大学入学共通テストまで1か月 感染対策や受験の際の注意点は?

来月初めて実施され、53万人余りが受験する予定の「大学入学共通テスト」まで、16日であと1か月となりました。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、大学入試センターでは、会場の感染対策や受験する際の注意点を呼びかけています。

「大学入学共通テスト」は、感染拡大の影響を考慮して1月16日・17日の2日間と1月30日・31日の2日間の2回の日程で行われる予定です。

志願者数は合わせて53万5245人で、最後のセンター試験と比べて2万2400人余り減っている一方、共通テストの結果を個別の入試に利用する大学などは、866校と過去最多となっています。

感染が拡大する中、共通テストを実施する大学入試センターでは、会場となる大学などに対し、受験生の席は1メートルほど間隔を空け、1科目終了ごとに換気を徹底すること、急な体調不良に対応する医師や看護師の配置や、無症状の濃厚接触者のための別室の確保といった、感染対策を求めています。

また、受験生に対しても、試験の7日ほど前から体温を測定し、体調が万全でない時は無理をせず追試験の申請をすること、会場内では常にマスクを正しく着用し、換気の際に寒くないよう上着を持ってくることなどを呼びかけています。

大学入学共通テストは、思考力や判断力などをより重視した入試への改革が必要だとして、およそ30年続いた大学入試センター試験に代わって導入されるもので、受験生は、新しい試験とコロナ禍の両方への対策を迫られています。

受験生からは不安の声が…

大学入学共通テストまで残り1か月となる中、都内の学習塾に通う受験生からは再び感染が拡大する中、入試に影響が出ないか不安の声が聞かれました。

東京 新宿区の学習塾では、講師はマスクとフェイスシールドを着用し、オンラインの受講を希望する生徒のため、カメラの付いたタブレットを教室の中央に設置して、同時配信できるよう対応しています。

受験生はマスクを着用し、間隔を空けて座りながら、数学の問題を解いていました。

1か月後に迫る共通テストについて、いつも消毒液を持ち歩いているという高校3年の男子生徒は、感染拡大の影響で人数が制限された模擬試験の結果を、どこまで参考にできるのか悩ましいと言います。

そのうえで「もう1度、緊急事態宣言が出されて学校や塾が閉ざされてしまうのが、今後のいちばんの不安材料です。これまでにも英語の民間試験の導入が見送られるなど、今まで練っていたプランを1から作り直さなければいけませんでした。感染が広がることでこれ以上、変更があったら対応が難しいです」と話しました。

また、別の男子生徒は試験会場での感染対策について「周囲で新型コロナウイルスに感染した人が出たとしても、追試の機会が設けられるのはありがたいが、志望している大学が地方なので今後、移動制限などで行けなくなったらどうしよう、という不安はあります。コロナがあってもなくても、受験生であることに変わりはないので、勉強だけではなく健康面でも気を緩めずに頑張りたい」と話していました。

「大学受験ナビオ」の理系教務責任者の安田和史さんは「センター試験から変わって初めての共通テストで、今までより文章量が増えるなど、より思考力を問われることが想定され、例年通りの過去問の対策だけで対応ができない点に、不安を抱えている生徒は多いと感じています、万全な対策を行っているので、長い試験期間に体調を崩すことがないよう、気をつけて試験に臨んでもらいたい」と話しています。

試験会場では

試験会場となる大学などでは、通常の準備に加えて新型コロナウイルスの感染防止というかつてない対応に追われています。

このうち、東京 小金井市の東京学芸大学ではおよそ2500人の受験生を受け入れる予定です。

入試課では、大学の倉庫に大量のアルコール消毒やマスク、フェイスシールドなどをすでに備えていて、手に入りづらい物品もある中、当日に向けて確保を急いでいます。

当日は、ほぼすべての教室を使用しないと受験生全員を受け入れられないため、机やいすが固定されている大教室では、前後の距離を十分取ることが難しい場合もありますが、隣どうしの間隔は1メートル確保するようにしています。

特に対策の徹底が求められるのが無症状の濃厚接触者の受験生への対応です。

ほかの受験生と動線が重ならないよう原則、車での来校を依頼し、試験会場も一般の受験生とは遠く離れた、正門のそばの建物1棟に限定します。

この建物の部屋では、試験監督の席の前方にアクリル板を設置し、受験生の席の間隔も2メートルほどあけ、目の前には飛沫を防ぐ大きなシートも設置するということです。

このほか、試験中に体調を崩した時に備え、大学内の救護室に医師や看護師が待機するほか、濃厚接触者のための建物にも常駐させるため、別途、派遣の看護師を確保することにしています。

いずれの会場でも試験監督は、マスクの上にフェイスシールドを装着し、手袋もはめて対応しますが、大学入試センターの方針で動揺を与えないよう受験生の検温は実施しないため、試験監督を務める教職員の一部からは不安の声もあるということで、入試課では濃厚接触者の試験監督は、なるべく基礎疾患のない若い教職員に担ってもらうことも検討しています。

東京学芸大学・入試課の田中修課長は「例年はインフルエンザを見越して準備してきたが、今回は新たに新型コロナウイルスも加わる異例の準備となり、現場としては苦労しているが、受験生にとっては一生に1度の大事な日なので、感染対策など万全を期して当日を迎えたい」と話していました。