「孤立化が心配」子育て施設の利用 去年の3分の1以下に

小さな子どもや保護者たちが交流したり、子育ての相談にのったりする子育て支援の場が、新型コロナの影響で支援の縮小を余儀なくされ、利用する親子の数が都内の23区では、去年の同じ時期に比べ3分の1以下に減少したことがわかりました。専門家は「支援の縮小で子育て世帯の孤立やストレスが強まることが心配だ」と指摘しています。

自治体などが運営する「地域子育て支援拠点」は、地域の児童館などに設置され、主に就学前の小さな子どもとその保護者の子育て相談にのったり、同じ月齢の子どもやその保護者が交流するなど、子育て中の親子の孤立を防ぐ場となっています。

NHKは都内23区を対象に、新型コロナの影響についてアンケート調査を行い、23区の643の施設について回答を得ました。

その結果、感染拡大による緊急事態宣言が出されたことし4月から5月まで、ほぼすべての施設が臨時休館や支援事業の縮小を余儀なくされ、こうした影響から、ことし4月から9月の間、施設を利用した親子の人数は、延べおよそ105万人余りで、延べおよそ342万人だった去年の同じ時期と比べ、3分の1以下に減少したことがわかりました。

さらに、ことし10月末時点でも多くの施設が人数を制限するために事前の予約制にしたり、大人数が集まるイベントを中止するなど、例年どおりの子育て支援を実施できていない状況です。

こうしたことから、自治体にはほかの親子と話す機会が減って育児の悩みが共有できないとか、子どもと自宅で過ごす時間が増えてストレスがたまり、手をあげてしまったなど深刻な相談が寄せられたということです。

子育て支援に詳しい恵泉女学園大学の大日向雅美学長は「地域で子育てを支える場が閉鎖されると、保護者の孤立化が心配される。感染がさらに拡大しても再び支援施設を一斉に閉じるようなことはせず、自治体ごとの状況に応じて対応してほしい」と話していました。

引っ越し後にコロナで孤立した母親は

東京 大田区の地域子育て支援拠点「子ども家庭支援センター大森」では、この日、0歳から3歳位までの小さな子どもとその保護者などが、施設内で開かれたカレンダー作りの催しに参加したり、室内の遊び場で会話をしたりして交流していました。

参加したひとり、9か月の長男を育てる草野さとみさん(41)は、ことし5月、夫の転勤で愛知県から親戚や友人のいない大田区に引っ越してきました。

緊急事態宣言が出されていた影響で外出もほとんどできず、小さな長男と2人きりで過ごす時間が多く、初めての育児で不安もある中、相談する相手が近くにおらず孤独を感じていたと言います。

自治体からの紹介で支援センターのことを知ってからは、毎日のように親子で通っています。

支援施設で子育ての悩みを相談したり、月齢の近い子どもを育てる保護者とも知り合い情報交換したりすることで、子育ての不安を感じることは少なくなったといいます。

草野さんは「子どもと家で2人きりの状態が続いたときは、息が詰まりそうになりましたが、いまは、施設に行けるようになり、気分転換することができています。感染対策もしっかりしてくれていて安心して通えるので、感染拡大する中でも規模を縮小してでもいいので開館し続けてほしいです」と話していました。

専門家「感染拡大でも支援継続を」

子育て支援に詳しい、恵泉女学園大学の大日向雅美学長は「コロナ禍で子育て世帯が孤立し、狭い家の中で子育てと家庭と仕事を両立するのは極限状態にあるとも言える。親が余裕をなくしストレスを強めてしまうと、子どもたちへの影響がとても心配だ」と指摘しています。

そのうえで「今後、感染がさらに拡大した場合でも支援施設を一斉に閉じるようなことはせず、自治体ごとの状況に応じて対応してほしい。たった1時間でも支援施設に来ることができると、『地域や行政に守ってもらっている』いう保護者の安心感につながる。コロナ禍で疲労と孤立感を強めている親たちにとっては、最も必要な支援だと思う」と感染が拡大しても支援を継続させることが重要だと訴えていました。

「地域子育て支援拠点」は全国7578か所に設置

「地域子育て支援拠点」は子育て中の親子の孤立を防ごうと、乳幼児など小さな子どもを持つ親子の交流の促進や、育児相談などを行う場所として、国の集計では昨年度の時点で全国で7578か所に設置されています。

「子育てひろば」などの名称で、公共施設や保育所、児童館などの身近な場所に設置され、自治体や子育て支援の民間団体などが運営を担い、親子の交流会や子育てに関する相談のほか、育児に関する講習会を開くなど、小さな子どもと保護者を地域で支える場となっています。