5か月連続で自殺した人は前年比増 学生や働く女性などで深刻に

先月自殺した人は5か月連続で去年より多くなり、学生などの若い世代や働く女性などで特に深刻になっていることが厚生労働省のまとめで分かりました。

厚生労働省は21日、医師やNPO、遺族団体などが参加する自殺対策の有識者会議を開きました。

会議で示されたまとめによりますと、先月自殺した人は全国で1835人と去年の同じ月より14%増え、7月以降5か月連続で前の年より多くなっています。

男女・年代別の増加を見ると、女性が20歳未満から60代までのすべての年代で20%以上多くなっているほか、男性は20代で34%多くなっています。

職業別では、学生・生徒で男女合わせて38%、企業に雇用される女性が36%多くなっています。

学生などの若い世代や働く女性などで特に深刻になっていることがうかがえます。

続いて、国から分析を依頼されている社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」が増加の背景について報告し、新型コロナウイルスによる雇用や人間関係など社会全体の不安を指摘したうえで、有名人の自殺の報道などが後押しした可能性があると指摘しました。

出席者からは若者が利用するSNSでの対策や自殺報道の在り方などについて意見が出されました。

厚生労働省は、会議での意見なども踏まえて今後の対策を進める方針ですが、先週決定した今年度の第3次補正予算案にはSNSや電話による自治体の相談体制の拡充に向けた補助などとして140億円を計上しています。

学生の苦境 専門家調査でも

学生の自殺が増加する背景をめぐっては、専門家による調査も行われています。

公共政策の専門家で自殺の問題に詳しい早稲田大学の上田路子准教授は、先月から早稲田大学の学生を対象にインターネットを通じたアンケート調査を行い今月14日までに1900人から回答を得ました。

それによりますと「過去半年間に失業やアルバイトの収入の大幅な減少など暮らし向きの大きな変化を経験した」と回答した学生は4割に上りました。

また、「2週間のうちの半分以上で、気分が落ち込む、憂うつになる、絶望的な気持ちになる」と答えた学生も2割いました。

上田准教授は、経済的な苦境に加え、友人と会って相談したり悩みを打ち明けたりする機会が少なくなっていることも背景にあると指摘しています。
上田准教授は「臨時休校やオンライン授業の影響が一定程度あると感じる。新型コロナの影響で人間関係やつながりが変わってしまい、誰にも相談できない学生がかなりいると思う。困った人がすぐに誰かに救いを求められる体制を社会全体で作ることが重要だ」と訴えています。