北朝鮮 10月の対中国貿易総額 前年比99%減少

北朝鮮が、新型コロナウイルス対策として中国との国境を封鎖する中、先月の中国との貿易総額は、去年の同じ月より99%減少しました。

中国の税関当局が発表した貿易統計によりますと、北朝鮮との間の輸出と輸入を合わせた貿易総額は、先月、165万9000ドルで、去年の同じ月と比べて99%減少しました。

また、ことし1月から先月までの合計でも、去年の同じ時期と比べて76%減少しました。

北朝鮮は、新型コロナウイルスへの感染対策として、中国との間で航空便や列車を止めていて、人の往来や物資の移動をさらに厳しく制限しているものとみられます。

こうした中、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は「輸入に頼ればいいという病は、経済の主体性を阻害する障害物になってきた。徹底した感染対策の壁が構築された今は、みずからの力を強化できる絶好の機会だ」と伝えています。

北朝鮮は、朝鮮労働党の最高指導機関と位置づける党大会を、来年1月に開く予定です。

これを前に、国民総動員の運動「80日戦闘」が行われていて、北朝鮮指導部は、工場や農場などに増産を呼びかけながら体制の引き締めを図っています。

朝鮮中央テレビ「攻撃的な感染対策を徹底」

北朝鮮は、これまで国内で新型コロナウイルスの感染者は1人もいないと主張する一方、国営メディアを通じて、連日、感染対策の徹底を呼びかけています。

朝鮮中央テレビは今月16日の放送で、朝鮮労働党の政治局拡大会議にキム・ジョンウン(金正恩)委員長が出席したことを伝え、このなかで感染予防に向けて「超緊張状態を堅持していく」と強調しました。

また25日の放送では、防護服を着た大勢の人たちが屋内の施設やバスなどで消毒作業をする姿を映しながら「攻撃的な感染対策を徹底」などと伝えています。

このほか、中国との国境の川にかかる橋や、ピョンヤンの国際空港の映像に合わせて「国境を固く閉じ、厳格な感染防止対策が求められる」と伝え、対策の徹底を強調して引き締めを図っています。

専門家「防疫措置を今一度重視」

北朝鮮の政治に詳しい慶應義塾大学の礒崎敦仁准教授は、北朝鮮の状況について「新型コロナウイルスが国内に入ってこないように、非常に強い国境封鎖措置を講じて、それが徹底されている。中国から必要最低限の物資は入れてきたが、国内で気が緩んできているのではないかと防疫措置を今一度重視し、厳しくしているところがある」と指摘しました。

そのうえで、北朝鮮がアメリカ大統領選挙に反応を示していないことについて、「トランプ大統領との間でICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験や核実験をやめるなどといった約束もあり、それをとりあえず守っている。今はバイデン氏が非核化の問題で交渉できるかどうかを北朝鮮側が静かに見守っている段階にあると思う」と分析しました。

そして、今後の出方について、「北朝鮮は来年1月の党大会に向けて『80日戦闘』と呼ばれる国民の動員運動で経済の回復をねらっているが、従来の運動では大きな経済成長は見込まれない。どこかで経済制裁の解除について、アメリカとの交渉という転換点を見いだしたいとみられる。1月はキム・ジョンウン委員長が長めの演説を行うだろうし、経済建設の新たな5か年計画の内容が明らかになると思うので何が出てくるかに注目したい」と述べました。