卒業していく君に思い出を ~卒業アルバムどうすれば~

卒業していく君に思い出を ~卒業アルバムどうすれば~
来年の春、学校を卒業する子ども達の卒業アルバムの制作が、いまピークを迎えています。しかし、新型コロナウイルスの影響で学校が休校するなどしたため、例年と比べて子どもたちの写真が少なく、いつもと違った卒業アルバム作りが進められています。(ネットワーク報道部 玉木香代子 小倉真依/首都圏局 宮崎亮希/災害・気象センター 村堀等)

卒業アルバム作れるの?

「卒業アルバムはぺらぺらかも」
「個人写真は自分で撮れと言われた」
「見返すたびに辛くなりそう…」
ネット上には、卒業アルバムの内容を心配する保護者や子どもたちの書き込みがみられます。

休校や学校行事の中止が相次いだことで、ことしはアルバムに載せるような写真を撮影する機会が大幅に減りました。中には、自分で撮影した写真をアルバム用に提供してもらうという学校もあるようです。

うちの子はどこ?

私(宮崎)もわが子の運動会に出てみて、ことしのアルバム作りは大変かもしれないと感じました。

多くの学校で運動会が中止となる中、息子の学校では先生たちの工夫もあって、学年ごとの入れ替え制で実施されました。ただ、子どもたちは競技を終えるとすぐにマスクを着け、静かに拍手だけで応援、観客席もまばらです。

全員がマスク姿だったため「うちの子はどこ?」となかなか見つけられず、写真を撮るのに苦戦しました。

年賀状を作ろうと、改めて目にした運動会の写真は、皆がマスク姿で笑顔や奮闘する表情が分からず、ちょっぴりさみしいと感じました。

コロナ禍でも特別な思い出を

プロのカメラマンも、新型コロナで例年と様変わりした状況に頭を悩ませています。

卒業アルバムの制作を手がけてきた会社の社長で、カメラマンの蕪崎隆志さんは、高校で20年以上続けてきた撮影を通じて、卒業アルバムの魅力を感じてきました。
蕪崎隆志さん
「体育祭では、自分たちのTシャツを作って応援や競技をするなど、撮影する自分までわくわくするほど、生徒たちの表情が生き生きとしています。20年先も思い出が色あせず、むしろその価値が高まるのが卒業アルバムだと思います」
しかし、コロナ禍で高校の体育祭などが中止となり、生徒たちの思い出をどう残すのか悩んだといいます。
蕪崎さんが、撮影を担当してきた千葉県浦安市の私立高校では、体育祭のほか修学旅行や文化祭など、生徒が楽しみにしていた行事は軒並み中止になりました。
大澤次郎校長
「行事を行うかどうか、ぎりぎりまで議論しましたが、浦安市という土地柄、東京から通う生徒も多く、受験を控える中でリスクはなるべく減らしたいという苦渋の判断でした」
行事が無くなったことで、例年、数千枚の写真から選んで制作している卒業アルバム作りが、暗礁に乗り上げました。
去年の写真は、体育祭の盛り上がりなど生き生きとした生徒たちの笑顔があふれていましたが、今年はマスクや証明写真のような写真ばかり。

なんとか、卒業アルバムにいろどりを加えたい。

学校とカメラマンの蕪崎さんが知恵を絞って考えたのが、クラスごとに生徒たちに黒板アートを制作してもらうというイベントでした。
黒板アートは、3日から1週間ほどかけて描かれ、制作の様子を写真に撮りためていきました。

学校を訪れると、教室の黒板には、赤ちゃんの頃の写真を集めて描かれた絵、担任の先生のリアルな似顔絵、将来の夢を寄せ書きにしたものがあり、書き上げた後も消さずに残しているクラスが多かったのが印象に残りました。
生徒
「休校だったので、このクラスが始まったのがそもそも6月です。行事が無くなったので、みんなで何かをやったという思い出がひとつも無かったのですが、みんなとの思い出ができたのでやって良かったです」
蕪崎さんは、夜7時ごろまで生徒たちと一緒に残って、シャッターを切ったといいます。
蕪崎隆志さん
「顔半分は、確かにマスクの布に覆われているのかもしれませんが、生徒達は黒板に夢や寄せ書きをつづりながら、同級生と過ごせる時間を楽しんでいました。例年にはない経験だからこそ、しっかりと記録を残すことが自分の役割だと気づかされました」
卒業アルバムにはQRコードを印刷し、黒板アートの制作風景を撮影した動画も、再生できるようにするといいます。

“特別な場所”で撮影を

卒業アルバムのために、特別な場所での撮影を企画した自治体もあります。

大阪・東大阪市では、修学旅行を中止したことから地元の自慢の施設をアルバム作りに生かすことにしました。11月、市内にある“ラグビーの聖地”花園ラグビー場に、来年卒業する小中学生を招待しました。
ふだんは立ち入れないグラウンドや選手が使うロッカーを見学し、スタンドの大型ビジョンに学校名を映し出して集合写真を撮影しました。

子どもたちは感染対策をした上で、撮影のときだけマスクを外し、特別な思い出とともに笑顔の写真を卒業アルバムに残すことができたということです。

参加した小学生は、「芝生がとてもきれいで感動しました。ここでスポーツもしてみたいです」と話したということです。

“動く卒業アルバム”も

デジタル技術を卒業アルバムに取り入れて、子どもたちを喜ばせようという動きも出てきています。
アルバムの写真にスマホをかざすと、動画が再生され先生が話し始めるという、こちらのサービス。子どもたちに向けた先生からのメッセージのほか、運動会などの学校行事の思い出も動画で振り返ることができます。
活用されているのは、AR=拡張現実と呼ばれる技術です。

専用のアプリをダウンロードして、写真にスマホをかざすと、あらかじめ設定された動画が流れる仕組みです。画像を認識する技術が使われています。

このサービスを提供している会社によると、すでに制作された卒業アルバムに追加の作業は必要なく、写真と動画を会社に提供するだけで簡単にできるということです。コロナ禍でこのサービスにニーズの高まりも感じているといいます。
高橋尚也さん
「修学旅行などの行事が相次いで中止となる中、先生や保護者たちが写真だけでなく動画でも学校の思い出を残し、子どもたちに喜んでもらいたいと考えているようです。去年に比べて3倍近い問い合わせがきています」
高橋さん自身、ことし3月、高校3年生と小学6年生の息子2人の卒業式に新型コロナの影響で参列できなかったため、思い出を子どもたちに残してあげることの大切さを改めて感じているといいます。
高橋尚也さん
「5年後、10年後に、アルバムを開いた時に、コロナ禍でも学校ではこんな楽しいことがあったなと思い出してくれたらいいなと思います」
運動会や修学旅行という、楽しみにしていた学校行事が次々と無くなる中でのアルバム作り。

写真一枚一枚は、いつもとは違う光景かもしれませんが、思い出を残してあげたいという周囲の暖かさは変わりません。

マスクは外していいの?

これからアルバム用の写真を撮影する人もいるかもしれませんが、気になるのがマスクです。
表情はしっかりと写真に残したいですが、撮影の際にマスクを外していいものか、ためらいを感じることもあると思います。
感染症の専門家に聞きました。
国際医療福祉大学 松本哲哉教授
「屋外で会話をせず、一定の距離をとった上で、短時間であればマスクを外して集合写真を撮っても問題ないでしょう。ただ、気心が知れた友だちどうしだと、つい気が緩んでマスクを外しっぱなしにして、おしゃべりをしたり密着したりしてしまいがちです。全く会話をしなくても息をするだけで、少しずつウイルスが出ていくので、換気の悪い屋内でマスクを外すと感染リスクが高まります。写真撮影の際には、このような点に注意してほしいです」