新型コロナウイルスの発生源はどこ?WHOの専門家に聞きました

中国の湖北省武漢で最初に確認された新型コロナウイルスの感染者が発症したとされる日から8日で1年がたちました。WHOはことし7月、国際的な専門家でつくる調査チームが現地でウイルスの発生源を調べるための先遣隊を中国・北京に送りました。しかし、その後およそ5か月たった今も、武漢での現地調査は実現していません。WHOは発生源についてどのように見ているのでしょうか?WHOで動物由来の感染症の調査を担う専門家、ピーター・ベンエンバレク氏に話を聞いてみました。
(欧州総局記者・古山彰子)

WHOの専門家にずばり聞きました

話を聞かせてもらったのは、デンマーク出身の科学者で、動物由来の感染症に詳しい、ピーター・ベンエンバレク博士です。

ベンエンバレク博士は、2001年からWHO=世界保健機関で働いていて、新型インフルエンザが流行した2009年から2011年までの間は、中国・北京での勤務経験もあります。

現在、新型コロナウイルスの発生源の調査も担っています。

新型コロナウイルスの発生源は?

(記者)
WHOの調査で、新型コロナウイルスの発生源について、これまで何がわかっていて、何がわかっていないんでしょうか?

(博士)
新型コロナウイルスは、コウモリの個体群から見つかりました。ウイルスは、自然界の由来のウイルスです。去年12月、中国の武漢で最初に見つかりました。

私たちがまだわからないのは、その以前に起きたことです。ウイルスがどのようにコウモリから人間界に移り、どのようにして武漢や武漢の周辺の人たちのところに来たのか。

また、ほかの動物種も、この感染に関与しているに違いないと考えています。ウイルスがコウモリから人間に直接、感染した可能性もありますが、それは極めて低いです。

WHOは、中国の専門家と合同で、時間をさかのぼって、その発生源を探そうとしています。

(記者)
新型コロナウイルスは、中国が起源なのでしょうか?中国以外の可能性もありますか?

(博士)
新型コロナウイルスに最も近いのは、2013年に中国・雲南省のコウモリが生息する洞窟で見つかったウイルスです。同じウイルスではありませんが、私たちが知る限り、最も近い種類のウイルスであり、新型コロナウイルスも、中国国内で発生したことは、論理的に考えられます。

しかし、もちろん、100%の確実性はありません。

だからこそ、私たちは心を開き、ウイルスがどこから来たのかを示す証拠を探しているのです。

中国で行う調査は?

(記者)
国際的な専門家でつくる調査チームは、中国で何を調べるのですか?

(博士)
去年12月の時点では、新型コロナウイルスは、軽症や無症状の患者が多いことはわかっていませんでした。去年12月時点に、武漢で重症の患者が40人から50人いたとしたら、当時、発見されなかった軽症や無症状の患者がずっと多くいた可能性が高いと考えています。

最初の症例について、さらに詳細な調査をしなくてはなりません。まずは武漢とその周辺の調査から始め、最初の症例について、詳細な調査を行うとともに、武漢以外の地域でも症状がなかったか、聞き取りが必要です。

中国はかなり高度な公衆衛生システムを持ち、去年のサンプルもたくさん残っているはずなので、それらを調べればウイルスの痕跡を見つけられると思います。

発生源の調査 どのくらい時間がかかる?

(記者)
発生源の調査にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?

(博士)
MERS、SARSの流行の際も、発生源を理解するのにとても時間がかかりました。

MERSの場合、ラクダと人間の症状を結びつけるのに1年かかり、SARSについてはコウモリの役割とウイルスの起源を理解し、中間的な動物種の役割を理解するには3年から5年かかったと思います。

一般的には、これらの研究を行い、当時、何が行ったのかを理解するには、かなりの時間がかかるのです。

(記者)
国際的な専門家でつくる調査チームは、いつ中国に派遣されるのでしょうか?

(博士)
おそらく数週間後か、数か月後になると思うが、まだ非常に不確かな状況です。
6か月後まで待つことはないと期待しています。