新型コロナ ふるさと納税通じ 医療機関など支援広がる

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「ふるさと納税」を通じてひっ迫する医療機関などを支援していこうという動きが広がっています。

ふるさと納税は、個人が自治体に寄付すると特産品などの返礼品が受け取れ、所得税と住民税の一部が控除される制度です。

この寄付金を新型コロナウイルスでひっ迫する医療現場や福祉施設などの支援に充てる自治体が相次いでいます。

ふるさと納税の国内最大級の仲介サイト「ふるさとチョイス」が扱う医療・福祉分野への支援は、先月2日の時点で67件に上り、去年より6倍に増えています。

このうち北海道では1億6000万円余りの寄付が集まり、医療用マスクを購入して病院に送っているほか、医療従事者に特産品を送ったり、感染者を搬送する車を新たに購入したりしています。

また、北九州市は7000万円余りの寄付が集まり、医療機関に送るフェイスシールドやマスクを購入する資金に充てています。

仲介サイトの運営会社によりますと、北海道や首都圏など、感染が拡大している自治体へ寄付が特に増えているということです。

「ふるさとチョイス」を担当する運営会社の伊田光さんは「医療などの現場がひっ迫する中で、何かできることはないかと考えている人が多く、寄付が集まっている。今後も、こうした寄付は増え続けると思う」と話していました。

ことしのふるさと納税の申し込みは今月31日まで受け付けています。

世田谷区には2700万円の寄付

東京 世田谷区では、ふるさと納税などを通じて寄付金を募り、医療機関の支援やPCR検査の拡充などにあてています。

区民から、病院で働く人のために自分たちでできることはないかという問い合わせが相次ぎ、ことし4月30日から開始しました。

17日までにふるさと納税の仲介サイトを通じておよそ900件の寄付が集まり総額は2700万円に上っています。

ふるさと納税は多くの場合、自治体から返礼品が届きますが、世田谷区では返礼品を希望しない寄付が多くを占めています。

寄付をした人からは「医療従事者の皆様、ありがとう」、「コロナへの対応、大変だと思いますが応援しています」など医療従事者への激励のメッセージも寄せられています。

区は集まった寄付金でマスクや防護服などの医療品を購入し医療機関に送ったほか、現在は、PCR検査を拡充するための費用に充てています。

区によりますと支援を受けた医療機関の1つは「医療資源が枯渇している中で、このような支援は大変助かります。皆様の気持ちを強く受け止め、大切に使用します」などと話しているということです。

ふるさと納税を担当する世田谷区財政担当部の寺西直樹副参事は「多額の寄付をいただき非常にありがたく感じている。寄付した人の思いに応えられるよう、現場の支援やコロナ対策に活用し、一丸となってコロナを乗り越えていきたい」と話していました。

専門家「社会課題 解決の動きが定着」

ふるさと納税に詳しい神戸大学大学院の保田隆明准教授は「ふるさと納税で社会課題を解決しようという動きが定着してきた」と話しています。

具体的には、「これまでも災害や首里城の火災など、社会課題について寄付をして支援をする動きはあったが、どれも遠くで起きている課題への支援だった。今回の新型コロナウイルスはすべての人にとって自分事として捉えられる課題で、より支援をしようという気持ちが高まったのではないか」と分析しています。

一方、課題としては「支援が集まり助かっている自治体がある一方で、特に都市部からは流出が増え苦しい状態になっている。都市部こそコロナ対策でより多くの支援が必要とも言える。バランスよく支援が行き渡ることが重要だ」と指摘しています。