冬キャンプに潜む危険 ブームの陰で

冬キャンプに潜む危険 ブームの陰で
いま、コロナ禍で密を避けられるアウトドアとして人気を集めているキャンプ。そのブームの一方、命にかかわる思わぬ危険も潜んでいることが浮き彫りになっています。
命の危険を感じた女性の証言に加え、新語・流行語大賞「ソロキャンプ」の受賞者、ヒロシさんにその体験談と危険性を聞きました。(ネットワーク報道部 記者 馬渕安代/アナウンサー 塩田慎二/SNSリサーチ 三輪衣見子)

ソロキャンプのブームが来た

澄み切った空気、満天の星空。
いま、キャンプがブームです。

コロナ禍で密を避けられる絶好のアウトドアとして新たに始める人も増えています。ネット上にはおしゃれなキャンプのやり方を紹介するページや動画があふれ、人気のキャンプ場は予約が取りにくい状況が続いています。
2020年の新語・流行語大賞では「3密」が年間大賞となりましたが、1人でキャンプを楽しむ「ソロキャンプ」がトップテン入りしブームを裏付けました。

授賞式では、ソロキャンプの動画が話題となっている、お笑い芸人のヒロシさんが受賞者になりました。

ヒロシさん「細心の注意も必要」

そのヒロシさんは、ソロキャンプのブームを歓迎しつつも、初心者が始めるのには注意が必要だと話してくれました。
ヒロシさん
「正直、こんなにソロキャンプを楽しんでいる人が多いんだということに驚いています。これを機に、キャンプを始めようという人もいるかもしれません。冬は、寒さ対策が必要で、暖かい時期よりもハードルが高いんですよね。暖かくなってから始めるなど無理をしないように楽しんでほしいですね。
キャンプで私は、この時期、まきストーブを使うことがあります。その時は、一酸化炭素中毒にならないよう、使い方を含めて細心の注意をしています。皆さんにも注意してほしいと思います」

ヒヤリ経験相次ぐ

実はこのブームの中、暖をとったり調理をしたりする時に使う炭などで一酸化炭素中毒になる事故が後を絶たないのです。
SNS上には、テントやオートキャンプの車の中で一酸化炭素中毒で危険な目に遭った人の体験談が相次いで投稿されています。

「このまま死ぬかも…」体験者は

実際に一酸化炭素中毒で危ない体験をしたという女性から話を聞くことができました。
関西地方を中心にソロキャンプを楽しんでいるいずみさんは、おととし12月、1人でキャンプ場に行きました。夜になって気温が下がると、暖をとるためテントの入り口近くで炭を燃やしていました。

「テントを大きく開けてるし、換気は十分だろう」
食事を済ませ、テント内でくつろいでいたその時、突如、異変を感じました。火を付けてから1時間余りたった午後7時半頃、頭が痛くなり始めたのです。

「また、いつもの頭痛だろう」

一酸化炭素中毒の知識はありましたが、まさか自分がそうだとはこの時には夢にも思いませんでした。頭痛の薬を飲んだものの治まらず、その後もどんどん頭が重くなっていきました。

午後9時頃からは吐き気も加わり、そこから2時間ほど嘔吐し続けたといいます。ようやく一酸化炭素中毒かと思い、炭の火を消しましたが、頭痛は治まりませんでした。

「このまま死ぬかもしれない…」

死の恐怖と寒さに震えながら、夜を明かしました。いずみさんはこの時の状況を、最悪の事態もあり得たと振り返ります。
いずみさん
「一歩間違ったら死んでいたと思います。もし嘔吐という症状が出なかったら、一酸化炭素中毒だとは気づかず意識を失っていたかもしれません。楽しむために来たキャンプで命を落とすのは悲しいことです。一酸化炭素中毒の危険性は冬キャンプをする人なら絶対に知っておかなければならないことだと思います」

気づかないまま… 一酸化炭素中毒の恐怖

東京消防庁によりますと、一酸化炭素は炭などの不完全燃焼の際に発生し、無色で無臭のため気づきにくいということです。
吸った空気に濃度の高い一酸化炭素が含まれていた場合、体内に酸素が行き渡らない状態となり、いわゆる「内部窒息」と呼ばれる状態になるということです。

自分が一酸化炭素中毒になっていることに気づかないまま意識を失ってしまい、最悪の場合には死に至ることもある恐ろしい中毒だということです。

どう防ぐ一酸化炭素中毒

キャンプでの一酸化炭素中毒を防ぐにはどんな対策が必要か、キャンプのノウハウを発信している日本キャンプ協会の高橋宏斗さんに聞きました。
テントの中での火気はご法度
「とにかくテントや車の中で火を使わないこと。テントは燃えやすい素材でできている物もあり、換気もしにくいです。寒いから閉めきって、その中で火を使いたいと考えるかもしれませんがこれはご法度です」
テント近くの火も危ない
「テントの出入り口のすぐ近くでバーベキューをして、30分後にテントに入った子どもが一酸化炭素中毒で意識を失ってしまったという事例があります。炭を使ったときに出た一酸化炭素がテント内に充満した可能性があります。火は、テントから離れた場所で使って下さい。
また、心配な時は、テントの換気をしっかりとしてからテントに入って下さい」
特に子どもは注意
「小児の専門家によりますと、子どもは大人よりも基礎代謝がいいので、一酸化炭素中毒を起こしやすいとされています。大人よりも低い一酸化炭素濃度で中毒になる可能性があるので、より注意が必要です。一酸化炭素は、目に見えないし、においもありません。一酸化炭素の特性を知った上で、油断をしないようにしてほしいです」
冬のキャンプには、ほかにも雪や氷、寒さによる被害や、野生動物の被害にも気をつけなければならず、油断は禁物だということです。

ヒロシさん「安全安心なキャンプを」

注目を浴びているソロキャンプ。

1人では、助けてくれる周りの人がいない場合もあるので、自分が動けなくなることも想定してしっかり準備することが必要です。
ヒロシさんも自らの体験から、安全で安心なキャンプを呼びかけています。
ヒロシさん
「冬のキャンプは、自分が思っているより寒いことも少なくなく、とにかく寒さ対策が大切です。基本的には、テントの中では火を使わないことを心がけ、寒さに適した寝袋を選んだり、特に冷える足元を暖めたりして快適に過ごしてほしいと思います。当たり前のことを徹底すれば楽しいキャンプができます。ぜひ、安全安心なキャンプを楽しんでほしいですね」
せっかくの楽しいキャンプ。
万全の準備をして、いい思い出を残したいですね。