「大阪コロナ重症センター」患者の受け入れ 段階的に始まる

重症患者の受け皿として大阪府が新たに整備した「大阪コロナ重症センター」で、15日から患者の受け入れが段階的に始まりました。
課題となっていた看護師の確保は、各地の自治体などから派遣を受けて解消する見込みで、医療のひっ迫度合いがどこまで改善するのか注目されます。

運用が始まったのは大阪府が大阪 住吉区に整備した「大阪コロナ重症センター」で、重症患者の受け入れ態勢を強化するためことし8月から整備を進めていました。

15日は、府の要請を受けて派遣された自衛隊の看護師など3人が到着しセンターに入りました。

府によりますと施設にある30床をすべて運用するには130人の看護師が必要で、今月初めの時点では50人しか確保できておらず、課題となっていましたが、全国知事会や自衛隊などからの派遣を受けて必要な人員の確保に見通しがたったということです。

センターでは集まった看護師などの研修を進めていて、運用は当面、30床のうち5床程度にとどめ、15日は3人を受け入れたということです。

今後、スタッフの習熟度などに応じて受け入れを拡大することにしています。

吉村知事「感染者減らすことが重要」

「大阪コロナ重症センター」で、15日から患者の受け入れが始まったことについて、大阪府の吉村知事は記者団に対し「重症病床のひっ迫率が高いなかで、多くの方の支援もあって、センターを動かせることができ感謝している。ただ、医療資源にはかぎりがあるので、全体の感染者を減らすことが最も重要だ。府民には感染防止への協力をお願いしたい」と述べました。

そのうえで吉村知事は「センターは、当初は5床からのスタートと報告を受けている。立ち上げが非常に重要なので、うまく運用して30床の稼働ができるようにしていきたい」と述べました。

重症センターで働く看護師の思い

重症患者の受け皿として大阪府が新たに整備した「大阪コロナ重症センター」の運用を始めるのにあたり、課題となってきたのは、看護師の確保でした。

看護師の確保を府から委託されている大阪府看護協会は、府内の医療機関に協力を依頼したりホームページに求人を掲載したりして、離職や休職をしている看護師などに声をかけ、潜在的な人材の掘り起こしに力を入れてきました。

こうした呼びかけに応じた看護師の山崎美由起さんは、これまで看護師として20年余り働き、ICU=集中治療室での勤務経験もおよそ14年にのぼります。

9月からは、軽症者が療養するホテルで感染者の体調管理にあたっていましたが、少しでも自分の経験をいかせればという思いで、重症センターの募集に手を挙げたといいます。

山崎さんは「コロナ患者を受け入れている病院のスタッフの過酷さや疲弊感を報道などで見ていて、何もできない歯がゆさを感じていました。私で力になれるのであればと思い、応募しました」と動機を話していました。

経験が豊富な山崎さんでも、防護服を着ての業務には慣れていないということで「これまで新型コロナの患者をみたことがなく、感染防御を徹底しないといけないので、やはり、いつもと動きが違う面があります」と戸惑いを見せていました。

また、センター内の病床数が過去に勤務したことがあるICUと比べ、大幅に多い点に触れ、「センターには詰め所がありますが、そこからいちばん端のベッドは全く見えず、そういう死角がある怖さは少しあります。また、医療スタッフも病床数にあわせてばく大な人数がいるので、コミュニケーションを取り合うことも、なかなか大変になると思います」と不安に感じている点を指摘しました。

しかし、今月1日から一緒に働く看護師たちと一緒に研修を積み重ねてきたことで、チームワークも高まってきたということです。

山崎さんは「いろいろな経験やスキルを持った人たちが集まっているし、全員、志も高くて柔軟性もあります。意見を交換しながらチームを作り上げていくことが大事で、チーム一丸となっていい医療が提供できるようにしていきたい」と意気込みを語りました。

そのうえで「このセンターが稼働することで、ほかの病院のスタッフの負担が少しでも軽減できたらうれしいです」と話していました。