被ばく対策のヨウ素剤 備蓄委託先を切り替え コロナ影響

原子力発電所などで事故が起きた場合に甲状腺の被ばくを抑えるために配布されるヨウ素剤について、内閣府は医薬品を扱う卸業者に備蓄を委託していますが新型コロナウイルスの影響で卸業者の負担が増えているとして、一部の備蓄を大手物流会社に切り替えたことが分かりました。内閣府は「感染症の流行時に原発事故が起きても対応できるよう保管体制を万全にしたい」としています。

ヨウ素剤は原発など原子力施設で事故が起きた場合に甲状腺の被ばくを抑えるために服用する薬で、自治体には住民への配布と備蓄が義務づけられていて、内閣府も不足に備えて200万個を医薬品の卸業者に委託して各地に備蓄してきました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で医薬品の卸業者の業務負担が増えているとして、ことし春以降内閣府は一部地域の備蓄を大手物流会社の委託に切り替えたことが分かりました。

委託先はヤマト運輸と佐川急便の2社で、先月末現在、内閣府の備蓄量の40%に当たる80万個を保管しているということです。

ヨウ素剤は定期的に更新する必要があり、内閣府では医薬品の卸業者との協力体制は継続しているとしていて「感染症の流行時に原発事故が起きても自治体、住民を支援できるよう保管体制を万全にしたい」と話しています。

原発事故に備え被ばく対策のヨウ素剤を備蓄

ヨウ素剤は原子力発電所などで事故が起きた場合に服用すると、のどの付近にある甲状腺の被ばくを抑え、がんを防ぐ効果が期待されています。

内閣府などの方針に基づき、自治体は原発で重大な事故が起きた際、直ちに避難する必要のある原発からおおむね5キロ圏内の住民を対象にヨウ素剤を事前に配布しています。

一方、5キロから30キロ圏内の住民については、事前配布はせずに備蓄し、避難などの必要に応じて配る方針です。

9年前の福島の原発事故では情報が錯そうするなどして住民にヨウ素剤が十分に届かなかった教訓から内閣府はヨウ素剤の不足に備えてバックアップのため備蓄を行っています。