ことしの新規上場 13年ぶり高水準 コロナでも株価上昇で相次ぐ

ことし、国内の証券取引所に株式を新規上場する企業の数は、合わせて100社を超え13年ぶりの高い水準になる見通しです。新型コロナウイルスの影響でいったん新規上場を取りやめた企業も、その後の株価の上昇を受け相次いで上場しています。

東京証券取引所では、16日、新興企業向けの市場、「マザーズ」にフィットネスジムを全国展開する企業が新規上場し、記念のセレモニーが行われました。

この企業は当初、ことし3月に上場予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大で直前に取り下げていました。

「Fast Fitness Japan」の土屋敦之社長は、「無事に上場でき安心しました」と話していました。

東証によりますと、ことし国内の証券取引所に新規上場する企業は合わせて102社まで増えリーマンショック前の2007年以来、13年ぶりの高い水準となる見通しです。

新型コロナウイルスの感染拡大で、株価が急落した春先にいったん新規上場を中止した18社のうち10社が年内に上場するということです。

背景には、各国政府の財政出動や中央銀行による大規模な金融緩和に加え、新型コロナウイルスのワクチンが順調に普及するという期待などから、世界的に株価が上昇していることがあります。

企業の新規上場は、経済が活発かどうかを推し量る指標の1つとも言われますが、市場関係者からは株価と実体経済とのかい離を指摘する声もあり、企業にとっては市場の期待に応えて利益を出していけるかが問われることになります。

日証協会長 新規上場の増加に期待

国内の証券取引所に株式を新規上場する企業の数が増えていることについて、日本証券業協会の鈴木茂晴会長は記者会見で、「IT関係、DX=デジタル・トランスフォーメーションに絡む銘柄に投資が集中している。新規上場数が100社前後というのは、数字としてはいちばんよい状態だと思っている」と述べました。

そのうえで「日本の場合は、ひとつひとつの企業の規模が小さいが、新規上場が増えることで時価総額が1000億円を超えるような企業も生まれてくる」と指摘し、株式の新規上場を目指す企業が増えることに期待を示しました。

新規上場数の推移

国内では、東京証券取引所に資料が残る1999年以降、新規上場の企業数は毎年100社を超えていました。

2007年には合わせて121社が新規上場を果たしています。

しかし、2008年のリーマンショックで状況が一変し、この年の新規上場は49社にとどまりました。

翌2009年はさらに落ち込み、合わせて19社でした。

その後、日銀の大規模な金融緩和策の効果もあって株価が回復したことで、新規上場の数も増えていきましたが、直近のピークはおととしの98社で、100社には届いていませんでした。

ことしは新型コロナウイルスの影響で、春先、市場関係者からは「新規上場の数は確実に去年を大きく下回る」という声が聞かれていましたが、結果的には100社を超え13年ぶりの高い水準になる見通しです。

専門家 一定評価も注意必要

専門家は、新規上場が増えていること自体は評価しつつも、いまは“カネ余り”の状況だとして、株価が企業の実力以上に高くなっていないか、注意する必要があると指摘しています。

第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは、「新規上場の増加は産業の新陳代謝を促すという面でプラスの効果があり、その結果として日本経済の活性化も期待される」と述べました。

その一方で、「いまは政府の景気対策と日銀の大規模な金融緩和で、株式市場にかなりの資金が流入している。株価が割高な水準まで上昇し、過大評価されているという指摘があるのは事実で、今後は、市場の期待に企業が応えて利益を出していけるのかどうかが課題になってくる」と指摘しています。