行う食料提供などの支援を受ける人は例年より大幅に増加しているケースが多くなっています。団体では、年末年始も生活が困窮する人たちへの支援を続けることにしています。

東京 新宿区を中心に活動するNPO「もやい」は、事務所で仕事を失った人などからの相談を受け付け、毎週土曜日に東京都庁前で生活相談会を開き、宿泊場所の紹介や健康相談それに食料の提供などを行っています。

先週の土曜日の19日に開かれた相談会では、仕事を失ったり収入が大幅に減ったりして生活に困窮する人などが開始の1時間以上も前から列を作り始め、およそ150人が集まりました。

集まった人には互いに1.5メートル以上距離をとってもらうなど、感染防止の対策を徹底し相談会を行いました。

相談会にはNPOの職員やボランティアなどおよそ30人が準備にあたり、用意されたレトルトの米や果物などの200人分の食料はすべて提供されたということです。

NPOによりますと、東京都庁前で毎週行っている相談会に訪れる人は、感染拡大以降は例年の2倍以上の150人を超えています。

これまで支援を受けたことがない若者が、新たに相談に訪れるケースも増えているということです。

NPO「もやい」の大西連理事長は「仕事を失ったり収入が減少したりしても、これまでは何とか持ちこたえることができたけど、感染拡大の影響が長期化する中で、生活の資金がなくなるなど追い込まれる人が増えていると感じている。年末に向けて、生活が苦しくなる人がさらに多くなると思うが、支援の体制は圧倒的に足りないのが現状です。支援団体はどこも手弁当でやっているので、ボランティアや寄付、SNSでコメントするだけでもいいので応援してもらえたらと思います」と話していました。

NPOでは、年末年始にかけても支援を継続することにしていて、1月1日の元日を除いて
▽今月29日から来月3日までオンラインなどで相談に応じるほか
▽来月2日の午後2時から東京都庁前で相談会を行う予定です。

相談会に訪れた人は

今月19日に東京都庁前で行われた相談会に訪れた人の中には、新型コロナウイルスの影響で生活が苦しく追い込まれているという声が多く聞かれました。

この日、初めて相談会を訪れたという38才の男性は、以前は清掃業で週に6日働いていましたが、新型コロナウイルスの影響で半分ほどに仕事が減ったということです。

収入はおよそ4割減り貯金を取り崩して生活をしていて、食事を1日に1食に減らすなどギリギリの生活を続けているということです。

男性は「生活が大変なうえ感染が広がっていて、さらに仕事が減るかもしれない不安があります。コロナが早く収束して、ちゃんと生きていけるようにと願っています。相談会には初めて来ましたが、ありがたいですし、また来たいと思います」と話していました。

また、東京都内に住む50代の男性は製本会社で働いていますが、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、シフトは大幅に減っているということです。貯金も少なく、生活費をできるだけ節約しています。

支援団体から食料の提供を受けることができる日にちや時間を確認し、多い時には1日に3か所で食料を受け取ることもあるといいます。

男性は「12月はいつもは忙しいですが、収入が大幅に減ってしまい残念です。毎週、食料の提供を受けていますが、ありがたいです」と話していました。

また、39才の男性は8年ほど前から路上生活をしていますが、感染拡大の影響で仕事が全く見つからず、収入がないということです。

男性は「相談会は毎週のように来ていて助かります。仕事ができないので現金が手に入らず厳しいです。公園内で寝泊まりしていますが、きちんと寝ることができず負担もたまっています」と話していました。

専門家「非正規 女性に深刻な影響」

第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは「新型コロナウイルス」と2008年の「リーマンショック」の雇用への影響について、影響を受けている業種や雇用形態に違いがあると指摘しています。

星野副主任エコノミストは、リーマンショックの時は外需や為替の動向に大きく左右される自動車産業を中心とした製造業が大きな影響を受けたため、男性が仕事を失うケースが多かったとしています。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、宿泊業や飲食などのサービス業が大きな影響を受けていて、サービス業では非正規雇用で働く人、特に女性が仕事を失ったり、休業を余儀なくされたりするケースが目立っているといいます。

さらに国の支援制度はありますが、影響が長期化しているため、非正規雇用で働く人や母子家庭などでは生活の資金がなくなり、追い詰められる人が増えていると指摘しています。

星野副主任エコノミストは「雇用調整助成金などの国の政策で失業率自体は緩やかな上昇にとどまっているが、その一方で、業種や雇用形態によっては影響がより深刻化している。感染が再び拡大し、企業の廃業や倒産のリスクが今後、高まるおそれがある。雇用確保のためには、人手が足りない業界や企業に移って、新たな場所で働くことができるように『労働力移動』の環境を整えることが重要だ」と話しています。

コロナ失業 8万人近くに

厚生労働省が全国のハローワークなどを通じた行った調査によりますと、ことし1月末から今月22日までに新型コロナウイルスの影響による解雇や雇い止めで仕事を失った人は、見込みも含め7万8417人に上っています。

仕事を失った人は実際にはさらに多いとみられ、厚生労働省は再就職に向けた支援を進めています。