英 ワクチン接種の2人に激しいアレルギー反応のような症状

アメリカの製薬大手、ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まったイギリスで8日、接種した人のうち2人が、激しいアレルギー反応のような症状を示していたことがわかりました。規制当局は、過去に同じような症状が出たことのある人は接種しないよう、予防的な措置としての勧告を出しました。

イギリスでは、アメリカの製薬大手、ファイザーとドイツの企業、ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が8日、始まりました。

接種を実施しているNHS=国民保健サービスによりますと、高齢者などとともに接種したNHSのスタッフ2人が接種の直後、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」のような症状を示したということです。

2人は過去にも強いアレルギー反応が出たことがあり、急な症状を抑えるために自分で使う注射薬も持っていたということで、その後、手当てを受けて回復したということです。

今回の報告を受けて、イギリスの規制当局は医療関係者に対し、これまでワクチンや薬、それに食物で「アナフィラキシー」のような症状が出たことがある人には、このワクチンを接種しないよう予防的な措置としての勧告を出しました。

規制当局のレイン長官は9日、議会の委員会で「広範な臨床試験ではこうしたことはワクチンの特徴にはなかった。勧告を強化する必要があればすぐに実行する」と強調しました。

ファイザー「規制当局の原因究明に協力」

今回の発表について、ワクチンを開発した製薬大手ファイザーは「規制当局の原因究明に協力していく。4万4000人を対象とした第3段階の臨床試験のデータを検証した外部の委員会からは、これまでのところ深刻な健康への懸念は報告されていない」とコメントしています。

専門家「情報公開と冷静対応を」

イギリスで、新型コロナウイルスのワクチンの接種を受けた人に、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」のような症状が出たことについて、ワクチン開発に詳しい東京大学医科学研究所の石井健教授は「かつてはインフルエンザワクチンで、製造過程で使用する卵やゼラチンのアレルギーが問題になったことがあるが、今回のワクチンは成分が異なっている。報道での情報しか得ていないが、ワクチンでアナフィラキシーまで起きるのは決してよくあることではない。命に関わることもあるので注意が必要だ。これが何十万、何百万人に1例なのか、よく起こることなのか注意深く見ていく必要がある」と指摘しました。

そのうえで「今回のワクチンは数万人規模の臨床試験を終え、接種が許可されているので、これをもってすべての接種をやめたり、アレルギーの人は絶対に打たないとなったりはしないと考えている。ワクチンは怖いから打たないほうがいいという風潮が生まれるのは問題で、透明性のある情報公開と落ち着いた対応を取ることが重要だ」と話していました。