大阪府 5大学病院に重症用病床計20床 一時的に追加の緊急要請

大阪で新型コロナウイルスの医療体制がひっ迫するなか、大阪府は府内にある5つの大学病院に対して、一時的に重症用の病床20床を追加で用意するよう緊急に要請しました。

大阪府内で重症患者を受け入れる病床の使用率は、8日の時点で70.9%と、大阪府の独自基準「大阪モデル」で非常事態を示す70%を初めて超えたほか、すぐに入院可能な病床の運用率は83%に達しています。

こうした中、大阪府は府内の5つの大学病院に対して、今月20日までの間、重症用の病床を、それぞれの病院で4床、合わせて20床を追加で用意するよう緊急に要請しました。

また、現在、軽症や中等症の患者を受け入れている病院のうち、病床数が多く、重症患者の治療に対応できる15の病院に対しても緊急の要請を行いました。

具体的には、大阪府全体の重症用の病床の運用率が90%程度になった場合、これらの病院に対しては患者が重症化しても転院させずにそのまま治療を続けてもらいたいとしています。

大阪府は、今月15日から重症患者専用の医療施設「大阪コロナ重症センター」を開設することにしていて、府はセンターの運用が本格的に始まる今月20日までの一時的な措置だとして理解を求めています。

吉村知事「一時的な期間のお願いとして理解を」

大阪府の吉村知事は記者団に対し、「今、確保している病床が切迫してきたら、さらに増やす必要がある。それぞれの大学病院で今月20日までの一時的な期間、追加の病床をお願いしますということで病床調整していると理解してほしい」と述べました。

近大病院 要請受け2床増やす

大阪府から一時的に重症患者用の病床を増やすよう、要請されたことを受けて、大阪狭山市にある近畿大学病院は9日から重症患者用の病床を2床増やして12床にしました。

この病院では、これまでにおよそ40人の重症患者を受け入れてきました。

病院によりますと、1つの病棟の3階部分を新型コロナウイルスの重症患者受け入れ専用のフロアにしていて、ここに新たに2床、用意したということです。

ほかの病棟や診療科を受け持つ看護師の配置を調整し、新型コロナの重症患者を専門に担当する看護師の数を増やして対応しているということです。

近畿大学病院の東田有智病院長は「もともと10床が限界だが、期間が20日までと区切られたのでそこまではなんとか、無理をしてでも対応することにした。患者があふれているので無理してでも対応しないといけない」と述べ、あくまでも一時的な対応として病床を増やしたと指摘しました。

そのうえで「もし要請が長期間、続くとおそらく耐えられなくなる。通常の医療など、病院の機能のどこかを止めないといけなくなり、何かが犠牲になるだろう。とにかく感染者を減らさないといけない」と述べ、危機感を示していました。

病床増は高度医療に影響も

大阪大学医学部附属病院では、これまで38人の新型コロナウイルスの重症患者を受け入れ、治療を行ってきました。

病院では、ICU=集中治療室にある30床のうち、10床を新型コロナの重症患者用に当てています。

病院は、重症患者用の病床を増やしてほしいという府の要請を受け、現在、対応を検討しているということです。

しかし、この病院のICUには心臓移植や肺移植などの高度な医療を受けるために入院している患者が多く、これ以上、新型コロナ用の病床を増やすとなると、他の病院では難しい高度な技術が必要な手術などを減らさざるをえない可能性が出てくるということで、難しい判断を迫られているといいます。