年末年始どう過ごす? カギはステイ・ウィズ・コミュニティー

1日の新たな感染者数が12月12日には初めて全国で3000人を超えるなど、新型コロナの“第3波”に直面する中、まもなく「年末年始」を迎えます。例年なら、ふだんは会わない人たちと接する機会が増える「年末年始」。ことし、私たち一人ひとりは、どのように過ごせばよいのでしょうか? 専門家は、「ステイ・ホーム」ではなく、「ステイ・ウィズ・コミュニティー」という考え方が大切だと指摘しています。
(NHKスペシャル「新型コロナ“第3波” 危機は乗り切れるのか」取材班)

「コミュニティー」大切にしながら外との接触避ける

「ステイ・ウィズ・コミュニティー」という考え方が大切だと指摘しているのは、東京大学大学院の大澤幸生教授です。

「ステイ・ウィズ・コミュニティー」とは、家族や親友、恋人、職場の同僚など、一人ひとりにとっての最も基本的な「コミュニティー」を大切にしながら、その「コミュニティー」の外にいる人との接触はできるだけ避けるという考え方です。
東京大学大学院 大澤幸生教授
「何でもかんでも『自粛』と言われても、『自粛』なので、やっていいのかどうか分からない。何を『自粛』すればいいのか、非常に意思決定が難しい。何でもかんでも、ではなく、きちんと人と人との『つながりの構造』を科学的に分析して、感染拡大のリスクをどうすれば抑えられるかを考えることが重要になっている」
大澤さんは次のような分析を行いました。

ふだんの「コミュニティー」とは

まず、家族や、学校の親友、さらに、職場の同僚の中でも毎日会う人などを、1つの「コミュニティー」としました。

「コミュニティー」以外の人と接触ない場合

仮に、ある「コミュニティー」の中で感染者が出たとしても、その「コミュニティー」以外の人との接触がなければ、感染は外には広がりません。

「コミュニティー」以外の人と会食などした場合

一方、「コミュニティー」の外の人にいる、たまにしか会わない人たちと、会食など、感染リスクを伴う接触をした場合、感染は社会全体に広がっていきます。
では、「コミュニティー」の外にいる人たちとの接触は、どのくらいまでに抑えるのがよいのか。

大澤さんが、最新の理論を用いてシミュレーションしたところ、ふだんは会わない、「コミュニティー」の外の人にいる人と「何人会うか」が、感染爆発を防ぐ重要なカギを握っていることが分かってきました。

コミュニティー8人の場合、外の人が7人までだと

グラフの横軸は、1人あたりが1週間にコミュニティーの外で会う人数です。外で会う人数が増えるほど、感染拡大のリスクはあがっていきます。

コミュニティー8人の場合、外の人が8人以上になると

さらに、「ある人数」以上になると、突然、感染拡大のリスクが、大幅に上昇することが分かりました。

その「ある人数」とは、ふだんの自分自身の「コミュニティー」の人数と、同じ人数でした。

つまり、家族や親友など、ふだん自分自身が接している「コミュニティー」の人数を超えて、「コミュニティー」の外の人たちと接するようになると、社会全体で感染の拡大が急速に進むおそれがある。

「コミュニティー内」>「コミュニティー外」

逆に言えば、ふだん自分自身が接している「コミュニティー」の人数を超えて、「コミュニティー」の外の人に会うことがないように心がければ、社会全体として、感染の急拡大を抑えられる可能性があることが分かったといいます。
東京大学大学院 大澤幸生教授
「恋人、親友、家族などは、『コミュニティー』のかなり基本的な単位なので、それはもう本当に大事にしていただいた上で、それ以外の人とのコミュニケーションをできるだけ避けてもらうということが重要です。ただ単に行動を抑制したり、誰とも会わないようにしたりする『ステイ・ホーム』ではなくて、自分自身のふだんの『コミュニティー』を大切にする『ステイ・ウィズ・コミュニティー』という考え方がいいと思います」
「第3波」の感染拡大が続く中、年末年始に医療現場をひっ迫させないためには、社会全体での取り組みと、私たち一人ひとりの取り組みが、これまで以上に重要になっています。