2050年の“脱炭素” 再生可能エネルギー普及の現在地は

2050年の“脱炭素” 再生可能エネルギー普及の現在地は
「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」
政府が示した新たな方針を受けて、「脱炭素」の機運が高まっています。特に注目が集まっているのが電力の分野。日本全体の二酸化炭素の排出量の実に4割を占め、私たちの暮らしに密接に関わるからです。家庭や企業の間では、発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを導入しようという動きが広がりを見せています。しかし、さらなる普及に向けて大きな壁が立ちはだかっています。
(経済部記者 西園興起 政経・国際番組部ディレクター 新里昌士)

家庭で高まる脱炭素への関心

福岡市に暮らす前田美穂さん。夫と子ども2人の4人暮らしです。前田さんは、先月、自宅の電力を実質的に太陽光や風力で発電された電力に切り替えました。
契約を切り替えた理由は、温暖化への不安です。最近、夏の猛暑などを肌で感じ、家庭でも二酸化炭素を減らせないか考えるようになりました。
前田美穂さん
「子どもたちの将来のことを考えるとやはり一人でも多くの人が、再生可能エネルギーに対して関心を持っていかないといけないと思っています」

脱炭素は企業の“切り札”

企業の間でも再生可能エネルギーを導入する動きが進んでいます。横浜市にある創業139年の老舗の印刷会社もその一つです。
この会社は、去年、自社の電力のすべてを再生可能エネルギーに切り替えました。屋上一面に太陽光パネルを取り付け、会社で使う電力の2割を発電しています。残りの8割も小売事業者を通じて風力発電でまかなっています。
さらに印刷用のインキや紙も環境負荷の少ないものに切り替え、間接的に「脱炭素」に貢献できると顧客にアピールしています。企業の間で脱炭素に取り組む機運が高まり、取り引きも増加しているということです。
大川社長
「『脱炭素』は新しい価値を創造するものの1つだと認識しています。今後、金融機関から資金調達をする上でもプラスになるのではないか」

再エネ普及に新たな問題も

太陽光など再生可能エネルギーの普及が進む一方、「出力制御」という課題が起きています。事業者などが発電した太陽光などの再生可能エネルギーは電力会社が買い取っています。しかし、太陽光発電は太陽が出ている昼間の発電量が多く、家庭や工場の電力需要を大きく上回ってしまうと、停電するおそれがあるのです。このため、電力会社は発電事業者に対し、太陽光の発電量が増え過ぎる可能性がある日には、前もって「一時的に発電を止めてほしい」とお願いしているのです。
熊本県や佐賀県など九州の43か所で太陽光や風力の発電を運営する発電事業者では、今年度、九州電力から36日の出力制御の要請を受けたといいます。担当の川島悟一さんは出力制御の実施はやむを得ないとしつつも、発電事業者の参入が増えれば、採算が悪化するのではないかと懸念しています。
川島さん
「想定より多くの太陽光が入ってしまえば出力制御が増えてしまう。そういう可能性があっては投資できない」

“出力制御”減らす模索も…

一方、九州電力でも「出力制御」を減らすための模索が始まっています。その1つが蓄電池の活用です。4年前、福岡県豊前市に世界最大級の大容量の蓄電池の施設を整備しました。太陽光の発電量が増える昼間に電気を蓄え、夕方に供給できるようにしています。
さらに、天候によって変わる発電量や需要の予測の精度をさらに高める取り組みも進めています。
緒方副部長
「再生可能エネルギーを有効活用するためにも予測精度を上げながら、さまざまな手法を試していきたい」

2050年の“脱炭素”と再エネの行方は

政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標を掲げています。その実現のためには日本全体の二酸化炭素の排出量の4割を占める電力分野の「脱炭素」は不可欠です。菅総理大臣は脱炭素に向けた研究・開発を支援する2兆円の基金を創設すると発表しました。基金は、今までよりコストが安く、大容量の次世代型蓄電池の研究開発などに使われる見通しです。脱炭素を経済成長のチャンスにつなげるためにもこうした技術開発をどれだけ進められるかも「脱炭素」の鍵を握っています。
経済部記者
西園 興起
平成26年入局
大分局を経て経済部
現在、経済産業省や
エネルギー業界を担当
政経・国際番組部
ディレクター
新里 昌士
平成19年入局
熊本局や福岡局などを経て
9月から政経・国際番組部に所属し「おはよう日本」担当