札幌の外出自粛要請25日まで延長 旭川も対象に 北海道対策本部

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、医療体制が厳しい状況にあるとして、北海道は感染のリスクを避ける対策がとれない場合、札幌市で不要不急の外出を控えるよう要請する対策を今月25日まで2週間延長し、旭川市も対象とすることなどを決めました。

北海道は感染拡大で道内の医療体制は厳しい状況にあるとして、10日夕方、対策本部会議を開きました。

そして、11日までとしていた感染のリスクを避ける対策がとれない場合に札幌市内での不要不急の外出やほかの地域との行き来の自粛、札幌市全域の接待を伴う飲食店の休業、それに繁華街・ススキノの飲食店などの営業時間の短縮などの要請を今月25日まで2週間、延長することを決めました。

またクラスターが相次ぎ、医療体制がひっ迫する旭川市でも今月25日まで、不要不急の外出を控えることや道民に対して外出の自粛などが要請されている都府県との行き来を控えるよう求めることにしました。

さらに道民などに協力要請をしてきた特別措置法に基づく集中的な対策期間を年末年始を挟んだ来月15日まで延長し自宅を含め、5人以上や、2時間を超える飲食を控え、年末年始のあいさつ回りを控えることなども要請します。

北海道 鈴木知事「一段の取り組みの徹底を」

北海道の鈴木知事は、対策本部会議で「道民の大切な命と健康、暮らしを守るため集中対策期間をさらに延長せざるをえない。引き続き、大きな負担をおかけするが、何としても現下の感染拡大の抑制を図り、医療提供体制の負荷を減らすとともに重症になる方や亡くなる方を1人でも少なくできるようさらに一段の取り組みの徹底を図らなければならない。ご理解と協力を心からお願いしたい」と述べ、道民や事業者に協力を求めました。

北海道医師会 長瀬会長「しっかり抑え込みを」

北海道医師会の長瀬清会長は「医療崩壊を防ぐためには、ここでしっかり抑える必要がある」と述べたうえで、対策の徹底を改めて呼びかけました。

長瀬会長は、現状について「旭川市や札幌市をはじめ、医療機関や老人施設でのクラスターがずいぶん出ていて、感染者が高止まりになっている。これまでは若い人の感染が中心だったが、今は重症化のリスクが高い高齢者が多い。このままでは一気に医療がひっ迫し、崩壊することにもつながる」と述べました。

そのうえで「このあと最も心配なのは年末と正月の医療体制だ。何としても重症者のさらなる増加は抑えなければならない」と強調しました。

そして「年末年始に集まって一杯やりたいということもあると思うが、考えて行う必要がある。基本的な感染対策をきちっとやっていればかなりの部分で抑えることができるのではないかと思っているので、改めて基本を徹底してほしい」と呼びかけました。

道内の感染状況

北海道内では、10月下旬から新型コロナウイルスの感染者が再び増加に転じ、先月5日に初めて1日の感染者数が100人を超えました。

その後も感染の拡大に歯止めはかからず、4日後の9日に200人、20日には300人を突破します。

国の緊急事態宣言が出されていた4月から5月にかけてのいわゆる「第2波」では、最も多い日でも45人だったのに対し、経験したことのないような規模となりました。

現在も依然として1日あたりの感染者数が200人を超える日も多く、収束の見通しは立っていません。

また、重症者について見ると、「第2波」以降は数人程度にとどまっていましたが、感染拡大とともに増え続けいまでは30人近くで高止まりしている状況です。

特に深刻なのが死者数です。
第2波以降、7月から10月まではひと月あたり5人を下回り、特に8月は1人も死者が出ませんでしたが、先月は84人、今月は9日までで93人と急増しています。

これまで死者が最も多かったのは5月の47人でしたが、それを大幅に超える規模で増え続けている状況です。

バス会社は影響の長期化懸念

都市間バスを運行するバス会社は、利用客減少の長期化を懸念したうえで「年末年始は帰省できる状況になってほしい」と話しています。

十勝の音更町にある「北海道拓殖バス」は、道内のバス会社4社と共同で、札幌と帯広とを結ぶ都市間バス「ポテトライナー」を1日10往復運行しています。

この都市間バスの利用客数は、国の緊急事態宣言が出ていたことし4月から5月には前の年よりおよそ8割減少していましたが、10月には前年比5割減にまで回復していました。

しかし、道が札幌市と道内のほかの地域との行き来の自粛を要請した先月以降は再び利用客が落ち込み、前年比で6割から7割の減少が続くなど厳しい状態が続いています。

小森明仁業務部長は「道内の感染者数を聞くと、こうした対策はしかたがないと思う」と理解を示しました。

そのうえで「年末年始は1年間でいちばん需要がある時期なので、26日以降も延長されると今後の経営にも影響が出てくると思う。なんとか皆さんに気をつけていただいて感染者を減らしてもらい、年末年始は帰省できる状況になってもらいたい」と話していました。

旭川市民の受け止めは

新型コロナウイルスの感染のリスクを避ける対策がとれない場合、不要不急の外出を控えることについて、旭川市中心部で聞きました。

このうち持病があるという70代の1人暮らしの男性は「感染しないよう、外出をできるだけ控えています。週2回だけ外出して、必要なものを買うようにしています。年末年始は毎年、親族で集まりますが、今度は控えて1人で過ごします」と話していました。

また、3歳の男の子がいる30代の男性は「今の旭川市の状況を考えると外出を控えるのはしかたないと思います。新型コロナの影響が長期化して私たち自身も感染対策に緩みがあったかもしれません。子どもも遊びに行きたい気持ちを我慢していますが今は、一人一人が対策をしっかり行いたいと思います」と話していました。

旭川のレストランは

旭川市中心部のレストランの経営者は、年末年始を前に先行きへの不安を一層募らせています。

旭川市中心部にあるフレンチレストラン「Le Ann」では、新型コロナの感染拡大以降、利用客の減少が続いています。

クリスマスが近づくこの時期は毎年、繁忙期でランチもディナーも連日、ほぼ満席となりますが、ことしは12月に入っても客の入りは少ないままだということです。

このレストランの経営者でシェフの佐藤竜太さんは「医療関係者の人たちが頑張っているので自分たちも協力したいと思い、感染防止対策を徹底しながらできるかぎりのことはしてきた。しかし今の状況が続くと経営的に厳しく、どうしていいかわからない。今入っている予約もキャンセルが相次ぐのではないか不安だ」と話していました。

道内有数観光地 洞爺湖温泉では

道内有数の観光地、洞爺湖温泉ではことし7月以降、観光客が回復する傾向にありましたが、先月以降、道内の感染者が急増する中、宿泊施設の予約のキャンセルが増えているということです。

道の集中対策期間の延長について洞爺湖温泉観光協会の大楽泰生事務局長は「冬場に入り電気代や灯油代など、非常に大きな額の固定費がかかる中で、宿泊施設はなんとかやっている状況です。この状況が続くのは厳しいです。雇用を維持することが、事業者にとってはいちばん大きな問題だと思います」と話していました。

観光協会は、温泉街を盛り上げようと今月1日から冬の花火大会を毎日開催し、10日からインターネットで中継映像の配信も始めます。

大楽事務局長は「こんな時期だからこそ花火を見て上を向いてほしいです。来年度に向けてもこちらに来ていただいた方に楽しんでもらえるように準備を進めたい」と話していました。

函館の飲食店は

函館市の飲食店からは、客にどこまで徹底を呼びかけられるのか不安に感じる声が聞かれました。

JR函館駅近くのうに料理などを出す飲食店では、道による集中対策期間が始まってから1日に数件のキャンセルがあったということです。

今回の延長で、年末にかけてさらにキャンセルが増えることが懸念されることから仕入れの量を減らすことなどを検討しているということです。

「函館うに むらかみ」の専務取締役の村上朋子さんは「本来であれば企業の忘年会や新年会、そして帰省に合わせた家族での利用の予約がありますが、ことしは問い合わせすらなく厳しい状況です。延長によって北海道全体が自粛モードになってキャンセルが増えるなど影響があると思います」と話しています。

また、5人以上や2時間を超える飲食を控えるよう求める道の要請について、「お酒を飲むと大きな声で話されたり長時間滞在されたりする人もいてこちらからもお声がけしようと思いますがお客様が楽しまれているので道の呼びかけを個人の店として強く訴えることについては難しさも感じます」と話していました。

釧路の酒店は売り上げ減を懸念

釧路市の繁華街にある酒店ではかき入れ時に売り上げが大幅に落ち込むことを懸念する声が聞かれました。

釧路市の繁華街、末広町にある酒店では、飲食店やホテルからの注文が減りことしの売り上げは例年の半分程度に落ち込んでいます。

先月からは感染拡大によってさらに注文が減っているということで、10日午前中の配達先も例年の2割ほどの4か所にとどまり配達用トラックの荷台は空きが目立つ状態でした。

この店では、すでに仕入れる酒の量を例年の3分の1程度に抑えたり従業員の一部を休ませたりしていて、本来、かき入れ時である年末年始に売り上げが大幅に落ち込むことを懸念しています。

「栄屋酒店」の政也徹部長は「11月からは店の売り上げがどんどん悪くなって末広地区も大変なことになっています。大きな宴会もなくなりわれわれも四苦八苦していて、12月の繁忙期に人が出てこなくなると生活に困ってしまうのでなんとかしてほしいです」と話していました。