感染症担当の保健師 1.5倍に増員へ 財政支援拡充の方針 政府

新型コロナウイルスの感染拡大で各地の保健所の体制がひっ迫していることを受けて、政府は、感染症対策を専門で担当する保健師を現在の1.5倍に増やせるよう自治体への財政支援を拡充する方針を固めました。

総務省によりますと、各地の保健所に勤務する保健師およそ7200人のうち、感染症対策を専門で担当しているのは1800人ほどにとどまっているということです。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、保健所では、ほかの担当の保健師が兼務で対応に当たるなど、体制のひっ迫が深刻化しています。

これを受けて、政府は保健所の負担軽減に向けて、感染症対策を専門で担当する保健師を現在の1.5倍に当たる2700人に増やせるよう自治体への財政支援を拡充する方針を固めました。

政府は各自治体に対し、増員した保健師の体制を現在の感染が収束したあとも維持し、新たな感染症に備えて保健師に対する研修や訓練を充実させるよう求めることにしています。

増員は2022年度まで2年かけて進める方針で、政府は来年度予算案に必要な経費を計上することにしています。

「兼務」で加重負担

保健所で働く保健師は、感染症への対応のほか、健康診断や乳幼児の検診などの健康予防に関する業務、それに食中毒への対応など、さまざまな仕事を担っています。

東京 墨田区の保健所では、通常40人余りの保健師がそれぞれ担当を分けていて、本来、感染症対策の担当は3人ですが、現在は、ほとんどの保健師が新型コロナウイルスへの対応に当たっています。

通常の担当業務と兼務しなければならないことに加え、感染症対策には専門的な知識も必要なことから、保健師の負担は心身ともに重くなっているということです。

墨田区保健所の西塚至所長は、専門的な知識の習得には定期的な研修も必要なことから、持続可能な体制にするには保健師の定員を増やすことが不可欠だと指摘しています。

西塚所長は「感染症対策を経験する一方で、住民に身近なサービスのニーズもどんどん膨らんでいるので、マルチに対応できる保健師を増やしておくべきだ。感染症が収まったあとも、次の未知のウイルスに備えることも保健師の業務として理解して、人材や定数もしっかり確保する必要がある」と話しています。

保健師目指す学生は

政府の方針に、保健師を目指す人からは期待の声が出ています。

保健師は看護師の免許も必要な国家資格で、東京 新宿区の専門学校「首都医校」の保健師や看護師を目指す学科には、およそ20人の学生が在籍しています。

東京23区で働く保健師の採用を担当している「特別区人事委員会」によりますと、23区の近年の採用倍率は平均で2.3倍となっていて、専門学校では「資格を取得するのも難しいが、採用されるのも簡単ではない」としています。

高度看護保健学科1年の西村京将さん(25)は「母子保健」の仕事をしたいと保健師を目指していますが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、感染症対策の重要性も感じていると言います。

西村さんは、保健師の増員を目指す政府の方針について「ありがたい話だ。活躍できる人が広がることはすごくいいことで、自分の活躍の幅も広がるかもしれない」と話していました。

一方、来年度から都内の保健所で働くことが決まっている4年の南香帆さん(29)は「人員不足を解消するという点ではいいことだと思うが、実際に現場で対応できるようになるには専用の教育などが必要になるので、時間がかかるのではないか」と話していました。