初詣 あきらめないには

初詣 あきらめないには
「初詣は、どうしよう」

頭を悩ませている人、多いのではないでしょうか。家族の無病息災や間近に迫った受験の合格を祈願したい、でも気になるのは新型コロナウイルスの感染リスクです。
安心して参拝できる方法ってあるの?
「ライブ配信」から「投げ銭」まで、皆さんの願いを受け止めようとあの手、この手のユニークな取り組みが広がっています。(ネットワーク報道部記者 林田健太 田隈佑紀/徳島放送局記者 北城奏子/大阪放送局記者 清水大夢/北九州放送局ディレクター 中川治輝/編成センター 木村祥也)

もう“初詣”すませた?

年の瀬を迎えた今月、ネット上では早くも“初詣”をすませたという書き込みが相次いでいます。
「密を避けて初詣に行ってきました 混んでなくゆっくりお参りできてナイスでした」

「神様はいつお参りしても迎えてくれるから、フライング初詣おすすめです」

「時期をずらす、がオススメされているが、12月に詣でることを『幸先詣』というそうな」

「両親を連れて初詣は無理そうだから幸先詣に行ってきました 空いてるどころの騒ぎじゃない 神様にもお願い事をじっくりきいてもらえそう」
正月の混雑を避けて「幸先詣」として年内の参拝を呼びかけているところも多く、一足早いお願いを済ませた人もいるようです。

一方、例年のように初詣に行きたいけど、控えた方が良いのか、迷っているという書き込みも多く見られます。
「初詣行くか迷うけどどうしよう 年明けはいつもの寺で迎えたい」

「どうしても久しぶりに初詣に行きたい神社があり行く予定満々でしたが、悩む でも行きたい でも悩む コロナのバカーーーー」

“サイバー住職”のライブ配信

初詣がしたい、でも感染はしたくない。
そんな人たちはどうすればいいのか、そのヒントを探しに徳島県阿南市にある四国霊場22番札所、平等寺をたずねました。
ことし就任した谷口真梁住職(41)は、この春、お寺の様子を24時間、ライブ配信する取り組みを始めました。

実は、谷口住職は、学生時代にウェブブラウザの開発に携わったユニークな経験があります。

5台のカメラで、住職がお経を唱える「勤行」などを撮影・配信し、1日平均で延べ1万人ほどが視聴し、平均再生回数は3万回に上ります。

新型コロナウイルスの感染拡大で、参拝者の数が少ないときで例年のわずか2%ほどに落ち込む中、みずからの経験をいかしてリモートの活用に踏み切りました。
谷口住職
「このような先行きがあまり見えない状況になると、人は不安感が増すと思うんですけど、そんな時にちょっとでも心のよりどころになるような場所が提供できたらなと」

“リモートおみくじ”のプログラミングも

谷口住職は、初めての「リモート初詣」に向け、ライブ配信に加えて新たに工夫を凝らしています。

その1つが「リモートおみくじ」で、配信画面のコメント部分にローマ字で「omikuji」と入力すると、吉凶や運勢の説明が表示される仕組みになっています。

何と、これも住職みずからプログラミングを行ったということで、およそ30種類の結果が用意されています。
谷口住職
「なるべくリアルに参拝しているのと同じような、もしくは、それとはまた違う楽しみだとか便利さだとかがあるものにさせてもらおうと思っています。確かに状況はあまりよくはなくても、それでも何かいい面を見つけて、自分の人生というのをよりよいものに変えていってもらえたらなと思います」

ライブ配信にも一工夫

ライブ配信にもう一工夫加える取り組みもあります。

寺や神社の観光促進に取り組む民間団体は、大阪 高槻市の神峯山寺と奈良 平群町の朝護孫子寺の協力を得て、元日の祈とうの様子などを「オンライン初詣」として、ライブ配信します。

このとき、ライブ配信のコンテンツに対し、視聴者がオンラインで入金できる「投げ銭」のシステムを使って、さい銭を送ることができる仕組みを作りました。

直接、参拝することもできますが、オンラインでの投げ銭なら、感染も、後ろに並ぶ人も気にせず、心ゆくまでお願いできますよね。
神峯山寺 近藤孝道副住職
「直接、参拝にきてもらえればそれが一番ですが、オンラインであれば、高齢者や体の不自由な人など、参拝に来られない方たちにも喜んでもらえると思います。直接参拝であってもオンライン参拝であっても祈りの気持ちは変わらないと思います」

ゆっくり、ゆったり「ロング初詣」

リモートが使える便利な時代とはいえ、やっぱり参拝に訪れたい、そんな人たちのために、基本的な感染対策に加え、さまざまな工夫が行われています。

そのひとつが、初詣の期間の拡大です。
このうち、正月三が日には岡山県内で最も多いおよそ60万人が訪れる岡山市の「最上稲荷」が、ことし打ち出したのが「ロング初詣」です。
初詣の期間は、例年は元旦から1月15日としていましたが、ことしは12月14日から立春の2月3日までの52日間と、3倍あまりに大きく広げました。

キーワードは「ゆっくり、ゆったり」で、「お参り期間も人との距離も余裕のディスタンスでお参りください」と呼びかけています。

新しい初詣期間が始まって、最初の週末となった今月19日と20日には、参拝に訪れる人の姿が見られ、分散の効果が徐々にあらわれているということです。
最上稲荷 杉本泰潤執事長
「たとえ年内でも来年のことを思ってお祈りすれば稲荷さまに願いが届き、御利益に変わりはありません。ご自身のタイミングでご参拝ください」

巨大なさい銭スペース

混雑しやすい場所に注目して対策をほどこすところもあります。

このうち、毎年、正月三が日におよそ40万人が初詣に訪れる滋賀 多賀町にある「多賀大社」では、さい銭を投げ入れる場所に工夫をしました。

本殿前に設けたスペースを幅10メートル・奥行き7メートルほどとおよそ3倍の広さにして、さい銭を投げる人が一定の間隔をあけられるようにしています。
宮澤さん
「できる限り安心・安全に配慮して、さい銭箱を例年より広くもうけたり、待合室の抗菌や消毒を徹底したりして、参拝いただけるような作業や準備をすすめています」

「分散参拝」や離れた場所から「よう拝」の習慣も

コロナ禍で広がる新たな初詣の形について、民俗文化に詳しい専門家に歴史をふまえて話を聞きました。
新谷客員教授
「正月三が日に一斉に参拝するようになったのは、明治の後半以降の比較的新しい習慣です。かつては七草の1月7日や、小正月の1月15日までにお参りしていて、今でいう『分散参拝』でした。かつては元日は出歩かず、自宅にいたり地元の神社にこもったりして年神様を待つ習慣もありました。いわば宅配便と一緒で、出かけて留守にしていると運気をもらいそびれると考えられていたんです。こうした習慣は時代とともに変遷しています」
初詣の期間を長くとる分散参拝、それに自宅などで「神様を待つ」、今でいう「ステイホーム」のような習慣もあったんですね。

それでは、「リモート初詣」など、足を運ばなくても参拝できるという動きは、どのようにとらえているのでしょうか。
新谷客員教授
「日本には、遠く離れた場所から拝む『よう拝』や、他人に代わって参拝する『代参』など、多様な祈りの形があります。テクノロジーの進歩でますます多様性が広がっていくのもまた文化のダイナミズムだと思います」

コロナ禍で“リセット”願う気持ちも

初詣は、コロナ禍、そしてポストコロナの時代にどう変わり、何が残っていくのか、最後に聞きました。
國學院大学 新谷客員教授
「年が明ければ旧年の出来事がすべて“リセット”されるという考え方は古くからあります。誰もが新型コロナの感染収束を願う今こそ、正月に期待する気持ちが高まっているのではないでしょうか。祈りの形は多様で、これからも変化を繰り返すと思いますが、正月に清らかな気持ちで“再出発”したいという願いは、さまざまな正月行事とともにこれからも残り続けるでしょう」