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Go Toトラベル一時停止 決定から一夜明け各地に影響広がる

「Go Toトラベル」について、政府は14日夜、今月28日から来年1月11日まで全国一斉に一時停止することを決めました。決定から一夜明けた15日、各地の観光地では、理解を示す声がある一方、宿泊施設の予約キャンセルが相次ぐなど、影響が広がっています。

宿泊施設では予約キャンセル相次ぐ

このうち、高松市の温泉旅館「花樹海」では「Go Toトラベル」が全国一斉に一時停止となる今月28日から来月11日までの期間中、すべての部屋が予約で埋まっていましたが、14日夜から15日朝にかけて予約をキャンセルする連絡が80件以上寄せられたということです。
損失はこのキャンセル分だけで700万円以上に上り、今後、さらにキャンセルが増えた場合、損失は数千万円に上るおそれもあるということです。

この旅館では、ことし3月から5月まで去年の同じ月と比べて9割以上、宿泊客が減っていましたが、香川県が独自に宿泊費の補助事業を始めた6月以降は回復基調にあり、先月は宴会の利用などを含めた売り上げが去年の同じ月を上回っていたということです。

県内の宿泊施設でつくる組合の理事長を務める花樹海の三矢昌洋会長は「GoToの支援でこれから宿泊者が増えるはずだったのに、それがなくなると思うとぞっとする。やるせない気持ちです」と話していました。

「突然の発表 社内は騒然」というホテルも

首都圏からの観光客が多い、静岡県三島市にある「富士山三島東急ホテル」では、今月28日から来月3日まで宿泊予約はほぼ満室でしたが、政府の発表を受け、15日午前11時までに予約キャンセルは少なくとも120件に上っているということです。

「富士山三島東急ホテル」の竹内太一郎客室支配人は「突然の発表で社内は騒然としていますが、感染を広げないためにはしかたありません。お客様には感染症が落ち着いたときに改めてお越しいただきたいです」と話していました。

旅行会社 予約客への対応に追われる

東京 杉並区の旅行会社「飛鳥旅行」では15日から、「Go Toトラベル」が一時停止となる期間に旅行を予約している客に電話する対応を行っています。

東京都旅行業協会の会長で「飛鳥旅行」の村山吉三郎社長は「これまで感染者数が増えても国は『Go Toトラベル』は続けるという立場を示していたので、全国一斉に一時停止と聞いてまさかと思いました。キャンセルも出ると思うので売り上げも下がって大きな痛手です」と話していました。

また、年末年始は旅行客が増えるため「もっと早く判断して感染者数を抑えたうえで、年末年始は『Go Toトラベル』が利用できるようにしてほしかったです」と述べました。

そのうえで「感染者が減れば旅行を勧めやすくなるので、まずは感染者の数を抑えることが大切だと思います。春に向けての旅行が勧められるように願っています」と話していました。

飲食店も売り上げ落ち込みを懸念

神奈川県の観光地、箱根町の飲食店などからは、しかたないとする一方で、回復しかけていた売り上げが再び落ち込むことを懸念する声が聞かれました。

箱根湯本駅前の商店街にある和食の飲食店「喜之助」では、この数か月間、地域共通クーポンでの売り上げが3分の1ほどを占めていたということで、キャンペーンの一時停止の影響を大きく受けるのではないかと懸念しています。

オーナーの菊川鉄也さんは「また寂しい箱根になると思うと今後が不安です。お客様に対しておもてなしをしてよいのか、悪いのかがわからないのがいちばんの悩みどころです」と話していました。

「後手後手の対応 理解できない」との声も

宇都宮市名物のギョーザを食べ比べできる施設の関係者からは、政府の急な方針転換に「後手後手の対応で理解できない」といった声が上がっています。

宇都宮市のご当地グルメのギョーザの食べ比べができる人気の施設、「来らっせ本店」は、市内のギョーザ店で作る「宇都宮餃子会」が運営していて休日などには大勢の観光客などが訪れます。

年末年始は無休で営業を続ける予定で、すでに必要な食材を仕入れするための発注を行っていましたが、「Go Toトラベル」の一時停止を受け、営業自粛を含め対応を再検討しなければならなくなったということです。

宇都宮餃子会の鈴木章弘事務局長は「感染拡大を止めるにはしかたないが、人の手配、食材の手配含め事業者はすでに動いているので、今になって止めるという後手後手の対応は理解できない。来年に向け不安が募るばかりです」と憤った様子で話していました。

失われる消費 900億円近くに上るとする試算も

Go Toトラベルが全国一斉に一時停止されることで、失われる消費の押し上げ効果は900億円近くに上るとする試算もあります。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストがこれまでのGo Toトラベルの利用実績をもとに試算したところ、年末年始の15日間に全国一斉に停止されることで失われる消費の押し上げ効果は893億円に上るとしています。

これは年率に換算すると、GDPの0.39%に相当し、「経済への打撃がある程度生じることは覚悟する必要がある」としています。

一方で、木内氏は、緊急事態宣言が出されたことし4月と5月は、個人消費がそれぞれ10兆円以上押し下げられたと推計していて、「Go Toトラベルを継続して、感染者がさらに増え、緊急事態宣言が再び出されるような事態と比べれば、経済的な損失はかなり小さい」とも指摘しています。

専門家「もう一段強い対策必要も」

観光需要を喚起するための「Go Toトラベル」が全国一斉に一時停止することが決まったことについて、公衆衛生学が専門で国際医療福祉大学の和田耕治教授は、「県を越える人の動きを抑えることで、感染拡大の中心となっている都市部から、地方に感染を広げないという意味で、一定の効果が期待できると思う」と話しました。

一方で、すでに地域の中で感染が拡大している場合は「Go Toトラベル」を一時停止しても大きな効果は期待できないとして「そういった地域では家族以外との会食は極力控えるなど、接触の機会を減らすためのもう一段、強い対策を行う必要があると考えている。都道府県などが地域の状況に応じて、例えば東京では新たな感染者の発生数を1日当たり100人にまで減らすなど、具体的な数値目標を設定すれば、市民に分かりやすく訴えていくことができるのではないか」と話していました。

そのうえで、和田教授は「例年、冬場は、心臓の病気などでただでさえ患者が増えて病床が9割ほど埋まる時期だ。これに新型コロナが重なり、医療従事者の負担感や疲労は極限に達しようとしている。これから1月から2月にかけては気温が低く感染症のリスクが高い時期が続くのでなんとか今の時期に政府の分科会が示した4つのステージのうちの感染が急増している段階ではないとされる『ステージ2』相当まで感染を押さえ込むことが必要だ」と話していました。

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