コロナ入院患者 再び増加「高齢者など入院後 悪化する例多い」

感染が再び拡大するなか、ことし4月から新型コロナの患者を受け入れてきた、埼玉県の大学病院では、11月下旬から再び入院患者が増加し始めています。この病院の感染症専門医は、「高齢者や持病のある患者は、入院した際に軽症でもその後に容体が悪化するケースが多い」と指摘しています。

埼玉県川越市にある埼玉医科大学総合医療センターでは、ことし4月以降、新型コロナ患者の治療にあたる専門の病棟を設け、感染症の専門医や若手の医師ら十数人のほか、外科や内科などの看護師ら、合わせて30人ほどが入院患者に対応しています。

11月下旬から再び患者が増加し始め、病棟の4階と5階の13の部屋に合わせて23のベッドをコロナ患者専用の部屋としていますが、1日までに12のベッドが埋まり、人工呼吸器の必要な重症患者が2人、酸素の吸入が必要で、重症に転じるおそれのある中等症の患者が7人などとなっています。

このうち、重症となっている80歳代の男性は、先月中旬に入院した際は、自分で歩いて病棟に入るほど症状が軽い状態でしたが、日に日に状態が悪くなり、入院して1週間後には、人工呼吸器が必要なほど重い状態となり、現在もそれが続いています。

さらに、1日は、中等症で酸素吸入を行っていた70歳代の患者の状態が悪化し、看護師が慌ただしく対応にあたる様子もみられました。

この病院の総合診療内科・感染症科の感染症専門医の岡秀昭教授は「入院したときは軽症でも5日ほど後に重症化するケースが多い。特に高齢者や糖尿病、たばこを吸う人は危険が高い。若い人はかぜ程度で済む人が多いが、同居する家族など自分は大丈夫でも大切な人を守るために感染しないよう万全の対策に努めてほしい」と話しています。

患者増で緊張続くスタッフ

感染が再び拡大するなか、この病院では昼夜問わず受け入れを行うため、病院のスタッフたちはいつ感染するかもしれないというリスクと常に隣り合わせの緊張状態が続き、肉体的かつ精神的な負担は日に日に大きくなっています。

病院では、1日の時点で重症患者は2人ですが、重症化のリスクが高い中等症の患者が7人いて、予断を許さない状況が続いています。

また、感染拡大により、11月下旬からは、休日や夜間を問わず、新たな患者が次々に運ばれてきて、そのたびにコロナ患者を受け入れる特別な体制で対応に追われています。

取材した12月1日は、午前10時から午後5時までの7時間の間に、2人の患者が保健所の車で運ばれてきました。
そのたびに、医師や看護師は、防護服を着用し一般の患者に接触しないように院内を移動する動線を確保するため、パーティションを設置するなど慌ただしく作業を進めていました。

対応にあたった看護師の井岡京子さんは、「現場はいっぱいいっぱいでこれから患者が増えていくと思うと不安が尽きないですが、患者さんが増えたときに入院する病院がなかったら困るので、自分たちがやらなきゃという思いもあります」と話していました。

岡教授は、「医療の現場は、もともとぎりぎりの人数でやっているのでそこにコロナの仕事が加わり本当の意味でぎりぎりになっている。ほかの業務を滞りなく行うためにはいまが限界で、これ以上、患者が増えればほかの仕事を減らすか仕事のクオリティーを下げざるをえない状態まできている」と話しています。

基礎疾患ある高齢者対応で負担増

感染拡大で高齢者の入院が増加するのにともない、人工透析が必要な慢性腎不全などの基礎疾患や認知症の症状などがある高齢の入院患者が増え、医療現場ではコロナの治療以外の対応も迫られ負担が増えていると言います。

この病院では、11月以降、人工透析を行う必要がある、慢性腎不全などの持病を持つ患者が3人入院していて透析の際は、複数のスタッフが週に3回程度、4時間余りにわたって立ち会う必要があるということです。

ことし4月からコロナ患者が入院する病棟を担当している看護師の井岡京子さんは、「感染拡大の第1波2波の時は比較的若い患者が多かったのですが、現在は、持病がある人や認知症の人が増えていて、患者から目が離せないなど対応することが増えている。今後さらに高齢の患者が増え、コロナ以外のことで対応することがさらに増えるとスタッフへの負担が心配だ」と話していました。

長期化見据え専門医育成

感染症の専門医である埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭教授は、新型コロナの患者の受け入れが今後、長期間に及ぶことを見据えて負担を少しでも軽減することにつなげようと、感染症の専門医の育成も進めています。

岡教授が勤務する総合診療内科・感染症科には、新型コロナの患者の対応にあたる3人の専門医のほか、専門医を志す、医師や研修医ら10人が所属しています。

この日は、診療の合間をぬって、若手の医師7人とともに入院中の患者の状況を聞き取ったり、意見交換行うカンファレンスを行いました。

このなかで、軽症だった患者が重症化する変遷をCT画像やレントゲン画像で確認し、過去の病歴や持病の有無などがどの程度影響したのかやコロナによって重症化したのかなどを議論していました。

若手医師の1人は「診療の隙間の時間にはなってしまいますが、治療方針を報告し全体で情報を共有し、早く現場で実践できるよう努力したい」と話していました。