視覚障害の男性 地下鉄で転落し死亡 反対ホームの電車と誤認か

29日、東京都内の地下鉄の駅で視覚障害者の男性が電車にはねられて死亡した事故で、防犯カメラにはホームの端で立ち止まることなく転落する男性の姿が写っていたことがわかりました。当時、反対側のホームには電車が止まっていて、視覚障害者の団体は男性が電車が来ていると誤認した可能性もあるとしています。

29日昼過ぎ、東京・江東区の東京メトロ東西線の東陽町駅で、白いつえを持った68歳の男性がホームから転落し、電車にはねられて死亡しました。

警視庁によりますと、男性は弱視だったとみられ、設置されていたカメラの映像にはホームの端で立ち止まらずに転落する姿が写っていたということです。

反対側のホームには別の電車が止まっていて、現場を調査した視覚障害者の団体によりますと、自分のホームに電車が止まっていると誤って認識した可能性もあるとしています。

現場ではホームドアの設置が進められていましたが、運用の開始は来年2月の予定で、ドアは常時開いたままになっていたということです。

現場を調査した江東区視覚障害者福祉協会の山本恭子会長は「電車が止まった状態だと別のホームにいる電車を自分の側に止まっていると間違えてしまうことがある。あと少しでホームドアができていたかと思うととても残念です」と話していました。

事故当時の状況

東京メトロによりますと駅に設置されたカメラには亡くなった男性が白いつえを抱えるようにして持ち改札を通過する様子が映っていました。

その後、男性は、階段を経由してホームに行きますが、その間立ち止まることなく、設置途中の後ろから2両目のところにあるホームドアの間から線路に転落したということです。

東京メトロでは改札を通過する際に白いつえを使うなど視覚障害者であることがわかった場合には、駅員が声をかけて見守るようにしていますがつえを使っていなかったので気づかなかったということです。

また、設置中のホームドアは、複数の異なる車両に対応するためドア部分の幅は3メートルあまりと通常より広く、運用開始前ということで警備員を配置していました。

男性が転落した後ろから2両目の付近にはちょうど警備員がいましたが、列車が入ってくる直前に男性と反対側の様子を確認していたため、男性の動きに気づかなかったということです。

警備員は転落してから5秒後に非常停止ボタンを押し、運転士は非常ブレーキをかけましたが、その6秒後に列車が入ってきて間に合いませんでした。

東京メトロでは、180あるすべての駅にホームドアを設置するのは5年あまり後の2026年3月になるとしています。

現場を調査した江東区視覚障害者福祉協会の山本恭子会長は、「ホームドアは設置途中だとホームにとても広い幅が開いているので、視覚障害者の転落を防ぐことはできず、怖いと思いました」と話しています。

ホームドア 工期短縮し完成時期を2週間早める

東陽町駅のホームでは、転落を防ぐホームドアの設置工事中で、来年2月下旬に完成予定でした。

事故を受けて東京メトロは、工期を短縮するため、ドアのセンサーの調整作業などを前倒しして完成時期を2週間早め、2月上旬にするとしています。

今後さらに工期の短縮を検討し完成を急ぐ考えです。

国土交通省 対策検討中

今回の事故は国土交通省が視覚障害者の団体の代表や専門家と検討会を設置して対策を検討しているさなかに起きました。

国土交通省はことしに入ってJR日暮里駅、阿佐ヶ谷駅で視覚障害者がホームから転落して死亡する事故が相次いだため、10月、対策を検討する会議を立ち上げました。

国土交通省によりますと、ホームドアの設置数はことし3月末時点で全国の駅の1割程度で、会議ではホームドアが整備されていない駅の対策としてホームに設置されたカメラなどで心配な人の動きがないかを確認する方法などを検討しています。

次の会合は12月の予定で、事務局を務める国土交通省の担当者は、「今回の事故もふまえて、視覚障害者の方や専門家に意見を聞き、事故を防ぐための方法を考えていきたい」と話しています。

加藤官房長官「転落防止 政府として取り組む」

加藤官房長官は午前の記者会見で、「例年、転落事故が60件ほど発生しており、ことしに入っても死亡事故が続いている。ホームドアの整備を進めていく必要があり、令和3年度から5年間で整備のペースを2倍に加速させることにしている」と述べました。

そのうえで「ホームドアによらない転落防止対策も必要で、国土交通省で新技術などを活用した対策の検討会を設置し、視覚障害者の方々の意見も聞きながら議論を進めることにしている。視覚障害者の方が安全に利用できるよう、政府として取り組んでいく」と述べました。