危険な「ヒートショック」コロナ禍の冬にリスクも

危険な「ヒートショック」コロナ禍の冬にリスクも
「このまま死ぬのかと覚悟した」

急激な温度差で心臓などに負担がかかる「ヒートショック」の経験者のツイートです。冬場の入浴時は特に要注意ですが、コロナ禍の冬、身近なところにも「ヒートショック」のリスクが潜んでいます。(ネットワーク報道部 記者 野田綾・吉永なつみ/帯広放送局 記者 原祢秀平/アナウンサー 浅野達朗)

『死を覚悟』 経験もとにマンガで注意呼びかけ

12月初旬、「ヒートショックに気を付けて」というタイトルで、ツイッターにマンガが投稿されました。
投稿した漫画家の内海涼流さんは24歳の時にヒートショックを経験しました。

おととしの1月、お風呂屋さんで熱いお風呂に入ったあと、そのまま寒い脱衣所に行きました。すると突然目の前がぼやけてヒートショックで失神、5分近く気を失ったといいます。

意識が戻ったあとも…。
「体は硬直して拳を握ったままかたまってました。口も動かなくてしゃべれませんでした。意思疎通も出来ないし本気でこのまま死ぬのかと本気で覚悟してました」

その間、お客さんが体をさすって温めてくれたこともあり、硬直がとけてなんとか治りました。自分が発症するまで「ヒートショック」というもの自体を知らなかったという内海さんは、みずからの経験をもとに注意を呼びかけたいと今回ペンを取ったといいます。
漫画家 内海涼流さん
「私自身が冬の時期にヒートショックになったことから、今の時期は特に気をつけてほしい。年配の方だけでなく健康で若い人でも発症の可能性があるということを知ってほしい」。

家族が倒れた!私はその時

ヒートショックで倒れた家族を間一髪で助けた人にも話を聞きました。

12月初旬にみずからの経験をツイッターに投稿した、のりずむ♪さんです。
5年前の2月のある寒い日、のりずむ♪さんが、居間でテレビを見ていたところ、小さく「ガタン」という物音が聞こえました。もしかして、と思い浴室に行きましたが声かけやノックにも反応がありません。

お風呂のドアを開けようとしても開きません。家族が倒れ、ドアをふさいでいたからです。

無理やりドアを押して開けたところ、洗い場の床に意識の無い家族が倒れていました。震える手で119番に電話をしていたところ、家族の意識が戻り、その後の病院の検査でも無事が確認されました。
家族は、40代で持病なし、血圧も通常。熱いお風呂が好きでほぼ毎日入っていたといいます。

家族は、お風呂に入る2~3時間前に、外食でワインをグラスの半分ほど飲んだ程度でした。
(のりずむ♪さん)
「浴槽の外側に倒れていたから命拾いしましたが、もしも浴槽の中に沈んでいたら…と思うと。自分にはまだ関係ないと思っていても、大好きなおじいちゃんおばあちゃん、お父さんやお母さんがいらっしゃる方は、気にかけてあげてほしい」。

危険なヒートショック

「ヒートショック」は、急激な温度変化によって血圧が上がったり下がったりして起こる症状で、気を失ったり、心臓の病気を引き起こしたりします。特に冬場の入浴時は、暖かい部屋から寒い風呂場への移動や、熱いお湯に入ったり出たりで血圧が上下することから注意が必要です。

年間4900人の高齢者 入浴中に死亡

ヒートショックで亡くなった人の詳しい統計はありませんが、去年、入浴中に亡くなった65歳以上の高齢者は全国で4900人に上り、10年あまりでおよそ1.5倍に増えました。時期が分かっているケースでは1月をピークに11月から4月に多くの事故が起きています。

ヒートショックに詳しい国際医療福祉大学の前田眞治教授によりますと、冬場の入浴時に亡くなった人について、「ヒートショックが関係するケースが多くあると考えられる」と話しています。

消費者庁は、冬場の入浴中の事故を防ぐためのポイントをまとめ、注意を呼びかけています。
1 入浴の前に脱衣所や浴室を暖めておく。
2 お湯の温度は41度以下、つかる時間は10分までを目安に。
3 浴槽から急に立ち上がらない。
4 食後すぐや、お酒や薬を飲んだあとの入浴は避ける。
5 同居する家族がいる場合、入浴する前に一声かけて気にかけてもらう。

コロナ禍の冬 換気にも注意

コロナ禍で迎えたいつもと違う冬。「ヒートショック」のリスクは入浴時以外にも潜んでいます。それは感染対策で行う「換気」です。
「1時間に1回、5分換気を求められるということは、1時間に1度高齢者をヒートショックの危険にさらすことになる」

換気によって冷気が入り込んで室温が下がるとヒートショックにつながってしまうのではないか、ネット上では心配する声も上がっています。
高齢者が入居する施設ではどのような対策をしているのか全国老人福祉施設協議会に話を聞きました。取材に応じたのは北海道の施設で勤務した経験がある職員です。
全国老人福祉施設協議会の職員
「高齢者施設ではコロナ対策に限らずインフルエンザ対策などで毎年冬場は頻繁に換気をしています」
コロナ禍のこの冬だけではなく換気は行っていたということで、寒さの厳しい北海道で室温を急激に下げずにどのように換気を行っていたかポイントを聞きました。
高齢者施設だけではなく、家庭の換気でも実践できそうです。
1 窓を全開せずに複数の窓を少しずつ開けて風が一気に入らないようにしながら空気を循環させる
2 室温が一気に下がらないよう部屋にヒーターで温風を送り込みながら換気する
3 加湿器などで湿度を保って乾燥を防ぐとともに室温の低下を感じにくくする
4 食事などで高齢者が部屋を空ける時間に換気して戻る頃には元の室温に戻す

”換気しながら室温変化抑えて”

ヒートショックと新型コロナウイルスのリスクを考えながら、どう換気を行えばいいのか、感染症の予防対策に詳しい専門家にポイントを聞きました。
関西福祉大学 勝田吉彰教授
「換気の目的は、空気の流れを作ってマイクロ飛沫を薄めることにあります。決して『部屋を寒くする』というわけではありません。本質を見誤って『部屋を寒くしないといけない』『すべての窓を開けないといけない』という発想になってしまうと急激な温度変化を引き起こしヒートショック発症の可能性も高まってしまいます」
そして換気の方法にもポイントがあるといいます。
関西福祉大学 勝田吉彰教授
「換気をしながら室温の変化を抑えることはできます。例えば、お風呂に入っている時はお風呂から上がったあとに寒くならないように廊下の窓は締めておいてもいいと思います。また、温度変化を抑えるために、まずは無人の部屋や廊下に外気を入れて人のいる部屋のドアを開けることで少しずつ換気する『二段階換気』という方法もあります」

“ヒートショック予報”も参考に

みなさんがお住まいの地域で、ヒートショックにどれくらい注意が必要かを紹介しているホームページもあります。
日本気象協会の「ヒートショック予報」です。全国およそ1900地点で、リスクの目安として「警戒」「注意」「油断禁物」の区分で予報して、特に警戒が必要な場合は「気温差警戒」「冷え込み警戒」という予報を出しています。

予報は「予想気温」や「昼と夜の温度差」といったデータに加え、ガス会社が提供する地域ごとの住宅の特徴(建材の断熱性・浴室の暖房の有無)や生活習慣(シャワーが多いかお風呂が多いか)などをもとにしています。

お住まいの地域の予報をチェックすることで、ヒートショックから自分や大切な人の命を守るための対策を、いまいちど心に留めてみてほしいと思います。