変異した新型コロナウイルス イギリスで混乱広がる

変異した新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界各国がイギリスからの入国を停止する措置をとる中、イギリスとヨーロッパ大陸を結ぶ物流の大動脈であるドーバー海峡の周辺では輸送に混乱が生じる事態となっています。

イギリスでは感染力が強いとされる、変異した新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界各国がイギリスから旅客機の受け入れを停止するなどの措置をとっているほか、フランスは、物流の大動脈であるドーバー海峡を経由するトラックなどを含むイギリスからの入国を21日から停止しました。

これを受けて、ドーバー海峡のイギリス側では港の入り口に「フランス国境閉鎖」と案内が出され、周辺ではトラックなどが滞留していました。

ヨーロッパ大陸とを結ぶ輸送の混乱の影響で、イギリスでは生活必需品の供給が滞るのではないかという懸念が出ていて、スーパーマーケットの中には買い物客の長い行列ができたところもありました。

一方、21日、記者会見したジョンソン首相は、生活必需品などの供給に問題はないと強調したうえで、フランスのマクロン大統領と電話で会談し、事態の収拾をめざして協議したことを明らかにしました。

ジョンソン首相は、状況は早期に改善されるだろうと訴え、国民に冷静に行動するよう求めました。

世界40の国と地域でイギリスからの航空便受け入れ停止

イギリスで変異した新型コロナウイルスの感染拡大を受け、公共放送BBCは、ヨーロッパをはじめ、世界40の国と地域でイギリスからの航空便の受け入れを停止するなどの措置がとられていると伝えています。

このうち、ドイツやポーランド、それにスウェーデンなどは、イギリスからの航空便の受け入れを一時停止するほか、モロッコや香港などはイギリスへの渡航に制限を設けています。

こうした中、混乱は空港にも広がっていて、ロンドンからドイツ北部のハノーバーの空港に到着した乗客たちが20日、空港の待合ロビーで一夜を明かしました。

ロイター通信によりますと、空港内の様子を撮影した人の話として、乗客は到着後、2時間にわたって機内で待機させられた上、ウイルス検査で陰性が確認されないかぎり、入国は認められないとして結果が出るまで、一晩足止めされたと伝えています。

アメリカNY州知事「歴史を繰り返してはいけない」

イギリスで変異した新型コロナウイルスの感染拡大を受け、アメリカ東部ニューヨーク州のクオモ知事は、ツイッターに「変異した新型ウイルスによって歴史を繰り返してはいけない」と投稿しました。

そして、22日からイギリスのブリティッシュ・エアウェイズとアメリカのデルタ航空は、イギリスからニューヨークに向かう乗客を対象に、出発前のウイルス検査で陰性であることを示すよう求めることを明らかにしました。

フランス EU加盟各国が共通した対策や対応打ち出すよう求める

ドーバー海峡を挟んでイギリスとの大陸側の玄関口となっているフランスは、EU加盟各国が共通した対策や対応をすみやかに打ち出すことを求めています。

フランスは、物流の大動脈であるドーバー海峡を経由するトラックなどを含むイギリスからの入国を21日から停止していて、影響が出始めています。

このため、イギリスからの物流などを再開させるためには、EU加盟各国が共通した感染症対策や対応をすみやかに打ち出すことを求めていて、各国は21日、イギリスからEU域内への渡航や感染対策について協議しました。

この中で、共通の対応を取ることが重要だという認識では一致しましたが、結論は出ませんでした。

フランス政府は、22日も調整を続けることを明らかにしていて、入国する人にウイルス検査の実施を義務づけることなどの感染症対策を提案しています。