子どもの自殺大幅増加 コロナ禍で何が

子どもの自殺大幅増加 コロナ禍で何が
「自分なんて生きていてもしかたない」「死にたい」「消えたい」

子どもたちから相談機関に寄せられている、多くの叫び。ことし、子どもの自殺が大幅に増えています。4月以降で、すでに300人以上にのぼり、コロナによる社会変化が背景にあると指摘されます。コロナ感染による10代以下の国内の死者は、現在までにゼロ(12月23日時点)。「感染で亡くなった人はいないのに、なぜ」、ネット上にはそんな声もあがります。いったい子どもたちに何が起きているのか。そして大人は何ができるのか。取材しました。(ネットワーク報道部・谷井実穂子)

去年から3割も増加

厚生労働省の発表によると、11月に、全国で自殺した小中高校生は、合わせて48人。

去年11月の26人から2倍近くに増えました。
自殺した人が前の年を上回るのは6か月連続です。

4月から11月までの期間では、329人と、去年の同じ時期より73人、3割近く多くなっています。

状況は明らかに深刻になっていますが、コロナの影響と言われても、具体的に何がどう作用しているのか、わかるようでわかりません。

実際、何が起きているのか。

日頃、相談に応じている機関の人たちならその変化を肌で感じているに違いないと、相談機関に話を聞いてみました。

「孤立」と「無価値感」

合わせて10を超える相談機関や医療機関に話を聞いて見えてきたもの。

それは、学校にも家庭にも居場所がなく「孤立」した子どもたちの姿でした。

その結果、自分が価値のない存在のように感じる「無価値感」を抱いて葛藤する悲痛な叫びも聞こえてきました。
自殺の原因は複合的な要素が絡み、はっきりと解明することは困難ですが、「孤立」や「無価値感」は、以前から子どもの自殺を考えるうえでのキーワードと言われてきたものです。

この2つがコロナで深刻化しているというのです。

子どもたちが日常を過ごす学校と家庭、それぞれに要因があるといいます。

学校に“なじめない”

まず、学校です。

学校と自殺、というと“いじめ”をイメージする人も多いかもしれません。

ただ、ことし、いじめの問題は目立って増えてはいないと相談機関の人たちは口をそろえます。

では何があるのか。

東京自殺防止センターの村明子さんは、次のように話します。
東京自殺防止センター 村さん
「休校期間があけてからも『なじめない』と訴える子どもたちが多いです。『なかなか友達ができない』とか」
ことしの学校は、長い休校から始まりました。

再開後も学校行事の数々が中止されたり、給食の時にも話をしないよう指導されたり、人間関係を育む機会がふだんよりも少なくなっています。

そうした中で、もともと関係作りが苦手な子ほど学校生活になじめず、孤立していくのです。
「友だち作りのきっかけをつかみ損ねた」

「みんな友だちがいるのに、自分だけ1人」

「居場所がない」
こうした相談が各機関に相次いでいます。

「孤立」が悶々と悩みを深めさせ、自分は価値のない存在だという考えにつながるのだといいます。
東京自殺防止センター 村明子さん
「学校で誰とも話していない状況がずっと続くのは、子どもにとってはとてもつらい体験です。その結果『自分なんていなくたっていいんだ』とどんどん思い詰めてしまいます」

“安心できない”家庭

では、家庭はどうか。

相談機関が切迫した危機を感じているのが虐待の悪化です。

厚生労働省の統計からは、ことし虐待が急増しているとまでは言えません。

ただ、相談機関からは「『親がテレワークでずっと家にいて、暴言を受ける』といった相談が増えている印象です」(子どもの人権110番)との声が聞かれます。

虐待を受けた子どもは、味方のいない家庭内で「孤立」を深め、生きている意味を見いだせなくなってしまうと言われています。

ライフリンクの清水康之代表は、現状を次のように指摘します。
清水代表
「コロナで生活苦になった親がそのストレスを子どもに対して向けているケースがあります。虐待は、何もなかった家で突然、起きているというより、元々その傾向があった家で、さらに悪化しています。子どもにとって逃げ場のない状況です」
ただ、コロナ禍では虐待が明確でない家庭でも子どもの「孤立」と「無価値感」が深刻になりかねない状況です。
「親が大変な時でも自分は学費を出してもらうだけで何もできない存在だ。自分なんていない方がいい」
親が抱える不安を子どもが敏感に感じ取り、自分を責める方向に行く場合があるのだといいます。
新行内さん
「子どもは、親が大変な状況だということにかなり影響されます。そういう中で、思い詰めたり、ストレスがかかったり。優しい子どもは親に迷惑をかけまいと抱え込んでしまう傾向もあります」

子どものSOSをキャッチしたら

ライフリンク 清水康之代表
「今の子どもには逃げ場がない状態です。学校にもなじめない。家でも落ち着かない。閉ざされた人間関係の中でしんどさを抱えている」
チャイルドライン 竹村浩代表理事
「さまざまな要因がボディーブローのように効いてきて、もうダメだと感じてしまう。コロナ禍で、そのボディーブローのパンチが増えたり、強度が強まったりしています」
子どもたちの危機にどう向き合えばいいのでしょうか。

何より大切なのは、子どもとの信頼関係を築くこと。

子どもたちが死にたいほどにつらい気持ちを話せるのは、自分を受け止めてくれると思った相手だけだからです。

もし、周囲にいる子どものSOSをキャッチした場合、専門家たちは、「TALKの原則」で接してほしいと話します。
「TALKの原則」

▼Tell:「心配だよ」=ことばに出して心配していることを伝える。

▼Ask:「どんな時に死にたいと思うの?」=「死にたい」気持ちについて率直に聞く。

▼Listen:「死にたいぐらいつらいんだね」=絶望的な気持ちを傾聴する。

▼Keep safe:「ひとりにしないよ」=安全を確保し、病院や地域の相談機関など、第3者に助けを求める。

たとえ善意からであっても「死ぬな」とか「そんなこと言うな」などと子どもの気持ちを否定するような言葉は厳禁です。

こちらから意見せずに気持ちを聞き、できるだけ早く、専門機関につないでください。

また、虐待が疑われる場合は、ためらわずに相談機関に通報してください。

厚生労働省は児童相談所につながる全国共通の専用ダイヤル「189(いちはやく)」を設けています。(24時間、年中無休)

“存在する価値” 感じるには

また、子どもたちに日ごろから、「自分は価値のある存在だ」と感じてもらうようにすることも大切です。

それが子ども自ら「助けて」の声を上げる力につながるからです。

具体的な方法を子どもの心のケアを行う、国立成育医療研究センターの田中恭子医師に聞きました。
まず、家庭内などで、子どもができる役割を一緒に考えること。
一方的に「これをやりなさい」と押しつけないことがポイントです。

そして、大人から見て子どもの行動が完璧でなかったとしても「ありがとう」「助かるよ」「よくやったね」などと感謝の気持ちを伝えることです。
こうした積み重ねが子どもの「自分も役に立っている」との感情を育てることにつながるといいます。

コロナ対策でも使えます。

例えば、家の中での手洗いや消毒のルールを一緒に考えて実行してもらうのもよさそうです。
竹村代表理事
「大人が、子どもたちも当事者なのだと認識し、押しつけではなく、子どもが主体となって考えることができる環境を作っていくことが大切です。元々、子どもには力がある。『受け入れてもらえた』と感じることができれば、自分で課題と向き合って、乗り越えていくことができます」

子どもも大人も1人で悩まないでほしい

今回、話を聞いた相談機関の人たちはみな、「信頼できる人や相談を受け付けている専門機関にまずは話をしてほしい」と呼びかけます。

それが第一歩だからと。

そして、解決策は必ずあるからと。

子ども向けの相談窓口です。
24時間子供SOSダイヤル(年中無休)
0120ー0-78310(なやみ言おう)

文部科学省が子どもの相談先の一覧をまとめたホームページ
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm(NHKのサイトを離れます)
悩む子ども本人はもちろん、子どもの近くにいる大人が相談する窓口もあります。
厚生労働省が設けているさまざまな相談機関を検索できるサイト
http://shienjoho.go.jp/(NHKのサイトを離れます)
電話やメール、SNSなど方法もたくさんあります。

どんな方法でもいいです。

まず、助けを求めてみてください。