オンラインで体育…大学は対面の授業増えるも模索 文科省調査

コロナ禍で大学の授業の在り方が課題となる中、後期も主にオンラインで授業を行うとしていた370校余りに文部科学省が調査したところ、半数が対面授業を5割以上に増やしていたことがわかりました。一方で、180校余りはオンライン授業が中心となっていて、感染が拡大する中で模索が続いています。

文部科学省は、9月時点で対面授業の実施は半分未満だとしていた大学、377校に対し、10月から今月にかけてその後の授業の状況を改めて調査しました。

このうち、およそ半数の190校は当初の計画を上回り、授業全体の半分以上を対面授業で実施していると回答しました。

残りの187校は、対面授業の割合が半分未満で
▽「3割対面」と回答した大学が122校
▽「ほぼオンライン」と回答した大学が64校
▽「全面的にオンライン」が1校となっています。

これらの大学に学生が納得しているか聞いたところ
▽「ほぼ全員が納得」が18校
▽「大多数が納得」が140校
▽「大多数納得とは言えない」が13校
▽「把握していない」が16校となりました。

文部科学省は、回答した377校の授業状況、それに学生への説明内容や理解を得る取り組みなどを公表していて、大学の記述からは学生の中でも「対面」と「遠隔」それに「併用」で希望が分かれている実情が伺え、大学生活に慣れない1年生に対面授業の希望が多いとして、優先的に実施する大学も見られました。

文部科学省は23日、大学に通知を出し、1年生や来年度の新入生への配慮を検討することや、感染対策を十分に講じ、対面が適したものは対面で行い遠隔の場合も学生の納得を得たうえで、学びの機会を確保するよう求めることにしています。

体育の授業もオンラインで…

ほとんど大学に通えていない1年生の中には、大学の授業を「対面」か「オンライン」か状況に合わせて選べるようにしてほしいと訴える学生もいます。

この春、都内の大学に入学し、北陸地方から上京して1人暮らしを始めた1年生の男子学生は、後期はキャンパスでの授業を期待していましたが、専攻する外国語の学科では「対面」を選択できず、いまもオンラインでの授業が続いています。
体育の授業もオンラインで、大学が作成した動画を見てバスケットボールのドリブルなどを学ぶ日々で「ボールもありませんし、マンションなので下の階に迷惑もかけられず、何もできません。体育の授業なのに身体を動かさずに単位として認定されることに疑問を感じています」と話しました。

人に会う機会も少ないといい「2週間ほど知人に会わない日が続くこともありました。いろんな人と出会い、さまざまな価値観に触れ、自分の視野を広げたいと思っていましたが、思い描いた学生生活とかけ離れています」と心情を語りました。

現在は、対面授業の再開を求める学生団体に参加し、国や自治体に要望を行ったりインターネット上で情報を発信したりしています。

11月に開かれたオンラインのミーティングではメンバーたちから、「感染拡大で、来年度もオンラインが中心だったらどうしよう」とか「オンライン授業が続き、大学をやめた友人がいるが、自分も進路を考え直したい」などと不安が相次ぎました。

男子学生は「対面授業を望む学生は大学に通えるようにしてほしいですし、感染が拡大しているので、オンライン授業を希望する学生は遠隔で受けられるよう、大学側は選択肢を作ってほしい」と話していました。

想定外の経済負担も

1年生の保護者の中には、住まない部屋への家賃の支払いや追加の経済的負担にやりきれなさを訴える人もいます。

息子が都内の大学に入学し、建築を学んでいるという、大阪府内の40代の母親は、この春、息子と上京して1人暮らし用の部屋を借りました。

しかし、緊急事態宣言が出されると大学はオンライン授業になり、息子は大阪の自宅から授業を受けるようになりました。

母親は、「息子は毎日自宅で忙しそうに慣れない建築の実習を徹夜でやっていました」と当時の様子を振り返りました。

一方で、東京で借りた部屋は、対面授業の再開に備えて毎月7万円の家賃を払い続けました。

後期に入ってようやく、対面が再開されると聞き息子は東京に引っ越しましたが、結局、半年間で4回だけでほぼすべてがオンライン授業のままでした。

通常ならば大学に保管されるはずの建築実習の資材が送られ続け、家賃が月に1万円高い広い部屋に引っ越しを余儀なくされ、入居費用が30万円余り追加でかかったと言います。

母親は「経済的な面で苦痛に感じることもあり、特に理系で実習など本来受けられるはずの授業が受けられておらず、高い授業料に見合っていないと思っています」と話していました。

そのうえで、東京で1人オンライン授業に疲弊する息子を思って涙ぐみながら「何より、経済的というよりも精神的にも苦痛です。息子には初めての1人暮らしをしながら友達を増やして世界を広げてほしいと思っていましたが、せっかくの大学1年生という時間をむだに終えてしまうのが残念でなりません」と話していました。

大学の模索続く

感染が再び拡大する中、大学では対面とオンラインの両方を活用した新たな学びの模索が続いています。

同志社大学は、マスクの着用の徹底や、教室で前後左右の間隔を1メートル以上空けるなど対策を講じたうえで、後期から対面授業の再開を進めていて今回の調査の対象にはなっていません。

それでも大人数の授業は、教室のやりくりが難しく感染も拡大していることからオンライン授業を増やしていて、当初は7割対面を目指していましたが、現在は1年生を中心におよそ半分の授業を対面で実施しているといいます。
多くの大学が抱える感染対策の難しさについて同志社大学の植木朝子学長は、「大学がいちばん恐れているのはクラスターの発生です。規模が大きく3密の回避が非常に困難で、教室間の移動やサークルなどの活動もある上、小中学校とは異なり大学が学生の行動を管理することはできないので、ためらう大学は多いと思います」と話していました。

一方で学生のサポートは必要だとして、「まだ大学生活に不慣れな1年生の授業はなるべくクラスの人数を分割して対面で行い、精神的なケアも紹介しています」と取り組みを語りました。

そのうえで「白熱した議論が求められる場合は対面を優先し基礎疾患などで大学に来られない学生にも合理的な配慮をしたうえで、学びを深められる方法を考えています。一方でオンライン授業で学習や教育の効果が上がるケースもあり、教員もみずからの授業を見直す機会につながっているので、全国の大学が新たな学びの形を模索しているところだと思う」と話し、コロナ禍では両方の活用が欠かせないと指摘していました。