ビジネス書の売り上げ伸びる 新型コロナの影響背景か

ことしのベストセラーが1日発表され、人気漫画『鬼滅の刃』の小説版が上位を占めましたが、この夏以降ビジネス書の売り上げも伸びていて、新型コロナウイルスの影響による在宅勤務などで増えた時間を学びに役立てようという意識の高まりが背景にあると見られています。

出版物取り次ぎ大手の日販=日本出版販売は1日、ことしのベストセラーを発表し、このうちビジネス書の分野では人から好かれる話し方などを紹介した「人は話し方が9割」や、データに基づいて世界を読み解く「FACTFULNESS」などが上位に入りました。

日販によりますと、ことしのビジネス書の店頭での売り上げは、緊急事態宣言が出た4月は、書店の休業などで去年の同じ月に比べて減少しましたが、その後、急速に回復し、8月は9.7%、9月は10.9%、10月は14.5%と毎月、二けた前後の伸びが続いています。

ビジネス書の人気が高まっている背景について、この会社では、新型コロナウイルスの影響による在宅勤務や外出の自粛で増えた自由な時間をみずからの学びに充てようという意識の高まりや、リモートワークで人と直接会う機会が減る中、コミュニケーションの取り方への関心の広がりがあると分析しています。

書店や企業で非接触立ち読みも

ビジネス書人気の高まりにあわせて、書店ではスマートフォンを使ったビジネス書の「立ち読みサービス」が登場しています。

店頭のQRコードをスマホで読み取ると本の要約を読むことができるもので、コロナ時代の「非接触型の立ち読み」だとして日販がことし10月から全国のおよそ300の書店で展開しています。

日販マーケティング部の加藤隼士係長は「ライフスタイルの変化で本のニーズがより高まったと感じており、非接触の取り組みでさらに多くのニーズをつかみたい」と話しています。

ビジネス書を要約するこのサービスの利用は、企業の研修などにも使われています。

このうち、都内の大手金融グループは、在宅勤務が増える中でも社員に学びの機会にしてもらおうと、ことし6月に会社としてサービスを導入しました。

自宅で多くのビジネス書に触れて業務につながる見識を広げてほしいというねらいです。

導入したみずほフィナンシャルグループグローバルキャリア戦略部の片岡智久調査役は「新型コロナで働く人のコミュニケーションや管理職によるマネージメントの在り方が大きく変わる中、新しいニーズにあった学びを提供していきたい」と話していました。

要約サービスを開発したベンチャー企業「フライヤー」によりますと、企業による利用は去年の同じ時期と比べて25%増えました。

大賀康史CEOは「企業にとっては従来のような集合研修ができない中でも、社員の学びを深めようとこのサービスが取り入れられていると思う。どういった本が求められるのかさらに議論を重ねたい」と話していました。