空手 全日本選手権 男子「形」 喜友名が史上初の9連覇

東京オリンピックの新競技、空手の日本一を決める全日本選手権が行われ男子の「形」では、オリンピックの代表内定を確実にしている喜友名諒選手が史上初の9連覇を果たしました。一方、女子「形」の清水希容選手は優勝を逃し、8連覇はなりませんでした。

ことしの大会は、東京オリンピックの会場となる日本武道館で開かれ技の正確さや力強さなどを競う「形」と、1対1で対戦する「組手」の個人戦が行われました。

このうち、男子「形」には、東京オリンピックの代表内定を確実にしている喜友名選手が出場しました。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ことし3月以降は国際大会の中止が相次いだためほとんどの選手が久々の試合となりました。

喜友名選手はことし1月以来の試合でしたが順当に決勝まで勝ち上がり、持ち味の力強く迫力のある演武を見せて相手に1点以上の大差をつけて優勝し、大会史上初の9連覇を果たしました。

一方、女子「形」でオリンピックの代表内定を確実にしている清水選手も順当に決勝に進みましたが、持ち味のキレのあるダイナミックな動きを表現することができず大野ひかる選手に敗れ、大会記録に並ぶ8連覇を逃しました。

喜友名「自信につながった」

男子「形」で史上初の9連覇を果たした喜友名諒選手は、「いつも稽古しているように思い切り演武できれば結果はついてくると思っていた。大会が無い期間で突きや蹴りがレベルアップしてきたので、それが形にも生きてきた。自信にもつながっている」と振り返ったうえで「次は満点を取る演武をしたい。来年のオリンピックは、優勝します」と意気込みました。

女子「形」 大野「本当にここまで長かった」

女子「形」で清水希容選手を破り、初優勝を果たした大野ひかる選手は「何も考えずにただ自分のできることを一つ一つ無心でやった。本当にここまで長かったが、諦めずに来られた。今後も自分の納得いく形を追求していきたい」と話していました。

女子「形」 清水「ただただ悔しい」

女子「形」で8連覇を逃し2位に終わった清水希容選手は、「8連覇を目指していたのでただただ悔しい。久しぶりの大会でかなり緊張していたし、どんな感じになるのかなと探り探りでやっていた。この1年間やってきたことをしっかりと出そうと、きっちり勝って自信を持って来年のオリンピックに挑みたいと思っていたが、負けるのではないかという自分の気持ちの弱さが形に出てしまった」と振り返りました。

今後に向けては、「自分の技を自分のものにできるようにしっかり頑張っていきたい。もう一度反省してやり直したいと思う」と誓っていました。

女子「組手」は五輪内定確実の2人が振るわず

女子「組手」では、東京オリンピックの代表内定を確実にしている宮原美穂選手と植草歩選手が出場しましたが、いずれも結果を残せませんでした。

全日本選手権では体重無差別で組手が行われ、ことしは飛まつによる新型コロナウイルスの感染を防ごうと頭部を覆う専用の防具「メンホー」と口元にシールドを着けて初めて開催されました。

女子の組手には、オリンピック、55キロ級の代表内定が確実の宮原選手と、61キロを超えるクラスで代表内定を確実にしている植草選手が出場しました。

宮原選手は2回戦で帝京大2年の澤江優月選手と対戦し、得意の突き技で先制したものの後半に体格で大幅に上回る相手のパワーに押されて突き技を連続で決められ敗れました。

一方、植草選手は、2年ぶりの優勝を目指しましたが3回戦で終盤、大学生に蹴り技を決められ逆転負けしました。

女子組手は宮原選手を破った澤江選手が初優勝、男子組手も大学3年生の崎山優成選手が初優勝しました。

女子「組手」 宮原「スピードがまだまだ」

宮原美穂選手は2回戦で、優勝を果たした澤江優月選手に逆転負けし「自分より大きい相手だったのでコートを広く使うことを意識したがスピードがまだまだだった。ポイントを先取してからの勝負のしかたも考えないといけなかった。結果を受け止めて前に進むしかない」と振り返りました。

来年2月以降、国際大会の開催が予定されていることについては「出場できる国際試合にはできるだけ出て、この1年でどう変わったか、通用するかを確認してオリンピックに向けて頑張っていきたい」と話していました。

女子「組手」 植草「距離感がいつもと違う感じがした」

3回戦で大学生に逆転負けした植草歩選手は、感染対策として取り入れられたメンホーについて「この大会に向けて着けて練習をしてきたが、相手との距離感がいつもと違う感じがした。ただ環境の変化は調整していくものなので、合わせられなかった自分の責任だ」と振り返りました。

来年のオリンピックに向けては「1日、1日を大事に強くなりたい」と涙をこらえながら話していました。

敗れた絶対王者 敵は自分自身の「心の声」

清水希容選手は、8連覇を逃した全日本選手権で見えないある敵と戦っていました。

「負けるんじゃないか」という弱気な心の声です。

全日本選手権7連覇、世界選手権2連覇を果たし、東京オリンピックの代表内定を確実にしている絶対王者。

去年10月以降の国際大会では、2位にとどまる大会が続いたうえ、ことし1月には2年ぶりに決勝進出を逃し「悔しいだけでなく、果たして今の自分のままでいいのかなという気持ちがある」という胸の内を吐露していました。

こうした中、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大。

東京オリンピックの延期に国際大会も中止が相次ぐ想定外の事態になり日々、稽古を繰り返すだけの時間が半年以上に渡って続きました。

世界の第一人者として“絶対に勝たなくてはいけない”という試合。

月に1回のペースで追われていた時には出来なかった蹴りや突きなど基礎動作の癖の修正に時間を割いて取り組みました。

コロナ禍で試合のない期間を「成長する貴重な時間」とも前向きにとらえ過ごしました。

そして迎えた全日本選手権。

清水選手は稽古を積んで強くなったとみずからを信じる気持ちを抱いた一方で、実戦で負けが続いた以前のイメージを払拭できず「負けるんじゃないか」という弱気な心の声を消すことが出来ていませんでした。

それでも決勝まで進み、選んだ「形」は得意の「チャタンヤラクーサンクー」。

ほとんどの国際大会の決勝で演武してきた形で、ダイナミックさが特徴です。

しかし、負のイメージが消えないまま臨んだ決勝では四方の敵を次々と倒していくといういつもの迫力ある演武は表現できませんでした。

結果は0.48及ばず2位。

2012年以来、実に8年ぶりの国内大会での敗戦でした。

試合後、清水選手を指導する古川哲也コーチは「大会前に節々に不安を感じることばがあった。練習どおりすれば何も問題ないのに不安という見えない物を肥大化させてしまった。相手を倒さないといけないはずなのに気持ちが技に乗り切らず、迫力が不足していた」と敗因を分析しました。

清水選手も「やっぱり自分の中で、負けるのではないかという思いが、強くありすぎるところがある。連覇を自分で切ってしまいただただ悔しい。弱気な部分をしっかり払拭して自分の強いところをしっかりと出せるようにしたい」と誓いました。

東京オリンピックで金メダルに近い清水選手が「技」と「体」を鍛え抜いてきた今、本番に向けて、内なる弱気な心の声へどのように向き合っていくかが大きなカギを握りそうです。