アビガン 新型コロナ治療薬の審査は21日に決定も難航の見通し

新型コロナウイルスの治療薬として承認申請が行われている新型インフルエンザ治療薬の「アビガン」について、厚生労働省の審議会は今月21日に審査を行うことを決めました。関係者によりますと、現時点の治験のデータだけで有効性を評価するのは難しいという指摘も出ていて、審査は難航する見通しです。

「アビガン」は富士フイルム富山化学が開発した新型インフルエンザの治療薬で、ことし10月、新型コロナウイルスの治療薬として追加で承認の申請が行われました。

これを受けて、厚生労働省の審議会は今月21日に審査を行うことを決め、提出された治験のデータの検証を進めています。

製薬企業側は「治験の結果、PCR検査で陰性になるまでの期間を2.8日短縮する効果が確認された」と発表していますが、厚生労働省や審議会の関係者によりますと、協力した医師の先入観などが影響している可能性もあり、現時点のデータだけで有効性を評価するのは難しいという指摘が出ているということです。

一方、国内では研究の一環としてすでに新型コロナウイルスの治療に使われていることから、「承認して管理すべきだ」という意見もあり、審査は難航する見通しとなっています。

申請までの経緯

「アビガン」はもともとは新型インフルエンザの治療薬として開発された薬で、ウイルスの増殖を抑える仕組みが新型コロナウイルスに対しても効果があると期待されています。

ことし3月には中国政府が、臨床研究で新型コロナウイルスへの効果が認められたと発表していて、日本国内でも、新型コロナウイルスに対する有効性や安全性を調べるための臨床研究や治験が行われてきました。

このうち、藤田医科大学などグループはことし7月に、軽症や無症状の感染者88人を対象に実際に薬を投与した臨床研究の結果を発表し、ウイルスがなくなったり、熱が下がったりしやすい傾向は見られたものの、統計的に明確な有効性は確認できなかったとしました。

一方、薬を開発した会社は、患者156人を対象に治験を行い、ことし9月、薬を投与したグループは、投与しなかったグループと比べて症状が改善してPCR検査で陰性になるまでの期間が2.8日短縮されたとして、「一定の有効性が確認された」と発表しました。

この結果を受け、会社ではことし10月、新型コロナウイルスの治療薬として承認を得るため厚生労働省に申請を行っていました。