米 離れた家族集まる「感謝祭」 感染拡大の懸念

新型コロナウイルスの感染が急増しているアメリカでは離れた家族や親戚が集まる「感謝祭」を前に、大勢の人が移動することからさらに感染が拡大する懸念が出ていて、保健当局が旅行の自粛を呼びかける異例の事態になっています。

ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、アメリカで24日に報告された新たな感染者は17万2935人で、3週間にわたり10万人を超える日が続いています。

さらに、民間の調査団体によりますと24日の全米の入院患者数は8万8000人以上、ICU=集中治療室で治療を受けている人も1万7000人以上と過去最悪の水準に達し、各地で医療機関の受け入れ能力がひっ迫しています。

こうした中、アメリカでは26日、離れた家族や親戚が一堂に集まり七面鳥の料理を囲む伝統行事「感謝祭」を迎えることから、人の移動が増えるのをきっかけにさらなる感染の拡大が懸念されていて、CDC=疾病対策センターは、感謝祭の過ごし方の手引きを公開し、同居家族以外との会食を自粛するよう異例の呼びかけをしています。

また、感謝祭を前にウイルスの検査をする人も増えていますが、政府の保健当局のトップは「陰性の検査結果は安全を保証するわけではない」と注意を促し、どうしても旅行する場合はマスクの着用や手や指の消毒などの感染対策を徹底することを求めています。

移動減の予測も…

アメリカでは感謝祭の前後には例年、多くの人が車や飛行機などで移動します。

アメリカ自動車協会の予測では、ことしの感謝祭に合わせて旅行する人は新型コロナウイルスの影響で去年より1割少ないおよそ5000万人と見込んでいます。

このうち飛行機を利用する人は去年の半分近くにあたる240万人で、大幅に減少すると予測しています。

また、オハイオ州立大学が先月29日から今月2日にかけて行った世論調査によりますと、回答したおよそ2000人のうち全体の38%にあたる770人余りが10人以上での会食を行う予定だとしているほか、全体の33%の人たちが招待する人にマスク着用を求めないと回答していて、感謝祭による感染拡大が懸念されています。

一方、アメリカのメディアでは動画配信やビデオ通話などインターネットのサービスを活用して感染を防ぎながら感謝祭を過ごす方法を特集しているほか、IT企業の中には遠く離れた家族との団らんに使ってもらおうと有料で提供しているテレビ会議システムを無料にする動きも出ています。

ニューヨーク 検査のためクリニックに長い列

新型コロナウイルスの感染状況がこれまで比較的落ち着いていたニューヨーク州でも新たな感染者が急増していて、感謝祭をきっかけにした感染の拡大が懸念されています。

ニューヨーク州では24日時点で1日当たりの新たな感染者数が6265人にのぼり、入院患者数は2982人と3週間で倍以上に増えています。

こうした中、多くの人たちが移動する感謝祭をきっかけにした感染の拡大が懸念されていて、ニューヨーク市南部のスタテン島では入院患者の増加を見越しておよそ半年ぶりに仮設の病院の運用が再開されました。

病院の運営者は「春のような事態にはならないと信じているが、これからの季節が心配だ」と話していました。

ニューヨーク州のクオモ知事は25日「ことしの感謝祭は、これまでとは違う。感染がどれだけ広がるかは私たちの行動しだいだ」と述べ、旅行を控えるとともに多くの人が集まって会食しないよう求めました。

ニューヨーク市内のクリニックには、ウイルス検査を受けようと多くの人たちが訪れ長い列ができているなど、異例の感謝祭を迎えようとしています。

クリニックを訪れた女性は「感謝祭に人と会うので検査を受けに来ました」と話していました。

また、感染したおそれがある友人がいたとして検査に訪れた男性は「ことしは実家のカリフォルニアには帰省せずマンハッタンの自宅で過ごします。家族とはビデオ通話をしようと思います」と話していました。