スポーツクライミング五輪代表選考 CAS 日本の主張退け2人内定

スポーツクライミングの東京オリンピックの代表選考基準の解釈をめぐる問題で、CAS=スポーツ仲裁裁判所が日本の主張を退ける判断を下し、新たに原田海選手と野中生萌選手が日本代表に内定しました。

スポーツクライミングの東京オリンピックの国・地域ごとの出場枠は男女それぞれ最大「2」で、日本は男子が楢崎智亜選手と女子は野口啓代選手が1人目で代表に内定していますが、残る2人目の選考基準をめぐって日本の協会と国際競技団体で解釈が異なり、日本が去年11月にCASに提訴していました。

日本協会は12日、CASから11日夜、判断の通知を受けたことを明らかにし、CASは、日本代表の2人目は去年の世界選手権で日本勢で2番目だった選手ですでに確定しているとする国際競技団体の解釈を認める判断を下し、ほかの大会の結果と合わせて選考レースができるとしていた日本の主張を退けたということです。

日本協会はCASのこの判断を受け入れ、東京オリンピックの日本代表の2人目は、男子は原田選手、女子は野中選手が内定しました。
これで日本代表は男女4人が出そろうことになります。

一方、ほかの日本選手にとっては、オリンピック代表の選考レースが途中で絶たれることになりました。

代表内定の原田「心から喜べる内容ではない」

代表に内定した原田海選手は、大阪 岸和田市出身の21歳。
おととし、世界選手権の男子ボルダリングで優勝。東京オリンピックの出場権のかかった、去年8月の世界選手権の男子複合では日本勢で2番目となる4位に入りました。
ホールドをつかむ指先の力や大舞台でも動じない冷静な精神力に定評があり、複数のコースを攻略する得意のボルダリングに加え、壁を登った高さを競うリードでも、ワールドカップで上位に入る実力を備えています。

原田選手はマネージメント会社を通じてコメントを発表し「どうなるか分からない状態が続いて不安も抱えていたので、まずは結論が出てほっとしている。とはいえ、心から喜べる内容ではないので、気持ちを整理してこの結果を受け入れたい」と述べました。
そのうえで原田選手は「判断に関してあまり気にしないように過ごしてきたが、至る所から「内定でしょ?」と言われ、心が揺れ動いたし、落胆した時もあった。当事者として思うことは、今後同じような状況には誰もなってほしくない。チャンスを失った仲間たちもいるので、その思いも真摯(しんし)に受け止めて、大会に臨むことができるよう気持ちを整理していきたい」と選考レースの道が絶たれた仲間を思いやっていました。

代表内定の野中「経験をすべて吸収し よい方向に努力」

代表に内定した野中生萌選手は東京都出身の23歳。
おととし、女子ボルダリングのワールドカップで年間総合優勝を果たし、東京オリンピックの出場権のかかった去年の世界選手権の女子複合では、日本勢で2番目となる5位に入りました。
女子屈指の筋力と運動能力の高さを生かしたダイナミックな動きを持ち味とし、複数のコースを攻略するボルダリングに加え、壁を登る速さを競うスピードも得意としています。

野中選手は「協会からの発表が終わった瞬間に涙があふれ出てきた。今までの不安、怒り、悲しみ、うれしさなどいろんな感情が止まらなかった」と安どの気持ちを明かしました。
そのうえで「思うようにいかなかった選手の気持ちをしっかり考え、その選手の分まで頑張りたい。今までがどうこうとか言っていられない。経験したことをすべて吸収し、よい方向に向かうよう努力したい。目指すは金メダルで変わらない」と力強く前を見据えていました。
また、日本の協会と国際競技団体に対しては「協会や競技の未熟さから今回の問題が起きたと思う。この先、同じような経験をする選手がないようにしてほしい」と望んでいました。

代表選考レースをたたれた選手は

東京オリンピック代表の選考レースが途中でたたれることになった、男子の藤井快選手は「残念だが、結果は現実として受け入れたい。今できること、目の前にあることを真摯(しんし)に全力で取り組み、結果にこだわり、2024年パリオリンピックに向け準備する」とコメントを発表しました。

女子の伊藤ふたば選手は「望んでいた結果にならなかった。まだ感情が整理しきれていないというのが本心だ。これから前を向き、より一層強くなれるよう頑張っていく」とコメントしています。

日本協会「長期間不安定な状況をおわび」

CASの判断を受けて、日本山岳・スポーツクライミング協会は「力及ばず、残念ながらわれわれの請求が認められなかった。国内選考基準によればオリンピックへの出場可能性がある選手のオリンピックへの道がたたれてしまったこと、加えて新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、選手をはじめ関係者の皆様を長期間にわたり不安定な状況に置いてしまったことについて、深くおわびを申し上げます」とコメントを発表しました。

五輪代表選考めぐる経緯

日本山岳・スポーツクライミング協会は、東京オリンピックの日本代表の選考基準について、1人目は去年8月に行われた世界選手権の複合で7位以内の日本勢トップの選手が選ばれると定めていて、男子は優勝した楢崎智亜選手、女子は2位だった野口啓代選手が内定しています。

そして2人目については選考レースを行い、去年の世界選手権と、去年11月から12月にかけて行われたオリンピック予選などの対象大会でオリンピック出場権を獲得した選手の中から、国内大会の複合ジャパンカップで最上位の選手を代表に内定するとしています。

日本協会の解釈だと、
▽男子では、世界選手権4位の原田海選手、オリンピック予選1位の藤井快選手、オリンピック予選3位の楢崎明智選手の3人が、
▽女子では、世界選手権5位の野中生萌選手、オリンピック予選1位の伊藤ふたば選手、オリンピック予選5位の森秋彩選手の3人が、
代表選考の対象になっていました。

一方、国際スポーツクライミング連盟は去年10月ごろに日本と同様だった解釈を変え、世界選手権で日本勢の2番目だった男子の原田選手と女子の野中選手がオリンピック出場権を得たと認定しました。
この場合、日本は最大出場枠「2」を満たすことになるため、国際連盟は残りの日本選手には出場権を与えていませんでした。

日本協会は去年11月に国際競技団体の解釈の取り消しを求めてCASに訴えを起こし、その後、選手たちは選考レースがどうなるのか分からないまま、対象大会に出場したり大会を目指したりする異例の状態が続きましたが、提訴から1年余りたち、ようやくCASの判断が示されました。