世界各国で開発中の新型コロナワクチン 主な種類は

世界各国の製薬会社や研究機関でさまざまな種類の新型コロナウイルスのワクチンの開発が進められています。主な種類についてまとめました。

生ワクチン

生ワクチンは「弱毒化ワクチン」とも呼ばれ、実際のウイルスの中から毒性の弱いものを選んで増やしたものです。

生ワクチンは効果が高いものも多く、はしかや風疹など従来からさまざまな病気に対して使われています。

新型コロナウイルスではワクチンメーカーの阪大微生物病研究会や東京大学などで研究や開発が行われています。

不活化ワクチン

不活化ワクチンは、実際のウイルスをホルマリンで加工するなどして、毒性を無くしたものを投与するワクチンです。

季節性インフルエンザのワクチンはこの種類で、新型コロナウイルスでは、KMバイオロジクスなどが開発を進めているほか、中国では中国のメーカーのワクチンが限定的に投与されています。

VLPワクチン

VLPワクチンは、ウイルスそのものは使わず、ウイルスの表面に出ている突起の「スパイクたんぱく質」を人工的に合成したものを投与します。

「スパイクたんぱく質」は、ウイルスを攻撃する抗体の目印となります。

人工的に作ったものを投与することで、人に備わっている免疫の働きによって抗体を作り出します。

新型コロナウイルスについて、国内では大阪大学などで研究が行われているほか、アメリカなどでは数万人規模で安全性と有効性を確認する最終段階の臨床試験が行われています。

組み換えたんぱく質ワクチン

VLPワクチンと同様、ウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」を人工的に作り出すワクチンです。

遺伝子組み換え技術を使ってたんぱく質を作って、投与することで、体内でウイルスを攻撃する抗体を作り出します。

国内では、製薬大手の塩野義製薬が開発を進めています。

mRNAワクチン

mRNAワクチンは、ウイルスの表面にあるスパイクたんぱく質を作るための遺伝情報を伝達する物質、「mRNA」を使います。

人工的に作って注射で投与することで、体の中でスパイクたんぱく質が作られ、それを受けて免疫の働きによって抗体が作られます。

新型コロナウイルスの感染が広がる前には実用化されていない新たな技術で、開発にかかる期間が従来のワクチンより大幅に短縮できるのが大きな利点になっています。

新型コロナウイルスでは、アメリカの製薬大手、ファイザーが作ったワクチンの投与が始まったほか、別の製薬会社、モデルナのワクチンも最終的な臨床試験で高い効果を示したとしています。

日本国内でも、製薬大手の第一三共が、開発を進めています。

DNAワクチン

ウイルスの表面にあるスパイクたんぱく質のDNAを人工的に作り出して、ワクチンとして接種します。

投与されたDNAは体内の細胞の中で核に入り込んでmRNAを作りだし、そのmRNAによってスパイクたんぱく質が作られることで、抗体が生み出されます。

大阪大学発のバイオベンチャー企業、アンジェスのワクチンはこの種類で、国内では最も早く、実際に人に投与して安全性や有効性を確認する臨床試験を始めています。

ウイルスベクターワクチン

ウイルスのスパイクたんぱく質を作る遺伝子を、無害な別のウイルスに組み込んで、そのウイルスごと投与するワクチンです。

無害なウイルスが細胞に感染して、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質を作りだし、抗体が作られます。

イギリスのオックスフォード大学と製薬会社のアストラゼネカのワクチンはこの種類で、数万人規模に対して行われた最終段階の臨床試験で高い有効性が示されたとしています。

日本国内でもバイオ企業のIDファーマが開発を進めています。