新型コロナ クラスター発生の施設などに専門家を派遣し指導

新型コロナウイルスのクラスターが発生した高齢者施設などに専門家を派遣して、感染予防のための助言や指導を行う事業を「日本環境感染学会」が始めました。学会では、現場に応じた対策で、再び同様の感染が起きるのを防ぎたいとしています。

感染の「第3波」とされる現在の感染拡大では、重症化するリスクの高い人が多い高齢者施設などでの感染が相次いでいます。

感染予防が専門の医師や看護師などで作る「日本環境感染学会」は、こうした施設での感染対策を進めようと、先月末から、国からの委託でクラスターが発生した高齢者施設や障害者福祉施設に対する専門家の派遣を始めました。

学会では、国や自治体の要請を受けて、全国にいる専門家を派遣し、専門家は施設のスタッフなどに感染を予防する対策を助言し、指導します。

今月初めにかけては、クラスターが発生した北海道旭川市の高齢者施設などで、ガウンなどの防護着を安全に脱ぐ方法や、感染リスクの高いエリアと比較的安全なエリアを分ける「ゾーニング」の方法などについて、助言したということです。

学会の理事長で、東京慈恵会医科大学の吉田正樹教授は「施設のスタッフの方は防護着の着用など、感染対策には不慣れな方が多いと思う。専門家が現地で直接助言することで、現場にあった対策ができる。再びクラスターが起きるのを防ぎたい」と話しています。

現地に派遣された専門家は

感染予防対策が専門の、東京医療保健大学大学院の菅原えりさ教授は、今月上旬に北海道旭川市に派遣され、クラスターが発生した障害者福祉施設などで対策の助言や指導を行いました。

施設では、防護服の着脱場所からゴミ出しの方法まで、感染予防のためのルールが整備され始めていたということで、菅原教授は、防護具を着たまま作業しなければならないスタッフのために、外に出なくても休憩できるスペースを作るなど、環境面での整備にあたったということです。

また、医療機関などから支援のために派遣された看護師らにも、防護着を安全に脱ぐ方法や手順などを指導したということです。

施設の状況について、菅原教授は「施設では、感染症対策に詳しい人が常にいるわけではなく、施設のスタッフはかなり不安が強かったと思う。感染が発生して、濃厚接触者となった人が離脱しているため、人材不足は大変厳しいものがあり、かなり疲れがあるように見えた」と説明しました。

そのうえで「施設には、今後も北海道外から応援に入る可能性があるので、新しく来た人にも防護着の着脱など、感染予防のためのルールを理解してもらう必要がある。中での業務の支援ももちろん大事だが、対策を内部で伝達できるようにする仕組み作りも必要だと感じた」などと話していました。