重症患者増 通常医療との両立に危機感 東京都モニタリング会議

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、感染状況は引き続き最も高い警戒レベルとなった一方、医療提供体制は上から2番目のレベルを維持しました。ただ、専門家は「重症患者数の増加が予想され、通常の医療体制との両立が極めて困難になると思われる」と述べ、危機感をあらわにしました。

会議では25日までの7日間平均で、都内で新たな感染の確認がおよそ400人となり、1週間前のおよそ326人から大幅に増加し、これまでで最も多くなったと報告されました。

専門家は「急速に感染が拡大しており、極めて深刻な状況になる前に感染拡大の防止策を早急に講じる必要がある。特に、重症化リスクの高い高齢者への感染の機会を減らすことが必要だ」と指摘しました。

そして先週に続いて、感染状況の警戒レベルを「感染が拡大していると思われる」という最も高い警戒レベルにしました。

一方、医療提供体制は「体制強化が必要であると思われる」という、上から2番目の警戒レベルを維持しました。

会議では25日時点の重症患者数が54人と、1週間前の39人から大幅に増加したことなどが報告され、専門家は「今後、重症患者数の増加が予想され、通常の医療体制との両立が極めて困難になると思われる」と述べ、危機感をあらわにしました。

東京都医師会 猪口副会長「レベル引き上げ実態を見ながら」

東京都医師会の猪口正孝副会長は、医療提供体制の警戒レベルを最も高いレベルに引き上げるかどうかの判断について、「病床数や重症患者の人数だけで決まるわけではなく、医療提供体制全体も見なくてはいけないだろうということで、基準をつくるのは難しい」と述べました。

そのうえで「重症患者の病床の50%が埋まることなどは1つの目安になるだろうが、医療現場の実態をみながら決めていきたい。実態はどんどん動くので様子を見ながら考えたい」と述べました。

専門家の分析は

26日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、25日までの7日間の平均が399.6人で、前の週からおよそ74人増え、これまでで最も多くなりました。
2週間前のおよそ1.6倍です。

専門家は「急増している。10人程度の小さなクラスターが多発し、急速に感染が拡大している。今後、通常の医療が圧迫される深刻な状況が予想され厳重に警戒する必要がある」と指摘しました。

一方、「増加比」はおよそ123%で、前の週からおよそ10ポイント減りました。

ただ、専門家は「高い値で推移している。この増加比が今後4週間続くと、新たな感染の確認はおよそ2.3倍に拡大して1日当たり920人程度となる」と試算したうえで、「感染防止策を早急に講じる必要がある」と危機感を示しました。

今月23日までの1週間で確認された3002人の新規陽性者の年代別の割合をみると、
▽20代が最も多く25.7%
次いで
▽30代が18.7%
▽40代が16.3%
▽50代が15.0%
▽60代が8.0%
▽70代が6.1%
▽10代が5.1%
▽80代が2.9%
▽10歳未満が1.6%
▽90代以上が0.6%でした。

65歳以上の高齢者の割合は13.0%で、前の週と比べてほぼ変わりませんでしたが、患者数でみると274人から390人と大幅に増加しています。

このほか、この1週間で確認された新規陽性者のうち19.5%が無症状でした。

一方、感染経路が分かっている人のうち、家庭内での感染は前の週とほぼ同じ40.7%で、感染経路別では17週連続で最も多くなりました。

また、年代別にみると80代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多くなりました。

このほか、職場内は19.9%、施設内は13.4%で、会食が7.1%、夜間営業する接待を伴う飲食店は2.5%でした。

専門家は「家庭の外で感染した人が家庭内にウイルスを持ち込んで同居する家族などに感染された事例が多く見られる。また、長時間や深夜にわたる飲酒や複数の店にまたがって飲食・飲酒を行う、大声で会話をするなどの行動に伴って感染リスクが著しく高まる」と指摘し、感染対策の徹底を改めて求めています。

また、「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路の分からない人の人数は7日間平均で230.4人で、前の週よりおよそ48人増え、大幅に増加しています。

さらに、増加比が100%を超える高い水準で推移していて、専門家は「通常の医療が圧迫される深刻な状況を目前にしている」として強い危機感を示しています。

都は、都外に住む人がだ液によるPCR検査で検体を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けを出したケースを除いた数値で分析・評価していて、今週はこうしたケースが80人いました。

医療提供体制

検査の「陽性率」は、前回・1週間前の5.8%から0.8ポイント上昇して、6.6%となりました。

専門家は「検査数は横ばいで推移しているが、それ以上に新規の陽性者が増加しているため上昇している」と分析しています。

また、入院患者は、25日時点で1561人で、1週間前・今月18日の時点より207人増えています。

前々週までは1000人前後、前週は1300人台、今週は1500人台へ大幅に増加し、専門家は「長期化している医療機関の負担が一層強まる。患者数の増加に伴って、今後、保健所などから依頼された陽性患者をすべて受け入れることが極めて困難な状況になる。日曜や祝日は受け入れが可能な病床数が少ない状況が続いていて、軽症者は入院を平日に持ち越す事例もある」と指摘しました。

また、都の基準で集計した重症患者は25日時点で54人で、前回・1週間前より15人増えました。

54人を年代別にみると、40代が2人、50代が9人、60代が10人、70代が22人、80代が11人で、専門家は70代の重症患者が増加傾向だと分析しています。

性別では、男性が44人で、女性は10人でした。

専門家は「重症患者は新規の陽性者の増加から少し遅れて増加してくることから今後、さらに増えることが予想される。医療機関は手術や救急の受け入れなどを制限せざるを得なくなり、新型コロナウイルスの重症患者のための病床の確保との両立が極めて困難になる」として強い危機感を示しました。

今月23日までの1週間で都に報告された亡くなった人は7人でした。

7人のうち6人が70代以上でした。