地銀再編 SBIとりそなの戦略は

地銀再編 SBIとりそなの戦略は
「地銀の数が多すぎる」という菅総理大臣の発言をきっかけに、注目が集まっている地方銀行の再編。その地方銀行との関係強化に動いているのが、ネット金融大手の「SBIホールディングス」と、金融大手の「りそなホールディングス」だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、「地方経済を支える」という役割の重要性が改めて問われている地銀との関係強化を進めるねらいは何か。それぞれのトップに聞いた。
(経済部記者 白石明大 藤本浩輝)

“第4のメガバンク構想”のねらい

「第4のメガバンク構想」を掲げて地方銀行との資本業務提携を拡大する「SBIホールディングス」。

先月、山形県のきらやか銀行と宮城県の仙台銀行を傘下に持つ「じもとホールディングス」との資本業務提携を発表し、この構想に加わった地銀は7行になった。
そのSBIを率いる北尾吉孝社長は、菅総理大臣とは、就任後まもない時期に会食する間柄だ。
地銀と相次いで提携するねらいについて、北尾社長は次のように語った。
北尾社長
「地銀を取り巻く経営環境は非常にしんどい。短期的にも低金利だし、中期的にもフィンテック技術がどんどん進化するのに、地銀はそれを取り込めない。長期的には地方経済全体が縮小していき、環境は決して良くなる見通しがない。そうすると、どういうふうに地銀を変えていくのかということをいろいろな知恵を絞って、今はそのお手伝いをしている。例えば高度な資産運用のお手伝いやシステムの強化など、われわれが強みを持つ専門家を派遣して支援してきた」

資本業務提携の効果は

ねらいは地銀のサポートだという北尾社長。では、提携した地銀の収益は改善したのだろうか。

成果をあげているケースとしてSBIがアピールしているのが、島根銀行との提携だ。
島根銀行は2017年の中間決算以来、銀行の本業でのもうけを示す「コア業務純益」の赤字が続いていた。

しかし2019年にSBIと提携後は、銀行側が店舗の統廃合や事業の選択と集中によるコスト削減を進める一方、SBIは有価証券の運用を担い、金融商品の提案力を強化したことで、収益性の改善につながった。

その結果、来年3月期の決算では、コア業務純益が4期ぶりに黒字化すると予想している。
北尾社長
「(有価証券などの)資産運用の能力が劣っている部分が非常に強かった。もう1つはシステムコストが毎年かかってくる。たとえばセキュリティーも相当高度にしないと、ハッカーが簡単に破っていく時代に入ってきていますから。システム面での経費というのは、うなぎ登りに増えてくる。こういう状況でこれを共通化して、みんなで同じシステムを使えばいいじゃないですか」

“地銀再編”には距離?

ただ、北尾社長は、SBIが主導して地銀の再編に動くことはないとしたうえで、再編ありきの議論には、次のように疑問を示している。
北尾社長
「銀行みずからが変わるということを意識しないと、経営の質的改善を行うのは難しい。銀行と銀行がただ合併したとしても、生産性は絶対にあがらないし、効果が果たしてあるのかは疑問だ。それぞれの銀行が長い間、同じ地域で敵対して競争してきた歴史もあるわけで、その銀行どうしがある日突然、合併したとしても、本当の意味での統合はそう簡単にはできないだろう」
北尾社長は、資本業務提携した銀行と共同でファンドを設立するなどして、今後、新型コロナウイルスの影響が出ている地元企業への経営支援も強化したいとしている。

ゆるやかな連携目指す「りそな」

一方、ことし11月、大阪市に本社を置く傘下の地方銀行グループの「関西みらいフィナンシャルグループ」を完全子会社にすると決めた「りそなホールディングス」。

今回の決定のねらいについて、南昌宏社長は次のように語る。
南社長
「いちばんのねらいは、やはり意思決定のスピードを上げること。今まで遅かったということではなくて、世の中の変化とか世の中の不透明性が一段上がったということなので、われわれ自身も変化へのスピード、対応力をさらに上げたい。結果として、グループ全体の成長スピードを引き上げたい」

プラットフォームの中核に

「りそな」は今後、ほかの地銀との関係強化に動くのか。

南社長は、地域金融機関への出資やシステム統合の可能性は排除しないものの、自社の商品や金融サービスを提供することを通じた連携強化を優先させる姿勢を強調する。
南社長
「地域金融機関の競争力の向上とか、困っていることへの補完という文脈の中で、比較的安易に、簡易につながっていける分野は、時代の変化とともに相当出てきているので、“共創型のプラットフォーム”の中核として、これからもウィンウィンの形で、地域金融機関のみなさま方としっかりと連携をしていきたいと思っている。幅広く日本全国の金融機関としっかりと連携していきたい」
共通のプラットフォーム作りが進んでいるのが、茨城県と栃木県をそれぞれ地盤とする「常陽銀行」と「足利銀行」を傘下に置く「めぶきフィナンシャルグループ」との連携だ。
「りそな」と「めぶき」はことし6月、デジタル分野での戦略的業務提携を締結。
来年春には、「りそな」などが開発した銀行取引が行えるアプリを「常陽銀行」と「足利銀行」も導入する予定だ。

さらに、アプリと同様の機能を持った端末を店舗にも置くことで利便性向上もねらっている。

根っこは地域金融機関

「第4のメガバンク構想」を掲げて地銀との資本業務提携を拡大している「SBI」と、何かと比較される「りそな」。

南社長にSBIとの違いをどのように打ち出すのか問うと、次のような答えが返ってきた。
南社長
「少し違うことがあるとすれば、われわれはもともと100年にわたってリテール(個人・中小企業向け)の世界で生きてきた銀行だ。根っこはわれわれも基本的には地域金融機関なので、お客様への思いはDNAとして同じところはあるのではないかと思っている。地域金融機関と、その先にいるお客様にどういう価値を届けるのかという観点で、しっかり競争力を強化して準備をしていくことが大事かなと思う」
超低金利の環境が続く中、「りそな」は地域金融機関とのゆるやかな連携を進め、国内市場のさらなる深掘りを目指したい考えだ。

コロナ禍で問われる地銀の役割

新型コロナウイルスの感染が再拡大し、Go Toキャンペーン事業の見直しや一部地域での飲食店への営業時間短縮要請などもあって、経済が正常化するには時間がかかる見通しだ。
そうした中にあって、地銀に求められているのは、まずは地域の企業の資金繰りを支え、業態転換など次の成長につながる取り組みをサポートすることだ。

大手金融機関との提携も、最終的な目的は地域の経済を支えるための経営基盤を強化することであるはずで、決して提携した大手金融機関の商品やサービスをただ売るだけの連携であってはならない。

銀行法の第一条には、銀行の目的を次のように規定している。
銀行法第一条
「この法律は、銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする」
ここで書かれている「国民」とは、地銀にとっては地域で暮らす人たちであるはずだ。

地銀の使命とはまさに、地域経済の健全な発展に資するということであり、その使命を果たすための再編であり提携なのかどうかが問われている。
経済部記者
白石 明大
平成27年入局
松江局、鉄鋼や化学業界担当を経て、ことし9月から金融庁や地方銀行を取材
経済部記者
藤本 浩輝
平成17年入局
山口局、大阪局など経て、現在は金融業界を担当