東京 新型コロナ “家庭内感染”増加 今回は第2波の約2倍

東京都内では、家庭内で新型コロナウイルスに感染する人が増加していて、今回の感染拡大では第2波が来ていたことしの夏のおよそ2倍になっていることが都のまとめでわかりました。

都内で新型コロナウイルスの感染が確認され経路が家庭内だった人は、第2波が来ていた、ことし7月が583人、8月が1106人でした。

これに対し、再び感染が拡大した、11月は1797人、12月は17日までで1579人となっています。

▽11月から17日までの1か月半あまりの人数は、
▽7月と8月の2か月の
およそ2倍に増えています。

感染経路が判明した人のうち、経路が家庭内だった人の割合も上昇しています。

▼7月は19%、
▼8月は35.7%でしたが、
▼11月は42.6%、
▼12月は17日までで43%でした。

▼7月と8月をあわせると全体の27.4%だったのに対し、
▼11月から17日まででは42.8%と、
15ポイントあまり高くなっています。
再び感染が拡大している今回は、特に家庭内での感染が多いのが特徴で、11月から17日まででは、
▽家庭内が42.8%だったのに対して
▽施設内が16.8%、
▽職場内が15%、
▽会食が7%、
▽夜間営業する接待を伴う飲食店が2.3%でした。

家庭内感染 65歳以上の高齢者 3.4倍の増加

都内では、65歳以上の高齢者が家庭内で感染するケースも増えています。
感染経路が判明した65歳以上の高齢者のうち経路が家庭内だった人は、
▼7月は10人、
▼8月は157だったのに対し、
▼11月は293人、
▼12月は、17日までで272人でした。

▼11月から17日までの1か月半あまりでは565人で、
▼7月と8月をあわせた167人と比べると
3.4倍の増加となっています。

家庭内で感染した人のうち、65歳以上の高齢者の割合は、
▼7月と8月が9.9%だったのに対し、
▼11月から17日まででは16.7%で、
およそ7ポイント高くなりました。

一方、12月に死亡が発表された人のうち少なくとも6人は家庭内での感染で、いずれも65歳以上の高齢者でした。

都は、同居する家族に高齢者や基礎疾患がある人がいる場合には、特に感染防止対策を徹底するよう呼びかけています。

医師“家庭内感染者の入院増加 第3波の特徴”

医療機関では家庭内で感染した人の入院が増えていて、医師の1人は「第3波の大きな特徴だと感じる」と話しています。

埼玉県川越市にある「埼玉医科大学総合医療センター」では、主に中等症や重症の患者を受け入れていて、現在、50代から80代の12人が入院しています。

病院によりますと11月下旬ごろから毎日のように患者の受け入れ要請があり、入院患者が増加しています。

このうち半数以上は家庭内で感染した患者だということで、高齢者の割合が多く症状も重症度が高い患者が増えてきたといいます。

総合診療内科・感染症科の岡秀昭教授は「第3波になって感染の様式が大きく変わり家庭内感染が増えている。高齢者が発端で家族に広まるケースより例えば会食など社会に出ている現役世代の人たちから同居する高齢者にうつしてしまうといったケースが目立つ」と指摘しています。

さらに「家庭内感染の怖いところは、自分はかぜのように治ってもウイルスをうつした両親は重症化して命の危機にさらされるというケースもあること。家庭にウイルスを持ち込まないための対策を徹底してもらいたい」と話しています。

家庭内感染で亡くなった患者を担当した看護師は、「入院中はずっと本人に会えず最後は防護服を着ながら手を握ってお別れをした家族もいて心が痛んだ。自分が患者あるいは患者の家族だったらすごくつらかったと思う」と話していました。

また、井岡京子副総看護部長は「このままだともっとひどい状況になるのではないかと危機感を感じている。家庭内感染で亡くなった場合、家族は絶対に後悔するので、それを防ぐためにも感染に対する知識をもっと持ってほしい」と話していました。

自宅療養の感染者が急増

この家庭内感染をさらに広げかねない課題も出てきています。

自宅で療養する感染者が急増しているのです。

厚生労働省によりますと自宅で療養している人は12月9日の時点で全国で6429人にのぼり、およそ1か月前の11月4日の1096人と比べて6倍近くに増えています。

入院患者は9222人でその3分の2以上にのぼり、宿泊施設で療養する人4152人のおよそ1.5倍となっています。

自宅で療養する人が増えている理由について厚生労働省は、感染者自身、あるいはその家族が育児や介護が必要で、自宅に残らざるをえない人や、日本語が理解できない外国人の感染者が増えていること、さらには宿泊施設は確保されているものの看護師などのスタッフの確保が追いつかず、受け入れられないケースが起きていることなどが考えられるとしています。

自宅療養の女性“家庭内の感染対策に限界を感じた”

増え続ける自宅療養。実際に経験した人の中には家庭内で感染対策を徹底する限界を感じた人もいます。

都内に住む30代の女性は、第2波の7月に新型コロナウイルスに感染し、宿泊施設での療養を希望しましたが、当時は入れるところがなく、自宅での療養を余儀なくされました。

女性は60代の両親と同居していてウイルスをうつしてしまうかもしれないと常に不安だったといいます。

女性は食事やトイレ、それに入浴など必要最低限の行動以外はずっと自分の部屋にこもっていました。

リビングで食事を取る時は両親と時間をずらし、できるだけ早く食べてテーブルをアルコールで入念に消毒していたといいます。

また、毎日保健所に連絡する時に使う電話も自分の飛まつが飛んで感染リスクが高いと考え、使用する度にアルコールで消毒し、家の窓はすべて開けて換気に努めていました。

一方、療養が長期間に及ぶと、ドアノブなど自分が触ったところをすべて入念に消毒することや両親と全く接触せずに生活を続けることに限界も感じたといいます。

幸い両親には感染しませんでしたが、女性は「家族全員がマスクをし続けるのも大きな苦労がある。また職場などと違って家庭内はふだんリラックスして過ごす場所なので、どうしても気が緩んでしまうこともあった」と話しています。

女性の父親は「家の間取りなど条件が恵まれていたので家庭内でも別々の生活をすることはできたが、同じ部屋で一緒にいるとなれば感染のリスクは高かったと思う。家庭内ではどうしても3密を完全に防ぐことができず、家の構造によっても対策は変わってくるので、それぞれの条件にあった対策が知りたいと感じた」と話していました。

専門家“できる対策を長く続けて”

家庭内の感染をどう防いでいけばよいのか。

感染症対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「家族が共同生活する場所なので3密になりやすく、感染がうつるリスクが高い。今後、市中でウイルスが広がれば、家庭内感染がさらに増えていく可能性がある。まず第一は、家庭内にウイルスを持ち込まないことで、外での感染対策を強化してほしい」と呼びかけています。

一方、家庭内の対策については「家族との接触は避けられず限界もあるが、一時的でもマスクを着用したり、5分から10分程度窓をあけるなど、100%の感染対策ができなくても50%、あるいは30%の対策でも続けることで、感染のリスクを確実に下げることになる。できることを長く続けていくことが家族を感染から救うことになる」と話しています。

さらに、感染して自宅療養した場合は「家庭内では静かに食事をし、1時間に1回は換気を行い、長く会話する時はマスクをつけるなど家族が協力して感染対策を徹底していく必要がある」と指摘しています。