太陽光発電施設を規制する条例 この3年で3倍以上に NPO調査

「脱炭素社会」の実現に向けてカギを握るとされるのが、太陽光など再生可能エネルギーの普及です。しかし、太陽光発電施設の建設を規制する内容の条例を設けている市町村が、この3年で3倍以上に増えたことが、NPO法人の調査で分かりました。景観を損ねることなどを懸念する住民の声が背景にあります。

2050年までに二酸化炭素の排出を全体としてゼロにするという目標の達成に向けて、政府は太陽光などの再生可能エネルギーを最大限導入する方針です。

しかし、大規模な発電施設が景観を損ねることや、太陽光パネルが突然崩れ落ちたりすることへの懸念から、住民が反対するケースもあり、建設を規制する条例を設ける自治体も少なくありません。

東京のNPO法人「環境エネルギー政策研究所」によりますと、設置を規制する内容の条例を設けている自治体は、3年前に行った調査では28市町村でしたが、今月上旬の段階では少なくとも94市町村に上り、3倍以上に増えていたということです。

内訳を見ますと、68の市町村が建設を禁止したり抑制したりする区域を設けていたほか、25の市町村が建設にあたって市町村長の許可や同意などを必要としていました。

大規模な太陽光発電施設の建設計画に対し住民による反対運動が起きた、岩手県遠野市や静岡県伊東市では、その後、条例によって、いずれも市内全域が「抑制区域」に指定されています。

調査を行った「環境エネルギー政策研究所」の山下紀明主任研究員は「これだけ多くの自治体で規制されていることは驚きで『脱炭素社会』の実現に向けて乗り越えなければならない大きな課題だ」としたうえで「迷惑施設ととらえるだけでは『脱炭素化』は進まない。海外では地域の実情を踏まえて、導入を抑制する区域と推進する区域を定めている国もあり、そうした例を参考に、日本でも対策を講じる必要がある」と話しています。

長野 木曽町 条例制定のきっかけは住民の反対署名

長野県は、今月上旬までに13の市町村で太陽光発電施設の建設を規制する条例が制定され、全国で2番目に多くなっています。

このうち木曽町では去年10月、新たな条例が施行されました。
条例では、再生可能エネルギーによる発電施設を設置する際には、事前に地元の自治会などに計画を説明したうえで、町の同意を得ることが必要だとしています。
また、景観を損ねたり、土砂災害を引き起こすおそれがあったりする地域を「抑制区域」とし、この中では、100平方メートルを超える太陽光発電施設の建設は、原則として町は同意しないとしました。

条例が制定されたきっかけの1つが、地元の住民たちによる反対署名です。
木曽町は山岳信仰の対象としても知られる御嶽山のふもとにあり、登山客などが数多く訪れます。
町内で温泉旅館を営む松永民子さんは、自宅や旅館から1キロ足らずの場所に太陽光発電施設の建設計画が持ち上がり、5年ほど前から建設に反対する署名活動を続けてきました。
樹木が伐採されると景観が損なわれるうえ、この地域は地盤が緩く、太陽光パネルが崩れ落ちるおそれがあると考えたといいます。

これまでにおよそ2500人分の署名を集め、町に提出しましたが、建設計画はストップせず、ことし8月に発電が始まりました。今後もパネルの増設が予定されています。

松永さんは「美しい紅葉など四季折々の自然がこの町の魅力なのに、太陽光パネルが無秩序に設置されれば、その魅力が損なわれてしまう。温暖化対策は必要で、太陽光パネルに一律に反対しているわけではないが、守るべき場所は守ってほしい」と話しています。

木曽町は長野県の呼びかけを受けて、4年前に再生可能エネルギーの導入を促進するための条例を制定していました。
しかし、松永さんのように建設に反対する住民の声を受けて、この条例を廃止し、新たに設置を規制する条例を制定することになりました。
条例によって、御嶽山のふもとは全域が「抑制区域」となり、今後は原則として大規模な太陽光発電施設は設置できません。

木曽町町民課の中村和子課長は「乱開発を防ぎ、町のシンボルである御嶽山の自然環境を守るために条例を制定した。『脱炭素社会』の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入を進めたいという思いも当然あり、難しいかじ取りを迫られている」と話していました。

太陽光発電に関する相談 4年間に約530件

資源エネルギー庁が設けている、再生可能エネルギーに関する不適切な事例の相談を受け付ける窓口には、ことし9月までの4年間に600件近くの相談が寄せられました。

このうち9割以上にあたるおよそ530件が太陽光発電に関するもので、地元の理解をえないまま事業が進められることへの懸念の声が最も多いということです。

また、おととしの西日本豪雨で神戸市の山陽新幹線の線路脇の太陽光パネルが崩れ落ちて、新幹線が一時運転を見合わせるなど、周辺地域に被害をもたらすケースもあるほか、山林に発電施設が建設されれば土石流など災害を防ぐ機能が失われるとして、住民が建設の差し止めを求める裁判を起こしたところもあります。

政府 申請あった段階での情報共有を検討

再生可能エネルギーで発電した電力については、あらかじめ決められた価格で、大手電力会社が発電事業者から買い取ることが法律で義務づけられています。

この「固定価格買い取り制度」で個別の発電事業を認定する際、国は、景観法に基づく届け出を行っているかや、地すべりなどのおそれがある場所に建設する場合には必要な許可を得ているかなどを事前にチェックしています。

また、大規模な太陽光発電施設については、環境への影響を評価する「アセスメント」を行うことが事業者に義務づけられているほか、対象ではない発電施設についても「環境に配慮し、地域と共生した形で事業を行うことが重要だ」としています。

より詳細な規制についてはそれぞれの自治体が地域の実情に応じて行ってほしいという立場ですが、「固定価格買い取り制度」で認定した事業が、のちに地元でトラブルになるケースが少なくないことから、政府は、今は認定後にしか事業者や事業内容などの情報を地元自治体に提供していない制度を変更し、申請があった段階で情報を共有することを検討しています。

これによって、自治体と事業者が早めにコミュニケーションをとることができ、事業が始まる前に地元の理解を得ることを促したい考えです。